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レイディ・メイディ 67-6
2008.10.17 |Category …レイメイ 67・68話
やがてクラスメイトとしては待ちに待った興味の瞬間、リクにとっては気の重い時が訪れた。
処分が解かれた鎮の登場である。
教室中がどよめく。
まず先陣を切ったのはやっぱりカイルだ。
カイル「センセー! リクとデキてるってマジ!? 俺、ショック!」
鎮「? ……デキてる?」
続いて生徒たちが次々と質問を浴びせる。
生徒たち「センセー! 年上美女ってホント!?」
鎮『……どこからどうやってそんなことに……?』
生徒たち「アンとリクと三角関係ってマジ!?」
「リク君を誘惑したんですか!?」
もはや聞き取るのも困難なくらいに矢継ぎ早の質問攻めである。
中にはあきらかに違うだろうというものまで混ざっており、思わず鎮は閉口した。
▽つづきはこちら
鎮「年上美女じゃなくて、年上平凡男性。アンとリクに関わりナシ。リクを誘惑なんてできないし、したくもありません。できればうすらデカイ男子生徒じゃなくて、可愛い女子生徒希望」
一気に短く答えるととそのまま授業を開始してしまう。
カイル「オイオイオイ。年上美女って言い出したの誰だよ!? 全然違うじゃん!」
クレス「お前だよ!」
カイル「うああんっ! オレサマのお姉様ドリームが!」
机に伏せて大げさに泣き真似。
クレス「何がお姉様だ、だましやがって!」
シラー「だまされている方も充分、バカだけどね」
クレス「……う」
ジェーン「普通に考えたら、先生が女であるわけないじゃないわよねぇ。……なんていうか、あの性格、あの態度。あれで美女でしたって言われても……」
ステラ「ねぇ?」
ジェーンの言葉を受けてステラが肩をすぼめる。
シラー「何しろ、拾い食いしちゃう人だしね。普段のことはなかったことにしてよく夢を見られるわる感心しちゃう」
ステラ「男の子って皆、こうなのかしら? バッカみたい」
女子からの冷たい言葉が大騒ぎの男子生徒たちに突き刺さる。
リク「よかった。やっぱり男だったんだ。ふぃー」
カイル「だからってリクの罪は消えてないんだからな、この犯罪者」
リク「犯罪者呼ばわり!?」 がびん!?
1週間、気を持たせるだけ気を持たせて(本人にもたせるつもりは全くないが)、結局、何も楽しい変化などなかったことを知ると生徒たちは肩透かしを食らって不満げな顔を見合わせた。
お祭り騒ぎに終止符が打たれ、試験へ向けての本格的な内容に入る。
鎮「えーと……あのー……えーと。今回は町の警備が試験となるでござる。薔薇の騎士団に加わればまず始めの仕事になるのがこれなのでえーと。その訓練も兼ねているとかなんとか」
相変わらず頼りない教官の説明をなれた様子で生徒たちは聞き入った。
生徒たち「騎士団と一緒にやるんだってよ。屯所にも入れるって!」
「スーゲー!!」
正騎士の指示に従って動くという言葉に教室中が湧いた。
彼らの90%以上は正騎士に憧れている者たちだからだ。
どれだけ大人たちに金食い虫のお飾り軍隊だと蔑まれようとまだ見ぬ未来に向かって上り坂をゆく最中の少年少女たちにとっては薔薇の騎士団は昔から、憧れそのものである。
しかも最近では魔物の増加により、各地で活躍の報が流れてきている。
こうなればただの金食い虫ではないといずれは薔薇の騎士になろうとする彼らは単純に大喜びである。
現地の状況も知らずに。
ステラ「はい、質問」
鎮「ナニ?」
ステラ「何か問題があれば実力を試されることもあると思いますけど、何もない場合はどうやって点数が加算されるんですか? 状況が必ず一緒とは限りませんよね? ハプニングに直面したチームの方が点数を稼ぎやすくなるのでは?」
ステラの最もな意見に何人かがうなずいている。
鎮「何も起こらないと言うことはまずないであろう治安の悪い地区に行ってもらうことに決定済みでござる。遭遇する出来事は違ってこようがその時の対応で評価が決まってくる。処理能力が問われる試験でござるな」
今までの力比べとはだいぶ方向性の違った試験である。
本格的に騎士団の見習いとしての仕事となるのだ。
リク「先生」
鎮「うん?」
リク「………………馬に乗れない人はどうしたらいいですか………………」
何でもこなすイヤミなくらいの天才児リクが神妙な面持ちで挙手して言った。
鎮「試験は受けられません」
リク「ええっ!?」
鎮「嘘でござる。今回は馬を使用しません」
リク「……ほっ」
鎮「ただし」
リク『ぎく!?』
鎮「馬は馬で別の試験があると思ったけど」
リク「シクシクシク……」
鎮「今、知っての通り、各地で魔物事件が相次いでおる。下手をするとゴロツキや酔っ払いどころか魔物が相手になるやもしれぬ。ただの見回り警備と侮るなかれ」
生徒たち「はい!」
試験の説明が終り、続く授業も済むとリクはあわてて鎮を追いかけようとした。
先日のことを謝らなければ。
自分のせいで謹慎処分を食ったのだ。申し訳なさ過ぎる。
アン「まっ……待って、リク君!」
教室を一目散に出て行こうとするリクをアンが引き止めた。
アン「お話が……あるの……」
しばらく避けていたアンが勇気を持って呼び止めたのである。
鎮が戻ってきたことで危機感が増したのかもしれない。
リク「ごめん、ちょっと急いでいるんだ。後で」
アン「……!」
精一杯の勇気をふりしぼったつもりの一言はあっさりとかわされて、リクは目の前から姿を消した。
彼としては、悪いことをしてしまったのを謝ってしまうのが先決で、アンの話は後から落ち着いてじっくり聞いてあげるつもりだったのだ。
しかしアンは恋人として何より優先してもらいたかった。
ただの軽いおしゃべりなら後回しでも構わないが、あの騒ぎの後、初めてこちらから話しかけるのである。
何か大事な内容だと見当をつけてくれてもよいのではないか。
どこまで鈍感なのだろう。
それとも……
シラー「完全に軽んじられているわね」
アン「!!」
気がつきたくなかったことを後ろから来たシラーに指摘されて身を震わせる。
シラー「なんなの、あの態度。許せないわ」
アン「シ、シラー……」
ジェーン「そうよ、そうよ」
アンとの仲を修復したいジェーンが進んで相槌をうつ。
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