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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 66-24

鎮「……おまーは、ウンコかーっ!?」
 
 削るのをやめて人形をリクの脳天に叩きつける。
 ごつんと重低音がして、
 
リク「いでっ!」
鎮「あっ!」
 
人形の首がもげた。
 
鎮「これっ! 人形の頭が落ちたではないかっ!!」
リク「いぃってーえっ!? マジ痛っ! てか、それ、先生が悪いんじゃん! 俺のせいにしないでよっ」 あせっ。
 
 涙を浮かべて頭を抱えながら抗議する。
 
鎮「リクがウンコだから悪いのでござるっ! このウーンコウンコ!」
リク「ウンコウンコ連発しないでよ、ウンコ!」
 
 人形の頭を拾って投げ渡す。
 
鎮「可哀想に、この人形は“リクのせいで首モゲ太”という名になってしもたわ」

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レイディ・メイディ 66-23

 どよぉぉ~ん……
 
リク『バケツだよ! バケツに入っているよ!? 掃除用じゃないの、ねぇ、コレ!?』
 
 暗雲が心に立ち込めたが、目の前で教官がそわそわしているところを見ると、さてはこの一言を期待しているに違いない。
 わかってしまってリクは実行せざるを得なくなってしまった。
 
リク「いっ……意外にイケてるよ」
 
 無理に口に入れて……言ってしまった。
 嘘を。
 

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レイディ・メイディ 66-23

リク『どうしようか、この生き物……ちょっと……』
 
 なでてみたくなる。
 よしよし。
 で。
 なでると怒る。
 シャアァー!と奇声を発して両手を振り回す。
 
リク「あっはははは」
鎮「なでてはいかぬっ! 無礼者っ!」

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レイディ・メイディ 66-22

ジェーン「アン!」
アン「私が泣いてても、誰も心配してくれないのに!」
ジェーン「してるじゃない、私が!」
 
 素早く立ち上がって、腕をつかむ。
 
アン「地味で可愛くない子は、放って置かれちゃうのね、泣いてても!」
ジェーン「いい加減にしなさいよ! 誰もそんなこと言ってないでしょ!! 私もモーリーも、ステラもクロエもレイ様も皆、アンを心配しているじゃない!」
アン「私といるとジェーンに悪評立つわ! さよならっ!!」
ジェーン「ちょっ……待ちなさいよっ!!」
 
 興奮したアンは言いたいことだけわめくと今登ってきた階段を一気に駆け下りていってしまった。
 
ジェーン「もうっ! 知らないんだからっ!!」

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レイディ・メイディ 66-21

 イヤイヤするように激しく首を振って、その場にしゃがみこむ。
 
リク「ダメだよ、アン。ワガママ言わないで? もう閉館の時間なんだからさ。……ほら、後から来る人たちがビックリしているよ?」
アン「イヤよ!! 私たち、恋人だもん! それなのに手もつないでくれないなんてっ」
リク「……は、恥ずかしいから……だよ」
 
 我ながら苦しい言い訳だと思った。
 けれど他に思いつかなかった。
 しどろもどろになっていると丁度よくというべきかやっぱりかと嘆くべきか図書館長がやってきてアンを叱った。
 
老人「バカモノ! この神聖な場所でなぁにをやっておる!?」
 

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レイディ・メイディ 66-20

 ふいに彼女もこんな気持ちでいたのかなと1年前のメイディアを思い浮かべた。
 丁度、昨年の秋の試験。
 レヴィアス教官に見捨てられて彼女はボロボロだった。
 リクと違って天才などでは決してない彼女はもっとずっと切羽詰っていたに違いない。
 彼女なら……
 リクは思った。
 彼女なら、恋に落ちてもそれはそれ。これはこれとして訓練や勉強を蔑ろにしなかっただろう。
 彼女なら、仇が失われても生きる気力すら失うことはなかっただろう。
 彼女なら、教官の境遇を知ったら自分のように手をこまねいてなんていなかっただろう。
 ストイックで強い、強い彼女なら。

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レイディ・メイディ 66-19

 クロエが目の前から消えてくれて、ようやくリクを取り戻せたアンは肩で息をついた。
 念願叶った恋を守るために必死で、また夢見心地でもあるアンは周りが全て敵であり、一方でこの恋は応援されているものだとごく自然に受け止めていた。
 全神経が恋人に向いていて、それ以外に気を回せなくなっていたのだ。
 そのために友人に寂しい思いをさせても気がつかなかったし、会話といえばリクのことばかりでそれを相手が聞いていて楽しいのかどうかを吟味することもしなかった。
 いつしかジェーンとモーリーはリクがいないときの寂しさを埋める代役に過ぎず、それもただうなずいてリクの話を聞いてくれるだけの便利な相手と化してゆく。
 モーリーはそんなアンに対して全く気に留めておらず、相変わらずどこ吹く風。
 一方、表面上よりも本当はずいぶんと「気にしい」であるジェーンは、今は相手に夢中な頃だから仕方がないと苦笑いを浮かべるだけだった。

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