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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 44-4

氷鎖女「お? ゴールデン」

 

 氷鎖女がメイディアの存在に気が付いた。

 

メイディア「!!」

リク「あ、メイディ。一緒に食べようよ。ホラ、おいしいよ? 焼き芋みたいで」

氷鎖女「みたいじゃのぅて、焼き芋でござる」

  「……食う?」

 

 リクに忙しくツッコミ入れつつ、芋を突き出す。

 

メイディア「いえ。授業中ですからっ! 失礼します!!」

 

 あわてて走り去る。

 

氷鎖女・リク「…………………」

アン・シラー「………………」

 

 


▽つづきはこちら

 秋の試験がもう目前だというのに、未だ魔法を使えないでいた。

 担任教官は出来の悪い生徒に容赦がなく、メイディアは養成所を辞めるかどうかの瀬戸際に立たされていた。

 

レヴィアス「アナタは基本がなっていない! ヒサメ殿のところで一体、何を習ってきたのかね!?」

メイディア「……は、はい…スミマセン」

     『来たばかりのころは、基本がよくできていると褒めてもらったのに、どうして違うことをおっしゃるのかしら……? ……いいえ、基本ができていたのに、どうしてできなくなっているんだって言われたのよ。つまり、基本に戻れってことね』

 

 指示の内容が成績しだいで変わってしまう教官の言葉を、何とか拾って解釈をしようと必死だった。

 レヴィアスクラスの特徴は、少数精鋭。

 才能のきらめきを持った生徒は、ぐんぐんと目覚ましい早さで成長し、黒薔薇のトップグループに軒並み名前を連ねている。

 逆にそうでない場合は、途中で挫折する生徒も多い。

 彼は一流を育てる手腕を有していたが、片方で生徒つぶしの一面も持ち合わせていた。

 そんなやり方に反発する意見もなくもなかったが、何せ確かな実績がある。

 彼の輩出した生徒らが騎士団で活躍を見せている以上、上回る実績を持たない他の教官たちは口を挟むことができないのであった。

 

黒薔薇教官「ヒサメ殿」

 

 職員室から出た氷鎖女の後を追って同学年を担当する別のクラスの黒薔薇教官がやってきた。

 

氷鎖女「何か?」

黒薔薇教官「君のところのメイディア君だが」

氷鎖女「いえ、アレはレヴィアス殿のところへ編入となっておりまする」

黒薔薇教官「それなのだが、ひとつ呼び戻してやってはどうか?」

氷鎖女「は?」

 

 側によって腰をかがめると、小さな声で耳打ちをしてくる。

 

黒薔薇教官「大きな声では言えないが、彼の元では恐らく、彼女は耐えられないのではないかと思ってね。いや、余計なお世話かもしれないが……」

氷鎖女「耐えられぬ? あの者は、負けん気が人一倍強いから大丈夫でございましょう」

 

 完全に見捨てられたメイディアは、今にも壊されてしまいそうに周囲の教官たちからは映ったのである。

 このことがあってからすぐにレヴィアス本人からも引取の要請がなされた。

 ……会議室。

 

氷鎖女「ウチに戻す?」

レヴィアス「いえ、戻すというよりは、またトレードをしたいのですが」

氷鎖女「交換…? それは何ゆえでございましょうや? アレはレヴィアス殿をずいぶんと慕うておりまする。このこと、知れればさぞや悲しみましょうに」

 

 袖を口元にあてて、肩をすぼめる。

 

レヴィアス「ええ、それはもう重々承知しています。彼女ほどの逸材、手放すのは惜しいと私も思っているのだがね」

ヒサメ「はぁ。ならば……」

レヴィアス「しかし、私はリク君とクレス君をどうしてもこの手で育ててみたい」

 

 自らのしなびた両手を開いて見つめ、ぎゅっと握り締める。

 

氷鎖女「……………」

レヴィアス「前にも言わせていただいたと思いますがね。貴方はまだ若い。経験も皆無。他の生徒ならどうにかやっていけても、リク君やクレス君ではどうでしょう? 彼らは下手をするとすでに教師を越えられる力を持っているかもしれません。そうなったとき、貴方の手に負えますか?」

氷鎖女「さて」

レヴィアス「そうでしょう。だから、私に任せなさい。私ならば、彼らの力を最大限に引き出すことが可能なのです」

氷鎖女「でしたら、ゴッ…メイディアの力を最大限に引き出させてやって下され。あの者、かなりの不調と聞き及んでおりますれば」

レヴィアス「…………ふぅ」

氷鎖女「?」

レヴィアス「そのことなのですがね。もしや貴方、」

氷鎖女「は?」

レヴィアス「……………」

 

 言いかけて、黙り、氷鎖女を呼び出した会議室内をうろうろと歩き回る。

 

氷鎖女「……あの?」

レヴィアス「言いにくいことですがね」

氷鎖女「はい」

レヴィアス「もしや貴方は、メイディアに才能がないとわかって私に預けた……」

氷鎖女「うん?」

レヴィアス「違うかね?」

氷鎖女「違います。先程、貴方様は“彼女ほどの逸材、手放すのは惜しい”とおっしゃられたばかりで、何故そのような物言いをなされます」

レヴィアス「貴方に遠慮をしたのですよ」

氷鎖女「……遠慮……」

レヴィアス「まともに受けないように。社交辞令です。そんなこともわからないとは……田舎者はこれだから」

氷鎖女「では、後者が本音というわけでござるか」

レヴィアス「当然です。現に彼女は魔力切れを起こした。自分のところでそのような生徒を輩出したくないから、私に任せようとした。言い訳はありますか」

氷鎖女「言い訳はございませぬが、違います。あの者は、魔法を使えます」

レヴィアス「意地を張るのはよしなさい。私にはわかってしまっているのだよ」

氷鎖女「どうわかっておいでか?」

 

 額当ての下で、細い眉がぴくんと吊りあがり、金色の瞳が細められた。

 けれど表面上からは、相変わらずの無表情である。

 もちろん相手は変化に気づきもしない。

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