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レイディ・メイディ 12-2
2007.11.16 |Category …レイメイ 11-13話
クレス「アンタの作ったゴーレムだよっ! いきなり襲ってきたんだ」
氷鎖女「……ゴーレム? ああ、人形のことでござるか。ゴーレムと似てはいるが少々は違う物でござるよ」
クレス「なんでもいいっ! どうにかしろよっ!!」
ゴーレムとは仮初めの命を魔法によって吹き込まれて動く人形のことだ。
体を形成する材料は土くれや石であったり、木であったり様々である。
知能はなく、主人の命令のみを忠実にこなす。体のどこかに書かれた「命」を示すルーン文字(魔法文字)を消されない限り壊れることはない。
寿命を知らない動く人形は、昔から財宝の番人として設置されることで広く知られる。
だが、これを作り上げるには高等な技術を要するため、そうそうお目にかかれる代物ではなかった。
▽つづきはこちら
氷鎖女「おかしいな。ちゃんと動かぬようしておいたハズだが……」
言いかけて煤だらけのクレスと目が合う。
氷鎖女「はあ~ん。侵入者はお主か。……まぁ良いでござる」
クレス「何が侵入者だよっ! お前に用があって来てやったんじゃないか」
氷鎖女「用があるのがそちらなら、来てやったというはおかしかろ。だいたい人形の目隠しは独りでに取れることはあるまいよ。……いじったろ?」
額あてに手を当ててまた直すしぐさ。
クレス「ゔ……」
リク「……………………」
クレス「だっ……だいたい、こんな誰が入るともわからない教官室にあんな危険な物ゾロゾロ置いとく方が悪いっ」
氷鎖女「ゾロゾロ置いてないでござるよ。あの中の3体だけでござる」
クレス「恐怖のくじ引きかっ!? 趣味の悪い奴だなっ」
氷鎖女「くじ引きって……いじる方がどうかと思うのだが」
自分のことを棚に上げて逆ギレしている生徒にため息。
しかしあのように人形が置いてあったら、心理的に手に取る危険性は十分だ。
氷鎖女も配慮が足りなかったのは間違いない。
しかも自分が講義で長く部屋を空けるというのに鍵もかけていない。
不用心にも程がある。
氷鎖女「さて。では止めるとするか」
ドアを手で押すとクルリと縦に回転。
リク「お?」
クレス「!?」
当然、この養成所の作りは統一されているので、ノブを回して手前に引く形のドアなハズだ。
クレス「なんだよそのナンチャッテドアはっ!?」
リク「おお~っ」 感心して拍手。
氷鎖女「改造しちゃった♪」 てへっ。
照れたように頭をかく。
クレス「“しちゃった♪”……じゃないっ! “てへっ”でもないっ!! ソレのせいで僕はっ」
回転と同時に人形が外に出て来た。
恐怖の鈴の音と共に。
クレス「わーっ!?」
氷鎖女「お鈴、止まれ」
主の命令に従い、人形は動きを止める。
氷鎖女「あー、やれやれ。今日はとんだ一日でござる。……まぁ、仕方ない。入るでござるよ」
人形を抱き上げてリクを招く。
クレス「オイ、僕の用が先だぞ」
氷鎖女「そんなの聞いておらぬ」
クレス「うるさいな」
リク「二人で話したかったから、君はとても邪魔なんだけど……まぁいいよ。一緒にお邪魔しよう」
言葉とは裏腹に表情は相変わらず柔らかい。
クレス「んなっ!?」 カッチーン☆
氷鎖女『……天然か? こやつ……』 アセ。
『さすがは円の動き!』 意味不明。
氷鎖女「あがれ。あがれ」
再び戸を押して中に消える。
それに習って二人も入室した。
リク「……これはすごいな」
中を見回す。
氷鎖女「汚さが?」
リク「いや。面白いね。うん」
氷鎖女「……ふん。それは良かった」
放り投げるように言う。
クレス「面白くなんかあるもんか」
こちらは不機嫌に鼻を鳴らす。
床にクレスが落として放置したままになっていた布を取って、先程の人形の目を隠す。