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レイディ・メイディ番外編3 ヒーローの条件
2008.06.28 |Category …レイメイ番外編
ヒーローの心構え。
1、ヒーローはヒーローだから、ヒーローなのだ。
2、ヒーローは何者をも恐れない。
3、ヒーローは常に正義の味方だ。
4、ヒーローはくじけちゃいけない。
5、ヒーローは強くなくちゃいけない。
6、ヒーローは子供の憧れであり続けなくてはならない。
今の所、試験に出るからそのつもりで。
レイディ・メイディ番外編3
ジャック短編
ヒーローの条件
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ふふふふふ。
集まってる、集まってる。新入生諸君。
皆、不安げな顔しちゃって……。
私は薔薇の騎士団・養成所の校舎2階から、整列させられている今年の新入生たちの団体を眺めた。
ここは一発、この私、ジャック=フランツ=グレイング=ジョセフ=アラン=スティーヴン=コンスタンティヌス=ウィングソード先輩(16歳)が緊張をほぐして差し上げようではないか。
夜なべして縫った薔薇騎士レンジャーコスチュームを取り出した私は、早速、服を脱ぎ……
「キャーッ!?」
「先生、ジャックがいきなりストリップ始めましたっ!!」
「コラ、何をやっているのだね、君は!? 着なさい、服を!!」
ややっ!?
クラスメイトの女子たちと学科を習っているレヴィアス先生が声援を送ってくれている!
これはハリキらなくては、申し訳が立たないぞ。
よぅし!!
私は皆の声援を受けて、薔薇騎士レンジャー・レッド衣装に着替え……いや、変身すると、2階の窓から颯爽と飛び降りた。
とうっ!!
………………ゴキっていう、変な音が鳴ったかな。
いや、ゴキってよりはゴキャッ……みたいな。
足首がね、変な方向に曲がっててね……
「……頼む。お願いだから、もう少しおとなしく、また常識的に生きてはくれまいか」
保健室に運ばれた私を見舞ってくれたのは、教官補佐のヴァルト先生だった。
ヴァルト先生は私よりたった8つ上なだけの24歳。
この若さにして青薔薇正騎士の小隊長を勤めて、さらにその剣の腕を見込まれ、養成所で後輩たちを指導する教官補佐という役目に就いている偉い人だ。
カッコイイ!
私は赤薔薇専攻で希望を出したハズなのに、養成所側のミスで青薔薇に入れられてしまった。
薔薇騎士レンジャー・レッドに憧れていた私は、当時、大変ガッコリしたものだが、ヴァルト先生がおられるなら、青薔薇も悪くはないと思うようになった。
「先生、私の命は後どのくらいでしょうか。ハッキリおっしゃって下さい」
「ただの骨折だから」
「とても痛いんです」
「イタイのはお前の頭だ」
私の病名は、ただの骨折で命に別状はないらしい。
松葉杖を渡され、保健室から追い出された。
足が痛いのだが、私は薔薇騎士レンジャーを目指す青少年なので、こんなことでくじけてはいけない。
もちろん、泣いたりだってするもんか。ふっふーん。私は強い子良い子、薔薇騎士レンジャー……に、なりたい青少年……なのだ!!
さて、ただの……というにはすこぶる痛い骨折だった私は日曜日が待ち遠しかった。
な、な、なんと! 薔薇騎士レンジャーショーが僕らの町にやってくる!!
養成所から一番近い町に、劇団がくるのだ。
薔薇騎士レンジャーの勇姿が間近で観られるとは!
握手してもらって、サインまでおねだりしちゃうぞ。あーっはっは!
フンフンフーン♪ 楽しみで仕方がないぞぅ☆
痛む足を忘れてスキップをしようとして、階段から転げ落ち、再び保健室に運ばれた……。
待ちに待った日曜日。
私の足は治ってなかった。むしろ、怪我か増えていた。
朝目覚めたら治ってる予定だったのに。おかしいなぁ。やっぱり痛いや。
だけどもちろん出かけるさ。出かけますとも。
ところで、チケットは1枚で2名サマまでと親切設計。
独り占めしたらよくないな。
よし、他の人を誘ってみよう。
そんなワケで先輩のアサザ兄さんを誘ったけど、彼は薔薇騎士レンジャーに興味がないらしく、
「ああっ、もう! 俺に懐いてくるな、鬱陶しい。お前の仲間だと思われたら恥ずかしいだろ」
自分はいいから、一人で楽しんでおいでと背中を押してくれた。
どうでもいいけど、彼は去年も一昨年も19歳って言っていた気がするのだけれど、本当のところはどうなのだろう?
アサザ兄さんに断わられた私は、憧れの先生のところへ。
「何を好き好んで日曜までお前の面倒を見なくちゃならないんだ」
……ヴァルト先生は、お忙しいようだ。
「ナーダ先生、デートしましょう」
「この世に男がアンタしかいなくなったとしてもお断りよ」
ヴァルト先生と同期で、女性でありながら同じ立場をとる美貌の剣士・ナーダ先生が優しい笑顔でそう答えた。
「レヴィアス先生、新婚旅行に行きませんか?」
「バカも休み休み言いたまえ」
……どうやら、私には友達があまりいないようだ。知らなかった。
結局、合計23人にフラレた私は一人で休暇をエンジョイすることに。
週に一度、日曜日にだけ町と養成所を往復してくれる大型馬車に乗って私はウキウキ出かけることにした。
馬車に揺られた私はムネムネはしゃぎまくる心を抑えきれずに、薔薇騎士レンジャーのオープニングソングを歌った。
歌いまくった。
ああ、そりゃあもう、大声で。
「黙れよ、ジャック。うるさいぞ」
「エンドレスするな、耳が腐る」
「俺たち学徒が全員そんなだと町の人たちに思われたらどーすんだよ」
同乗した連中にも大好評だ。