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レイディ・メイディ 8-3
2007.11.06 |Category …レイメイ 6-10話
場面変わって再び試験官室。
ヴァルト・ナーダ「………………………………」
何故か冷めた表情で腕を組んでいる二人。
ニケ「長引くね、この戦い」
氷鎖女「うん、あのイモムシウンコ……なかなか食らいつくでござるな。話題のレイオット相手によくやりよる」
アイビー「その……イモムシウン……ってなんなの?」
氷鎖女「あ、それこっちの話。ウチの組のリクに似た名前のまぎらわしい名前の奴だったと思ったな」
ヴァルト「……レクだ」
氷鎖女「あ、そう。ソレソレ。ソレでござる」
ヴァルト・ナーダ「………………………………」
二人は今、レクとレイオットの戦いより別のモノを発見して閉口していた。
壁には左に黒魔術の試合が。右に赤・青剣士試合が。
戦いの様子を映した画面の端にときどきチラチラと見え隠れしているあの青い制服は……
まぎれもない。“奴”のである。
▽つづきはこちら
ナーダ「ともかく。あの今世紀最大のヴァカを連行した方が良くないかしら、ヴァルト」
ヴァルト「そうだな。ちょっと行ってくる」
ニケ「ヴァルト直々に?」
ヴァルト「ああ。俺じゃないと“奴”はおとなしく連行できないだろうからな」
ナーダ「頼むわよ。私はパス。あんな面倒くさい奴」
アイビー「ああ、もしかして……“アレ”? 来るときに会ったなぁ」
ヴァルト「だったら連行してくれれば良かったものを」
アイビー「嫌だよ」
氷鎖女「???」
誰のものとも知れないアドバイスを受けたレイオットは強かった。
苦戦を強いられながらも、とうとうレクの手から剣を跳ね上げる。
レク「うっ!」
石の床に落ちた剣の金属音が背中に聞こえた。
審判「勝者、レイオット=ジーエルン! 両者、礼!」
レイオット「ありがとうございました」
腰から折って深く頭を下げる。
レク「ありがとうございました……」
こちらは失意をにじませて小さく頭を下げた。
レク『……負けちゃった……ガーネットさんが見に来てくれてたのに……。皆があんなに応援してくれてたのに……』
悔しくて悔しくて、なんだか少し泣きたくなった。
重い足取りで階段を降り、ため息をつくレクにいきなり激が飛んだ。
「あのレイオット相手に良い試合内容でした。メソメソするのはおよしない。みっともございませんことよ」
この特徴的なしゃべり方は……。
ハッとなって顔をあげると目の前に髪のロールがほとけたメイディアが仁王立ちして待っていた。
メイディア「拝見させていただきました。貴方の試合」
レク「メイディ!」
メイディア「……メイディアです。ア。」
首を突き出す。
レク「どうしてこっちに?」
メイディア「ワタクシの試合は終わりました。もちろん勝利です」
レク「自分の終わったからって……他の試合も見ておかないと……。盗めるところもあるんだから」
メイディア「ワタクシに説教する気ですか。負け犬の分際で」
レク「ま……負け犬って……メイディ、もっと言葉選んでくれよ~。俺、今かなり凹んでるんだからさぁ」
メイディア「まったく勝ちなさいと言ったのに……。命令無視は厳重処罰モノよ!」
レク「……エ?」
『あの声……』
レイオットを応援する黄色い声の波にまぎれて届いた勝利せよという激励。
レク「あれって気のせいじゃなかったのか……」
メイディア「何がです?」
レク「あ、や……別に」
『何だ、少しは可愛いところもあるんじゃないか』
メイディア「ま、本命は貴方じゃありませんけどね」
レク「ハイハイ」
「あ、そうだ。ガーネットさんっ! ガーネットさんにあのときのお礼を言わなくちゃっ! メイディ、ゴメン。また後でっ」
メイディア「あっ」
メイディアを押しのけて駆け出して行ってしまう。
ニケ「結局、レイオットかー」
氷鎖女「あっさりケリがつくと思ったが、なかなかどうして。名勝負でござったよ」
ナーダ「そうね」
氷鎖女「それにしてもヴァルト殿は一体?」
アイビー「今にわかるよ」
レクがガーネットを見つけた場所に行ってみるともうそこには誰もいなくなっていた。
遅れてレイオットもやってくる。
レク「レイオット? どうしたんだ?」
レイオット「こっちの方から私を勝利に導いてくれた声が……」
レク「ああ……」
レイオット「レクは?」
レク「俺は恩人が見に来てくれてて……ガーネットさんっていって俺の憧れの人なんだ」
……………………………………………………。
その憧れの人は今、試験官室に連行されてお叱りを受けていたり。
ガーネット「だから、俺はこの人に巻き込まれただけで口出しもしていないし、ただ弁当を食べてただけですよ」
ジャック「両方の応援したんだからいいでしょう。何故叱られるんですぅー」
上目使いになって口をとがらせる。
ヴァルト「うるさい、試合中はアドバイス禁止だ。筆記試験中に答えのヒントを言うようなものだろうが。結果にかかわる」
ナーダ「結局、結果は同じだったとは思うけどね」
ヴァルト「内容が違ってくるだろう」
氷鎖女「しかし聞いただけでそこからヒントをつかみとれたのは素晴らしいでござる。なかなかできることではないでござるな」
ニケ「言えてる。そこも評価してあげれば?」
ナーダ「そうね。でも、とりあえず………………コイツラどうしてやろうかしら?」
アイビー「ボコッて逆さ吊り?」
ジャック「エーッ!?」
ガーネット「俺は関係ナイから」
ヴァルト「立ち入り禁止!」
ジャック「そんなぁ、それは困ります。明日は本番のクロエ君の番なのに」
ヴァルト「クロエ?」
ジャック「ガーネットの妹です」
ヴァルト「ほう? ガーネットの? それは期待できそうだな」
ガーネット「……どうだか」 目をそらす。
ジャック「こうやって……ホラッ、応援幕も作ってきたんですよ♪」
ビラリと例の物を広げて見せる。
ヴァルト「……あのなぁ……」
ジャック「旗もあるし。これでクロエ君も勇気100倍だっ☆」
ガーネット「いいから。いらないから」
ジャック「エンリョは無用だ、ガーネット」
ガーネット「ほんっと、話聞いてないよな、アンタは」
……敷地内よりつまみ出された憧れのお方とその上官。
ジャック「そうだ。明日は私服でくればきっとバレないぞ。学徒のカッコしてくるというのはどうだろうか?」
愛ドラゴンのエリーゼの手綱を引きながら歩く。
ガーネット「まぁたぁ。見つかったら今日みたいに注意だけじゃすまないだろ」
ジャック「大丈夫だって。学徒にまぎれていればバッチリだ」
「クロエ君もお兄様が見ていてくれれば頑張れるってもんだ」
ガーネット「なんだかなぁ」
明日も邪魔しに来る気、満々のようだった。
●Thanks Comments
タイトルが…
『無題』になってます、ゼロ吉さん!!
直しました。
ご報告ありがとう。
コピーするときに移動させるの忘れてました。