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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 11-7

リク「待った待った。ちょっと話がしたいだけなんだ。危害加えないからそんなに脅えなくても」

氷鎖女「ウソ! そのいつもニヤけたよーなツラは何か企んでおる顔だっ」

リク「ニヤけてるなんてヒドイなぁ。別に何も企んでないって」

氷鎖女「嘘を申すな。そうじゃなきゃこんなに追いかけてこないっ

リク「先生が無意味に逃げるから」

氷鎖女「逃げなかったら何もしない?」

 

 立ち止まって後ろを向く。

 

リク「しないしない。さぁさぁさぁさぁ!」

 

 光り輝くような笑顔で両腕を広げてみた。

 

氷鎖女「むしろ余計に怪しい!」

 

 じりりと後じさり。


▽つづきはこちら

リク「怪しくないって。ホラ、お菓子あげるからさ」

 

 袖から例のお気に入りの焼き菓子をチラつかせる。

 

氷鎖女「そ……その手に乗るか! 俺は子供とは一味違うんだぜぃ。そんな食い物で釣れると思ったら大間違いだぞーうっ!! ふんっだ! ふんっだ!!」

リク『一味しか違わないんだ……』

 

 密かにツッコミ。

 しかも口とは逆に視線がお菓子に釘付けだ。

 持った手を左右に動かすと目だけでなく、顔までついてきてしまっている。

 

リク『う~ん、あと一息か?』

  「ホーラ、こっちこっち。おいし~よ」

氷鎖女「……くっ……卑怯な」

リク「いらないなら、たーべちゃおっ♪ あ~ん」

 

 口に持っていこうとすると、シャッ!と目にも止まらぬ早業でお菓子が奪い去られた。

 かといって、まだ近くにいるのかと思いきや、もう距離をとっている。

 廊下の端っこにしゃがみこみ、モシャモシャ食べ始める……先生。

 背中を丸め、クッキーをほお張る彼はなんだか見知らぬ小動物のように見えた。

 そっと足音を忍ばせて近寄ると、彼はピクリとすぐに反応して顔を起こす。

 

リク「ホント、野生の動物ってカンジだねぇ、ヒサメ先生」

氷鎖女「田舎の野猿で悪かったでござるな」

リク「あれ? ちょっと落ち着いた? さっき言葉がいつもと違ってたよ?」

氷鎖女「気のせいでござる」

 

 額あてを直す仕草。

 そういえば、5月の惨劇・落とし穴事件の時も言葉遣いが乱れていたなと思い起こす。

 

リク「口の周り、カスが残ってるけど」

氷鎖女「……ん」

 

 袖で乱暴にふき取る。

 

リク「話がしたいんだ」

氷鎖女「そこから動くな

リク「なんでそんなに警戒するかな」

氷鎖女「話ならこの距離で充分。さぁ言うがよろしかろう。学問や魔法のことであるならば質問を受け付けよう」

リク「あー、もしかして俺って嫌われてる? 何かしたっけ?」

氷鎖女「嫌ってなどいない」

リク「そう?」

氷鎖女「まぁ……一応……」

 

 声のトーンを落とす。

 

リク「……人が嫌い?」

氷鎖女「好き」

リク「……?」

氷鎖女「見てるだけでいいのなら」

リク「俺も好きだよ」

 

 思ったよりも天の邪鬼な性格をしてらっしゃると少しおかしくなった。

 

氷鎖女「そうか」

 

 それきり、二人、黙る。

 一歩、リクが足を出してみると向こうはやはり一歩下がる。

 

リク「いや、ホントに企んでないんだよ」

 

 次の授業の開始を知らせる鐘が鳴った。

 別の教科を選択していたリクだったが、今日の授業はキャンセルすることにした。

 とにかく一度、この風変わりな先生と話をしてみたいと思ったからだ。

 

リク「授業サボッちゃったよ。ここまでしたんだから、絶対捕まえないとねぇ」

氷鎖女「うわ、怖い。いいから遊んでないでサッサと教室に戻るがよろし」

リク「いやいや、もう俺も意地だよ先生」

 

 ゆるい笑顔の彼がそう口にしたところで意地が意地らしく聞こえない。

 それどころか薄ら寒くさえ感じる。

 氷鎖女は思った。

 絶対にコイツは何か企んでいる。そんな顔だ、と。

 彼の場合は単に被害妄想で疑い過ぎるだけなのだが、常に余裕を漂わせ笑顔の耐えないリクは、悪い見方をすればウソ臭く感じないこともない。

 それが稀なる美貌のせいなのか、それとも愛する家族の死にどこか壊れてしまっているせいなのかは定かではない。

 けれど、何をしていても生の人間という気がしないのだ。

 「まるで遠い物語の中の王子様みたい」……というのはアンの言いよう。

 

リク「仕方がないな」

 

 すっと両腕を広げる。

 

リク「……円の動き」

氷鎖女「!?」

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