HOME ≫ Entry no.66 「レイディ・メイディ 10-6」 ≫ [72] [71] [70] [68] [67] [66] [65] [64] [63] [62] [61]
レイディ・メイディ 10-6
2007.11.10 |Category …レイメイ 6-10話
クレスとメイディアが猫を構っていたその頃、ジェーンたちはリクとレクを見つけて呼び止めていた。
ジェーン「ねぇねぇ。せっかくの日曜日だし、町に遊びに行かない?」
レク「あ」
モーリー「ね、行こ、行こ」
勝手にレクの腕を取ってピタリとくっつく。
レク「わっ、わっ」
「あ、あの……」
胸の感触が腕に伝わって、顔を赤くする。
▽つづきはこちら
リク「ああ、ウチの組の人達と……」
モーリー「私、白薔薇専攻のモーリーでーす♪」
リク「モーリーね。うん」
モーリー「リク君とレク君でしょ? 知ってるよー。部屋のコたちが皆、アンタたちの友達だから話聞くし。それにリク君の方は嫌でも目立つしね」
リク「あれ? 目立つことなんかしたかなぁ?」
レク「……どーせ顔だろ。ふーんだ」
リク「服じゃないかな?」
そう言う彼の服はズルズルとした、布一枚を正面で重ね合わせて着る特殊な衣服だった。
東の海にポッカリ浮かぶ小さな島国の民族衣装である。
彼はその東の国へ行ったことがなかったが、今は亡き父親の故郷なのだ。
モーリー「両方。それに天才なんでしょ? 近くで見るとホント、キレーな顔してるのねぇ」
アン「ちょっとモーリー、失礼でしょ」
モーリー「あれー、ごめんなさぁい」
口先だけで謝るものの、特別気にもしていない様子。
ジェーン「ねぇ、ホラ、行こうよ」
リク「俺はやめておくよ」
アン「そ……そっか……仕方ないよね……」 がっかりしてうつむく。
モーリー「エエ~。行こうよぅ」
レク「あ、俺もよしとく……」
モーリー「なぁんでぇー? 私たちじゃイヤ?」
レク「そ、そうじゃないんだけど……その……ほら、お金持ってないし……その……だから……」
リク「じゃ」
断る口実を一生懸命並べ立てるレクと対照的にリクはあっさりと身を翻して先に行ってしまう。
レク「待てよ、リク。俺も」
あわててついて行く。
モーリー「ああん、逃げられたァー。レク君、可愛かったのになー」
ジェーン「ねぇ」
モーリー「なぁに?」
ジェーン「ううん、アンに」
アン「私?」
リクの背中に見入っていたので必要以上に驚いて声が裏返る。
アン「ナ、ナニ?」
ジェーン「リク君ってまさかとは思うけど、メイディお嬢のコトが好きなワケじゃないよね?」
アン「……何言ってるの? だってメイディアはフェイト君のコトが……」
ジェーン「だから、メイディアはね。でもリク君はわかんないじゃん」
アン「それはないよ。だってメイディアったら、リク君のコト嫌ってるワケだし、リク君だってあんなにモテるんだもん。あんな性悪の女の子なんか相手にしないよ。リク君は貴族だからってチヤホヤする男の子たちとは違うもん。それにメイディなんてそんなに皆が言うほど美人でもないわ! そりゃちょっとはカワイイかもだけど……色白くて……ちょっとは……その……アレかもしんないけど…… でもあの、でももっと……レイオットとかそういう人なら話は別だけど、リク君が相手にするワケないよ」
ジェーン「そんなにムキになんなくったっていいでしょ」
モーリー「あーらら」
アン「だってリク君、言ってたよ。メイディアは見てると飽きないって。それって側にはいたくはないけどっていう意味じゃないの!? 絶対そう」
興奮してまくしたてた。
ジェーン「わかったわかった。どうどう。私が悪かったわよ」
アン「………………………………」 顔を背ける。
『メイディアなんか……メイディアなんか……あんな……何でも持ってるコが……何でも思い通りにできちゃうコが……これ以上、何を望むっていうのよ。外の庶民の世界になんてしゃしゃり出て来ないでおとなしくお屋敷で一生終えればいればいいのに……! 私にだって夢くらいみせて。そうよ……。リク君、試合の時、私が不安だったのをちゃんと見ていて声をかけてくれたんだもん。アンタにかけてくれた、メイディ? 私の方が好かれてるんだから。私は人に嫌われるタイプじゃないもの。私はあんまり美人じゃないかもしれないけど、人間顔じゃないわ。料理だって上手いし、面倒見だって良い方だし、縫い物だって得意だし……女らしいもん。もしかしたらリク君はいい女に言い寄られ過ぎてもっと素朴な女の子の方がいいってうんざりしてるかもしれないじゃない。……そうよ。私にだってチャンスがないワケじゃ……』
ジェーン「まぁ、私たちに手の届く相手じゃないかな」
アン「……う……」
モーリー「さー、他の捕まえよ、他のオトコ♪」
例の3人娘をうまいことかわして遠ざかり、
レク「あー、驚いたぁ~。俺、ああいう女の人って慣れてないからちょっと苦手なんだよな」
リク「俺もだよ」
レク「リクも? そうかなぁ? 落ち着いて見えたけど」
リク「あわてはしないけど、得意ではないなぁ」
レク「そっか」
その足のまま、部屋まで戻るとフェイトが先に到着しており、本を読んでいた。
レク「あっ! フェイト」
フェイト「うん?」
レク「いくらなんでもあんな言い方ってなかっただろ」
怒ったような顔で近づくと本を取り上げる。
フェイト「やっぱり覗きしてたのか」
半分あきれ、半分怒ったように舌打ちをする。
レク「……あ、いっ」
リク「あーあ、バラしちゃった」
レク「ご、ごめ……」
フェイト「お前に文句言われる筋合いはナイだろ。関係ないじゃないか。可哀想だと思うなら、お前が彼女と結婚してやれば?」
レク「そういうことじゃなくて」
フェイト「悪いけど、俺は彼女のこと好きになれそうもないから。だって失礼だろ。彼女、俺に好意があるワケじゃないんだ。俺が貴族で試合に勝ったから……それだけって言い方だったろ」
リク「でも他にも貴族の人はいるよねぇ。貴族の女の子はいないかもしれないけど、貴族の子息なんかは箔をつけるために結構、薔薇の騎士の資格とるっての多いみたいだから」
フェイト「そうみたいだな」
リク「で、その中から選ばれたんだ。スゴイスゴイ」
フェイト「迷惑な話だ」
リク「いいと思うんだけどなぁ、メイディ」
レク「……エ?」
『ウンコなすりつけられたのにっ!?』
リク「楽しくて。見てて飽きないよ。次に何をしでかすのかなーってね」
レク「リク……問題、ズレてる」
リク「そうかい? あはは」
フェイト「ついていけないな……」 息をつく。
メイディア=エマリィ=シャトー、15歳。
初めての失恋経験をする。
ただしそれが恋だったかどうかは非常に怪しいモノであった。
ただ、ひどく傷ついたのは確かである。
まだ他人に直接傷つけられたことのなかった幼く守られた心はこの日を境にひとつ、新しい経験を積んだ。
本物の恋はまだ先のようである。