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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 67-9

リク「あの……俺……先日は、色々とご迷惑……」
鎮「ああ、気にするでない」
 
 予想通り、まずは寛大な言葉が返ってきた。絶対にこう言うと思ったのだこの人は。
 けれど叱られるよりそっちの方が怖い。
 
リク「はは……そう言ってくれると思いましたけど……なかったことにされるのが一番キツイっていうか……その……」
 
 手すりにつかまって、せわしなく木目を指でなぞる。
 
鎮「別になかったことにしておらぬよ。だって現実に減俸1カ月だもん。お前様に何を課してやろうかねちっこく考えておるところよ」
 
 踵を返して向き直る。
 

▽つづきはこちら

リク「……ゲ」
鎮「ゲではない。クソボケが。もー、お前なんか雨に濡れていようが、口から魂がハミ出ていようが知らんからな」
リク「ああああああっ! すんません~」
鎮「すみませんで済んだら、薔薇の騎士団はいらぬ」 ぷいっ。
リク「気にするなって言ってのにズルイよ」
鎮「るっせ!」
リク「……ううっ」
 
 肩をすぼめる。
 
鎮「……ま、でも。拙者からも謝っておくでござるよ」
リク「……お?」
 
 登り階段の上に乗っているにも関わらず、リクよりも低い目線から鎮はうすらデカイ犬のような少年の頭をぐしゃぐしゃと混ぜ返した。
 
鎮「怒鳴ったりして悪かった。お前に……甘えてた」
 
 そっと手を引っ込めて長い袖の中にしまう。
 
リク「あ……甘える?」
鎮「……すまぬな。お前の言うような駄々っ子で」
リク「……えと……?」
  『どうしよう? 言っていることがイマイチ理解できな……。エートエート……俺にいつどこで何時何分この人が甘えてきた!??』
 
 甘えられた記憶なんてどこを探っても見当たらない。
 
鎮「……相手が悪ぅないのに逆ギレして怒鳴るのは、そういうことであろう?」
 
 ちょいと少しだけ首を傾ける。
 
リク「あ、いやっ、あれはっ」
鎮「お前に言ったこと、訂正する。悪くなんてないよ。誰でもそういうところはある。俺とて同じだ。年上の、優しくしてくれる女性がいたなら、きっと、かかさまを思い浮かべていたであろう。親切にしてくれるオヤジ様がおったら、ととさまのようだと感ずるに違いないわ。……それは自然なことだと思う」
リク「……あの……でも俺は貴方を……ホントに……」
鎮「それを嫌だと撥ね付けるのは、あまりだったと思い返してな。……あれから……気になってた」
リク「ずっと……考えていてくれたの?」
鎮「…………。きっと俺は、お前様にただ好かれたかったんだな。だからへそを曲げたんだ」
 
自分の意に沿わなかったからといって湧いてきた怒りに違いない。
けれど、そんなのはただの一方通行な押し付けでしかない。
好いてもらえなかったことで腹を立てるなんて、一番みっともないではないか。
少し優しくされるとすぐに図に乗ってしまう、昔からの悪い癖なのだ。
 
鎮「1週間、よぅ考えてわかったわ。心が大人になりきれぬ者のたわ言だと思ぅて……堪忍しておくれ」
 
 口元に袖を当てる。
 
リク「いっ……いいんだっ! 謝らなくたっていいっ! 甘えてくれていいんだ、いくらでもっ!!」
 
 怒鳴って怒るのが甘えで、頑なになる姿が恥じらいなのだとしたら、それはむしろ歓迎すべきことだ。
 いくらでもワガママを言ってくれていい。本音をぶつけてくれればいい。
 リクは相手に甘えたいのと同時に甘えられたいのだから。
 自分を必要とされたいのだ。
 
鎮「……………………」
リク「……………しっ………………鎮…………?」
鎮「……………………」
リク『………黙らないで……何か言ってよ』
 
 答えを考えているのか相手が突然、貝のように口を閉ざしてしまい、リクは狼狽した。
口まで隠されたら表情がまるでわからない。
 人は黙っていても目の動きなどである程度、反応を予測することが出来るが、鎮の場合はとにかく顔が見えない。
 口の動きと首をかしげる。額当てをいじる。袖を口元に当てる。
 これしかヒントがないのだ。
 それなのに口の動きまで隠されて沈黙されるととても困ってしまう。
 試しにもう一度、呼びかけてみる。
 
リク「……重ねたりしない。ちゃんと見てるよ、鎮を」
鎮「………………」
 
 しぱらくの間、鎮は回答を考えて躊躇った。
袖の下で何度か口を開きかけてはやめるを繰り返す。
本当は、無理に見てくれなくても、もう別に構わないという結論に達していた。
 特に好いてもいないのに、穴埋めをするみたいにこれから無理に好こうとしてくれなくてもよいのだ。
 好いてもらえないなら、それはそれで諦めがつくから。
 重荷にもなりたくない。
 人を諦めるのにはすっかり慣れている負け犬性分。
 見向いてくれないよりも彼にとって苦しいのは、中途半端に優しくされることだ。
 これ以上、下手に優しくされるとまたいらない期待を抱えて、いらないカンチガイにつながってしまう。
 だからと言ってこれを正直に述べれば、相手がまたしょげかえっていつまでも気にしてしまうのは目に見えている。それでは、元の木阿弥だ。謝罪した意味もなくなる。
悲しい顔をされるのもまた、こちらが困ってしまう。
 だからここは素直に受けることにした。
 全てを拒絶することもないという考えにようやくたどり着いたばかりだったことを思い出して。
 全てを求めない、全てを拒絶しない。
 好意を少しだけ受け取っておけばいいんだった。
 相手も少しだけ渡すつもりなんだから。
 指先で餌をくれているのに腕ごとかじるような浅ましいマネはしちゃいけないんだ。
 
鎮『うん。そうだ。そうだった』
 
 すぐ両極端に考えるのも良くないクセだ。
思い直して、自分を納得させるように何度か頭を横に振ってからうなずく。
 
リク『!? 頭横に振った!? 嫌なの!? あ、でも縦にも振った! ど、どっち!?』
鎮「うん……うん、わかった」
 
 相手をひとしきり迷わせてから、今度は一生懸命、首を縦に振る。

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