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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 45-4

 落ち葉を舞い上げ、森の中をひた走りながら、連続で魔法を飛ばす。

 

リク「くそっ、当たらない! 木が邪魔だ!!」

 

 木々に行く手を阻まれ、視界を遮られ、魔法が思うように届かない。

 加えて相手は地の利を生かすのが恐ろしく巧みだ。

 不規則に生えそびえた木々を味方にしている。

 こちらのように落ち葉を舞上げて走ることもなく、もちろん足を取られて滑ることもない。

 

リク『誰かがいれば、連携とろうと思ったのに…!』

 

 走れど走れど、誰にも遭遇せず、気配すらない。

 どうやら、自分以外は全滅してしまっていたようだ。

 

リク『皆が悲鳴上げるの、わかるよ。こりゃあ…………怖いわ』

 

 とてもじゃないが、人間に追われている気がしない。

 どうかすると、ずっと同じ距離を保ってピッタリ背中に張り付いているのは、ヒサメ先生であることを忘れてしまいそうだ。


▽つづきはこちら

 

リク『いや、実際に俺はほとんど忘れて本気になってる……。先生だってわかってるけど、でも……』

 

 手を抜く勇気がない。

 所詮、模擬戦だからと足を止めてしまっても、捕まって、ああ残念ですむハズなのだが、それをするのをためらわせる戦慄が体中を駆け巡っていた。

 

リク『落ち着け、考えるんだ、リク……! 木が多いところは不利だ。広いところに誘い込もう!!』

 

 倒すよりも追いやるのを目的と切り替えて、少々大きめで派手な効果の魔法を放った。

 

リク『もう少しだ、もう少しで原っぱに出る!!』

 

 この森は養成所から歩いても10分はかからず、格好の遊び場だ。

 中がどういう構成なっているかくらいは、あまり日曜も外に出ないリクだって承知していた。

 森の中心部には少し開けた場所がある。

 そこを決着の場と決めて走った。

 

リク「よし、出たぞっ!」

 

 原っぱに飛び出すと杖を握り直し、次の魔法の準備をする。

 

リク「? また気配を見失った。どこだ!?」

 

 呼吸を整えて右に左に視線を走らせる。

 

リク「来る……? ……どこから?」

  「………………来た」

 

 隠れる場所がないとあきらめたのか、堂々と薄暗い森の中から姿を現した氷鎖女にリクが魔法を放つ。

 

リク『もう障害物はナシ! 隠れる場所もナシ! 先生は魔法を使ってこない! つまり、攻撃手段もナシ!!』

  「………勝てる!!」

 

 勝利を確信して、次々と魔法を連打。

 これほどの短期間で連打できるのは、2回生においてはリクとクレスだけだ。

 魔力は底尽きることを知らず、恐るべき力を秘めた術者の体内から導き出され、杖を伝って2年間育て上げた水晶球から放たれる。

 なのに、

 

リク「あっ、当たらない!?」

  『障害物もないのにっ!!』

 

 相手は最小限の動きでスピードを重視した細かい魔法をかわしながら、悠然と距離を縮めてくる。

 使うと宣言していた防御魔法も、実際は一度も使っていないであろうことが想像できた。

 

リク「ダメだ…っ! 当たらないなら、範囲の広い魔法で…っ!!」

 

 クレスが失敗したように、リク自身がアンを止めたのと同じ轍をキレイに踏んで、……………………彼は自滅した。

 

氷鎖女「♪」

リク「たははァ~」

 

 顔にラクガキされて、ガックリとその場にひざを折る。

 最後に大技を使い、自分の視界も奪って結局、捕まってしまったのだった。

 

リク「なんて描いたんですか?」

氷鎖女「……ぞうきんの搾り汁」

 

 ちなみにアンは「腐った牛乳」だったとのこと。

 

リク「………はぁ」

 

 緊張が一気に解けて、どっと疲れがのしかかってきた。

 

リク「参りました……」

 

 肩を落として両手を小さく万歳する。

 一瞬、勝てると思ったのが大きな間違いであった。

 天才だのなんのと騒がれてはいるが、この人がいる限り、自惚れていられないなとリクは思って苦笑いを浮かべる。

 

リク『だいたい、ヒサメ先生に天才だなんて言われたこと、1度もないもんな。クレスも俺も』

氷鎖女「ま。そう嘆いたものでもござらん。70点くらいやってもいい」

リク「70点……他に誰かいるんですか?」

氷鎖女「もうそちらで最後でござる」

リク「時間はええと……」

氷鎖女「1時間12分」

リク「たったそれだけしか逃げてなかったの? ウソォ~」

 

 もっと時間を稼げていたつもりだったのに。

 ショックだ。

 

氷鎖女「1時間きってしまうとは思わなんだ。1時間内に全員捕らえてやろうと思ってたに。無念」

リク「ははっ……喜んでいいんだか何だか……」

 

 肩をすくめる。

 皆の待つスタート地点へ戻ろうと歩き始めたリクの服を氷鎖女がふいにつかんだ。

 

リク「? 先生?」

氷鎖女「待ち!」

 

 言葉に重なって、目の前の地面が異様に盛り上がった。

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