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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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ヒーローの条件:3

 うーん、ナイス闘志!

 私も負けてはいられない。

 悪を見過ごしたとあっては、薔薇騎士レンジャー……になりたい薔薇の騎士見習いの名がすたる!!

 私はすぐさま、服を脱いだ。

 

「うわ、兄さん、何やってんだ!?」

「薔薇騎士レンジャーに変身しているんです! 変身の最中は恥ずかしいので、あまり見ないで下さい! 照れます!!」

「はぁ?」

「申し訳ございませんが、私の服を預かってていただけますか? 犯人をひっ捕らえてすぐに戻りますので!!」

 

 巾着に詰め込んできたお手製の薔薇騎士レンジャー・レッド衣装に着替えると、松葉杖を駆使して犯人を追いかけた。


▽つづきはこちら

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ        !!!!!」

 

 力の限り松葉杖をついて、急いだ。

 うん、こりゃ、ケンケンのがいっそ速い。

もう片方の足が、俺は元気だ、俺に任せてくれと言っている気がする。

 よぅし、ケンケンだ! 頼むぞ、左足くん!!

 

 ケンケンケンケンケンケンケンケンケケンケンンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケンケケンケンンケンケンケンケンケンケン!!!!!

 

 おっと! 少女が見えてきた。

 

「あっ! 薔薇騎士レンジャー・レッド!?」

 

 少女がポニーテールを揺らして振り返った。

 

「犯人はどこに!?」

「あっち!」

 

 指差す方向を見れば、もう豆粒のようになってしまっている。

 あれでは、住宅地に入られたら最後、どこにいったかわからなくなってしまう。

 まだ広場付近で左右に家はない。

この1本に続く坂道が勝負だ。

 終わりまでに何とか捕えなければ!

 使えるものはないかと、キョロキョロ辺り見回してみると見つけた、見つけた。

 ちょうど良いところに。

 

「可愛らしいお子さんですね」

 

 乳母車を押す若い母親がいたので、近づいた。

 

「あ、驚かないで下さい。私は薔薇騎士レンジャー……見習いです」

 

 始めは驚いた様子だった母親も、本日のショーに出る劇団員とカンチガイしてくれたようで、警戒を解いてくれた。

 

「今日はウチの息子たちも楽しみにしていますの。頑張って下さいね」

「ありがとうございます。……ところでこのイカス乳母車をちょっと拝借したいのですが」

「はい?」

 

 ひょいと眠る赤ん坊を抱き上げて、母親に手渡した。

 

「万一、破損してしまった場合は、薔薇の騎士団養成所、黒薔薇教官、レヴィアス=ホールスト様が弁償なさって下さいますので、ご心配なく」

 

 さっとメモ用紙を渡して、颯爽と乳母車に乗り込んだ。

 ……乗り込んだといっても、小さいからお尻しか入らないので、手足は外にブラ下がっている。

 

「さぁ、乗りたまえ、勇敢なる少女よ!!」

「はいっ! ……でも、どこに乗ったらいいの、レッド?」

「おなかの上だよ、さぁ!!」

 

 私たちは、ぽかんと口を開けて立ち尽くしている若いお母様の目の前で続く坂道に向けて発進した。

 始めはゆっくりと。

 徐々にスピードが増し、小石を跳ね上げて突き進む。

 

「怖いかな?」

「大丈夫よ、レッド!!」

「よし、君は勇敢だ。一緒に悪を退治しよう」

「うんっ!!」

 

 ゆけ! スーパーベビーカー・スカイドラゴン!! 疾風のように!!

 乳母車は風を切って進んだ。

 

「待てー! ドロボーウッ!!」

「待ちなさい、子供の買い物を横取りするとは何事か!!」

 

 こんな風に追いかけられようとは思っても見なかったのだろう。

 男は振り返ると仰天して、足の回転を上げた。

 

「うわあっ!?? なんだよ、ソレぇ!?」

 

 フッ。愚かな。

 この坂道で足と車では勝負にならない!!

 もう捕えたも同然だ!

 乙女の人形を横取りしたその理由とやらをたっぷり聞かせてもらおうではないか。

 勝ちを確信した我々は、ほくそ笑んだ。

 んが。

 アレアレアレアレ?

 犯人にぐんぐん近づいて……

 

「くそっ、捕ま…………る? って……え?」

 

犯人を追い越してしまった。

なんてこった!!

そのとき、少女が跳んだ。

私の腹を容赦なく踏み台にし、男に踊りかかったのである。

 

「お人形、返して!!」

 

なんとムチャな。

でも私は無茶をできる子はキライじゃない。

少女と男がもみあっている。

突き飛ばされるだけで終ればいいが、刺されたら大変だ。

急いで私も参戦しようとしたが、

 

「尻が抜けないっ!!!」

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