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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 11-2

氷鎖女「……といったところで本日は終了でござる」

 

 授業終了の鐘が鳴って氷鎖女は教本をパタンと閉じて時間ピッタリに出て行こうとする。

 その彼を引き留めた者がいた。

 

学徒「先生、質問です」

氷鎖女「うん?」

 

 ぎこちなく振り返る。

 

学徒「先生はおいくつなんですか」

氷鎖女「……ハ?」

学徒「先生、何歳?」

氷鎖女「…………20」


▽つづきはこちら

学徒「エッエーッ!? 皆ー、聞いたーあ? ハタチだってぇーっ!!」

 

 振り返って叫ぶ。

 

氷鎖女『何をそんなに驚く??』

学徒たち「うっそ~ 負けた」

学徒たち「じゃあ100フィル」

    「やりっ☆ もうけ、もうけ♪」

氷鎖女「??」

 

 教本を手にしたまま、立ち尽くす。

 

学徒たち「絶対俺らと変わらないと思ってたのになー……」

    「ズルイよな、顔見えないんだし」

氷鎖女「……!」

 

 わかった。

 彼らは自分の年齢を当てる賭けをしていたのだ。

 

学徒たち「俺、逆に超じぃさんかと思った。なんかじじむさい雰囲気するし」

    「うんうん、それもアリかと思った。見た目は若いまんまで実はメチャクチャ長生きなヤツ!」

氷鎖女『んなワケねーだろ、くだらん。ニケじぃと一緒にすんな。じじむさいとは何だ、じじむさいとは。どっからどーみてもハツラツ兄さんだろ』

 

 外見や態度で年齢くらいわかるだろうと自分をよく理解していない氷鎖女は内心憤慨した。

 少なくともハツラツしていないのは確かなのだが、本人はそのつもり

 付き合ってはいられないとドアに手をかける。

 

女子学徒「なんでじぃさんなの? それを言うならばぁさんでしょ」

男子学徒「なんでバァさんなんだよ、男なのに」

女子学徒「女の子でしょ、ヒドイこと言わないでよ。声が低い子だっているじゃん。ね、先生」

氷鎖女「エェッ!?」

 

 これには驚いてさすがに訂正を申し出る。

 

氷鎖女「拙者、女子(おなご)にあらず。顔がなくとも声と背格好でわかろうが。愚か者め」

学徒たち「…………………………」

 

 いきなり静まり帰られて、反応に困る氷鎖女。

 彼らが何を考えているのか理解できない。

 

氷鎖女『うむむ……これがじぇねれーしょんぎゃっぷ? ……って、一、二歳しか離れておらぬ者も俺より年上もいるか。するとアレか。これがろーぜりった風若者? でなくば……』

 

 男子学徒が隣に立った。

 

氷鎖女「うん?」

 

 女子学徒が反対側に立った。

 

氷鎖女「ほえ?」

 

 左右を順に見上げると二人は無言で自分を見下ろしていた。

 

学徒二人「背、格好ねぇ……?」

 

 二人して背の低い氷鎖女の頭に手を置く。

 途端に笑い出す教室の学徒たち。

 

氷鎖女『……んなっ!?』

 

 青筋、ピッキーン!

 二人の手を払って今度こそ教室を出て行ってしまう。

 

学徒たち「あー。怒った。珍しー」

    「気にしてたのかな?」

    「つーか、素顔が気にならない?」

    「なるー!」

    「よし、追いかけろー♪」

 

 未だ正体の知れない教官に学徒たちは興味津々だ。

 彼を疑心の目で見ていたものがここにきて信頼に変わり、信頼は興味へと転じていったのである。

 そんな彼らの心の変化などに着目することのなかった氷鎖女はといえば。

 

氷鎖女『まったくまったく。ガキ共め、ガキ共め……』

 

 故郷の里に今もいるであろう兄は背が高くスラッとしていたため、背の高さは双子の弟鎮にとってささやかなコンプレックスだ

 彼らは顔も声も性格も全てが似ても似つかない兄弟であったが、双子のさだめとでもいおうか、比較されるのは免れない。

 背後から迫ってくる複数の足音に何事かと振り返ってみれば、教室に置いてきた教え子たちであった。

 

学徒たち「それ捕まえろー!!」

    「待て待て~」

氷鎖女「!?」

 

 何だかわからないが、とにかく逃げなければ!

 尋常でない恐怖に駆られて走り出す。

 

学徒たち「あっ、逃げた!!」

    「追え追え!」

氷鎖女「ぎゃあ!?」

 

 足の速さと身のこなしの軽さで人の多い休み時間の廊下を苦もなく駆け抜け、あっという間に追っ手の前から姿を消す。

 

学徒たち「あー、逃げられた」

    「どこ行った?」

    「ネズミっぽ」

 

 とんちんかんな所で探し回る生徒たちを遠目に見やって、氷鎖女は深ぶかため息をついた。

 

氷鎖女『おのれ、狩ろうとしおってからに……。ネズミだとぅ!? ぐぬぅ、チビで悪かったな。チビで。ああ、そうですよ。俺はちんちくりんの寸詰まりですよー。成長期なんかとっくに終わってますよー。ネズミだとかミジン子とか言われて一生過ごすんだ。ふーんだふーんだっ』

 

 被害妄想大爆発で半ば投げやりになりながら廊下を彼なりの大股でずんずん進む。

 次は黒魔術とは別の一般学問の授業だ。

 その教室に向かう途中、クロエ=グラディウスとその友人ステラ出くわす。

 

クロエ「あっ! ヒサメさんだー♪」

 

 試験中妄想の続きでうっかり氷鎖女「さん」呼ばわりをしてしまい、友人にひじでつつかれてハッとなる。

 

クロエ「ひっ、ヒサメ先生だぁ」

 

 あわてて言い直す。

 

氷鎖女「…………………………ミジン子ですが…………何か?」

 

 あからさまに不機嫌。

 

クロエ「……エ?」

   『ミ……ミジンコって……』

氷鎖女「用件は?」

クロエ「あ……いえ……別に……ないです」

氷鎖女「……………………」

クロエ「ただ見かけたからご挨拶をと」

氷鎖女「生息してたから?」

クロエ「ハイ?」

氷鎖女「……いや。何でもないでござるよ。確かウチの専攻だったかな」

クロエ「ハイッ♪ ヨロシクお願いします」

氷鎖女「こちらこそ」

 

 すれ違って別れる。

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