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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 9-4

 昨日と同じ会場にやってくるとそこではすでに白薔薇候補生たちの試験がスタートしていた。

 

ジャック「ホラ、開会式に間に合わなかったじゃないか。説明聞きそびれちゃった」

ガーネット「……俺たちが聞いてどうする」

ジャック「それもそうだな。俺たちは青薔薇だし」

ガーネット「いや、そうでなくて」

 

 しかしもはや聞いていないジャックは早々に早々に敷物を広げ、その後ろに2本の杭を立てて製作した垂れ幕を縛り付ける。

 巨大ビックに“がんばれ! クロエ=グラディウスちゃん☆ ガーネットお兄ちゃんも見ているぞ!! 目指せ白薔薇”と書いた例のブツだ。

 旗ももちろん健在。

 

ジャック「ホラ、ガーネットもこの旗を持つんだ」

ガーネット「……………………」

 

 ず~ん…… 暗い表情で無理に持たされた旗を見つめる。


▽つづきはこちら

 一方、その応援される側の妹・クロエ。

 

クロエ「……………………なんか……ううん、わかるんだけどさ……ちょっと……嫌だよ……ね?」

モーリー「うん……。なんでこんなにリアルなのぉ、この…………」

 

 人工呼吸練習用人形!

 目を閉じて横たわる人形はやたらと精巧にできており、しかしいくら精巧にできていたとしてもやはり人形は人形でしかなく、気色悪いったらない。

 白薔薇は白魔術専門部隊だ。

 白魔術は守りの結界と回復が中心となる。

軍隊においては強力な盾の役割と共に優秀なドクターでなくてはならない。

 よって、今回の試験では人工呼吸やケガの応急手当などもやらされるのである。

 他に主体である回復魔法や結界魔法を試されるのだが、どちらにせよ白魔法の試験には華やかさはなく至って静かに行われるのだ。

 全員分の人形は用意できないため、一部は人工呼吸から始め、他は応急手当のテストからスタートする。それが終えると交替して人工呼吸からスタートした者は応急手当に移り、応急手当だった者たちは人工呼吸の試験に移るといった具合だ。

 今まで使用されていた古い人形はいかにも人形で笑ってしまうくらいだった。

 しかし、新しく導入された数少ない人形は職人のこだわりが見えるくらいによくできている。

 ここまでやらなくてもいいのでは?などと問いたくなるほどに。

 

クロエ「何で私たちにコレが回ってくるかな……」

 

 試験官の合図があって、一斉にスタート。

 

クロエ『“まずは呼びかけて、反応を確かめる”……っと』

 

 教科書にあった手順を思い出す。

 

クロエ「もしもし? 大丈夫ですか? 意識はありますか? あったら答えて下さい」

 

 人形は当然ながらしゃべらない。

意識を失った人を想定しているのでこれで構わないのだ。

 呼吸を確かめる。

 

クロエ「うん、意識なし。呼吸も止まっているようなので、人工呼吸に移ります」

 

 宣言をしていざ、マウス・トゥ・マウスを実行

の、ハズだったが。

 

クロエ『……ううっ……死体っぽい……。これにチューするのぉ~? 嫌だな~……。あ、そうだ。この人形は親しい人だと思えばいいんだわ!』

 

 ひらめいたっ☆

 

クロエ『そしたら、助けなくちゃって思うから必至に……。うん、これはイケる!』

 

 キュピーン! 目が輝く。

 

クロエ「よし……」

 独りうなづ

 

クロエ『私は白薔薇の正騎士なの。それでとある秘密の任務を受けて仲間と共に少数部隊を結成。私たちは旅に出たわ。おっと! 悪の手下が現れた。きゃあっ! 今よ、メイディア黒魔法で攻撃してっ! 敵がひるんだわっ! レイオット、攻撃しかけて!! そのとき、ガサリと別の方向の草むらが動いた気がした。あっ、危ないっ! とっさに叫ぶ私。それと同時に矢が……っ!!

クロエ「レイオット危ない、避けてェーっ!!!」

 

 目を見開いて、クロエが叫んだ。

 一瞬、会場は静まり返って彼女を注目。

 

クロエ「……ハッ」

 

 たちまちクロエの顔の温度が上昇。

 

クロエ「ごっ……ごめんなさい……」

 

 真っ赤になって肩をすくめる。

 試験官が「気にするな、続けなさい」と周囲に呼びかけて、クロエに真面目にやるようにと注意する。

 

クロエ「すみません」 ショボーム……

 

 見学しているガーネット「…………………………」

 眉間に手を当てて目を閉じる。

 

ガーネット『また何か妄想膨らませていたな……』

クロエ『いけない、いけない。つい本気になっちゃった……』 頭を軽く振る。

 

 試験中だったことを危うく忘れるところであった。

 人形に意識を戻すが…………やっぱり不気味だ。

 

クロエ「…………………………」

   『やっぱりもう少し考えよう……』

   『そう、レイオットに矢が。その時よ! 疾風のように現れて矢がレイオットに届く前に剣で振り落とした男! それはガーネット=グラディウス!! 実は生き別れになっていた、クロエ隊長の兄だったのです!! 数年振の再会を果たした兄と妹……。悲しい運命を乗り越え、離れていた長い時間を隔てて私たちは引き会わされた。回り出す運命の歯車……

ジャック「なんだ、まだやらないのかな?」

ガーネット「やり方度忘れしたか?」

クロエ『 「お、お兄ちゃんなのね……?」「フッ。クロエか……キレイになった」「お兄ちゃん!」「クロエ!」

 

 クロエ、人形を抱き締める。

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