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レイディ・メイディ 第13話
2007.11.18 |Category …レイメイ 11-13話
第13話:正騎士
ある日の早朝。月に一度、溜まった郵便物が学徒たちに配布される。
懐かしい家族や友人からの手紙、それに差し入れの荷物や金銭などが届いてそれぞれ封を切っている。
中にはリクやクレスのように1通もこない寂しい者もいる。
メイディアはといえば、例によって両親がサインしただけの見知らぬ誰かが書いた手紙を読んでいた。
内容は相変わらず戻って来い。
それだけだ。
両親が書いたものではないとわかってはいたが、捨てる気にもなれずに手紙は束にして取ってある。
それよりもメイディアが楽しみにしていた物があった。
実はこっそり応募していた懸賞の当たり通知である。
封を開けて唾液を飲み下す。
メイディア「あ……当たりました……」
▽つづきはこちら
思わず口元が緩んでしまう。
家にいた頃はお金さえ出せば特等席を取れたのだが、学徒になり、しかも両親に反対されている今、金銭は送られて来ない。
学徒に小遣い程度の給与は支給されるものの、もしものためにはそうそう無駄遣いはできない。
始めに多く持ち込んだお金はあるがこれもだいぶ使い込んでしまっている。
となれば、人気のチケットは懸賞応募で当てるしかない。
これが生まれて初めてのメイディア嬢の“節約”である。本人は意識などしていないが。
メイディア「素敵戦隊☆薔薇騎士レンヂャーッ!!」
きゃっきゃとベッドの上で暴れるメイディア。
一番上を陣取っているので古いベッドが軋んでいる。
クロエ「どうしたの、急に叫んだりして?」
メイディア「ハッ。あ、ゴホン。いいえ。独り言ですわ」
アン「ずいぶん大きな独り言ですね」
メイディア「放っておいて下さる?」
アン「……ハイハイ」
メイディア「お食事に行きましょっと☆」
三段ベッドの一番上から飛び降りる。
ジェーン「私たちもご一緒致しますわ、メイディア様♪」
メイディア「いいえ。今日は一人が良いの」
そう切り返すとさっさと出て行ってしまった。
メイディア『くふふ。やりましたわ! さすがはワタクシ。最前列ゲェェェーット……ですわ』
食堂に行ってみるといたいた。
同室のレイオットは食堂が混む前に行ってくると先に出てしまっていたのだ。
朝食を取りながら家族からの手紙を読んでいる。
メイディア「お隣よろしくて?」
レイオット「あ? ええ、どうぞ」
メイディア「ふっふ~ん♪」
レイオット「ずいぶんご機嫌みたいね。良い知らせでも?」
メイディア「そ。良い知らせです。……さて。コレは何でしょう?」
ピラリ。
素敵戦隊☆薔薇騎士レンジャー特別招待券を目の前に突き出す。
レイオット「ハッ!? こここここここっ! コレわぁーっ!??」
思わず大声を出して立ち上がり、周囲の注目を浴びてしまう。
あわてて座り直して小声になり、
レイオット「ソレ、どうしたの、どうしたのっ!?」
メイディア「懸賞で当てました」
レイオット「いいな、いいなっ あーう~……」
指をくわえて物欲しそうな表情。
レイオット「ね……ねぇ……あの……その……私の……さ、一カ月の給与金を全部渡すから、ソレ……譲ってもらえたり……しない……よ・ね?」 うずうず。ドキドキ。
メイディア「あら。よろしいんですの? コレ、日付が夜10時からでしかも平日ですのよ?」
レイオット「いいっ! 門限なんか破る! バレなきゃ大丈夫! 全然OKっ!! お願いっ、ねっ? ねっ?」
メイディア「ん~、でも残念。お譲りするワケにはいかないわ」
レイオット「ゔ……やっぱし……」 がっこり。
メイディア「で・も」
レイオット「ん~?」
メイディア「夜の町はこんな美少女一人で出歩くには危険過ぎます。それに禁じられている時間帯にここを抜け出すのも至難の業」
レイオット「………………」
メイディア「するとアレね。ワタクシの護衛とここを抜け出す出助けをする人物が必要になってくるワケです」
チケットに印刷されている、「1枚でお二人様ご招待」と書いてある箇所を指さす。