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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 12-3

リク「それは?」

氷鎖女「動かぬよう、術がかけてござる」

クレス「他のは動かないんでしょ。なんで全部目隠しなのさ。キモイな」

氷鎖女「……人形といえど、こんなに沢山あったらじっと見られているようで気味が悪い」

クレス「だったら、こんなに作らなけりゃいいだろっ! じゃなかったら他に置けよっ」

氷鎖女「それはあの……自分の部屋もいっぱいで置き場に困って教官室にもこう……モジャモジャと……」

クレス「そのお陰でヒドイ目にあった」

氷鎖女「人の物を勝手にいじるものではないでござる。特に拙者の持ち物は危険でいっぱいだからして」

クレス「どんだけだよ、アンタッ!?」

氷鎖女「あ~……怒ってばかりでござるな、さっきから」

クレス「こっ……」

   『この野郎ッ!』 ムキャ~ッ!


▽つづきはこちら

 二人がケンカ?している間、リクは物珍しそうに中を見て回っている。

 

リク「スゴイな、コレは」

 

 しゃがんで夥しい数の人形を見つめる。

 着せてある衣服は全て異国のモノだ。

 そう、父の国の物。

 

リク「……………………」

クレス「人形オタクめ。名前までつけてるなよな」

氷鎖女「名前をつけていないと命令できぬ。束縛するに名が重要なのでござるよ」

 

 リクの隣に立ってずらりと並んだ人形の中から一つを選んで手に引き寄せた。

 

氷鎖女「しかし人形作りが好きなのは否定せんでござる。人形にかかわらず物を作り上げるのは楽しいでござるよ。いいか、ええっと……」

 

 人形が両手で持っているトレー(氷鎖女はお盆と言っている)に机の上に置きっ放しだったコップ(氷鎖女は湯飲みと呼んでいる)を置く。

 すると人形はカタカタと歩きだして、クレスの目の前で止まった。

 

氷鎖女「茶運び人形にござる」

クレス「へ……へぇ」

 

 驚いて目を丸くする。

 

リク「魔法じゃないね?」

氷鎖女「カラクリよ」

 

 ちょっぴり自慢気。

 もうひとつ手に取り、背中のゼンマイを巻いて机の上に置く。

 正座した格好の人形は腰を折ってぺこりとごあいさつ。

 しばらくすると再び頭を下げてごあいさつ。何度か繰り返してそれは止まった。

 

クレス「スゴイ」

リク「うん、よく出来てる」

クレス「へーっ、へーっ」

 

 さっきまでの怒りはどこへやら。子供のように眼を輝かせてクレスは人形に見入っている。

 氷鎖女も自慢できて満足そうだ。

 

リク「まさかさっきの人形もカラクリじゃないよね?」

クレス「僕を襲ってきたやつ?」

 

 また不機嫌な声に戻る。

 

氷鎖女「ああ。アレもカラクリ人形には違いないが、このカラクリ人形たちとは原動力が違うでござるな」

クレス「殺人人形め」

リク「……………………」

  『ホントに……すごい』

 

 久しく忘れていたワクワクする気持ちを思い出す。

 

リク「この絵は? 水墨……画?」

氷鎖女「うん」

クレス「それは変な絵だ」

氷鎖女「黙れ、自爆男」

クレス「アンタがドアなんかに防御魔法かけるからいけないんだろっ

氷鎖女「そもそもお主が人形にイタズラしたり扉をぶっ飛ばそうなどと考えなくば、真っ黒クロスケにならずに済んだものを」

クレス「ふんっ。それならちゃんと戸締まりしといてよねっ!」

リク「……一理あり」

氷鎖女「今後気をつけるでござるよ」

リク「このスケッチブック見てもいいかな?」

 

 こんなことをしに来たのではないのだけれどと内心思いつつ、この部屋は興味の引く物ばかりが乱雑に散らばっている。

 まるで巨大な玩具箱だ。

 職務のための部屋をこんなにしてしまうのだから、本当の自分の部屋はさぞかし大変なことになっているだろう。

 でも楽しそうだ。

 スケッチブックを見る許可を得てめくってゆく。

 中は部屋同様、メチャクチャだった。

 思いついたことをいきなり空いた所に書いてしまうクセがあるようで、ジャンルわけも何もされていない。

 風景画があるかと思えば、人形やビックリ箱、オルゴールを作る設計図。その端には学徒に関する注意点などが走り書き。

 また、建築に関する図や人体のことまで書かれていた。

 

リク『面白い。この人は』

 

 子供の好奇心そのままに大人になった氷鎖女先生は何にでも興味を示す性格らしい。

 メチャクチャなスケッチブックはそれを如実に物語っていた。

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