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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 13-4

レイオット「……わかりました。皆、全員でかかれって」

チームメイト「何だって!?」

ジャック「早く来ないか。次が控えているんだ。急ぎなさい」

レイオット「は、はいっ」

 

 ナーダの教育する学徒たちが見守る中、5対1の練習試合が行われた。

 ルールは至ってシンプル。

 相手の得物を手から弾くか、参ったを言わせれば勝ち。

 負けた方はその戦いから身を引いて、見学席に戻る。

 席といっても地べたに体育座りか立ち見するだけだが。

 

ジャック「いつでも構わない。かかってきたまえ」

レイオット「いきますっ!」

 

 やはりと言うべきか、後の4人が正騎士相手にと戸惑っているその間に一番手に切り込んだのはレイオットだ。


▽つづきはこちら

 このチームでは唯一の女性だというのに度胸は男性陣の上をゆく。

 

ジャック「なるほど、いい太刀さばきだ」

 

 頑丈な樫の木で作られた木刀に対してジャックの得物は割れやすい竹のホウキの柄だ。

 まともにカチ合わせたら折れてしまう。

 レイオットが先の実践試験で見せたように木刀を巻き込む形で突きを繰り出す。

 

レイオット「っ!」

 

 後ろに跳んで避けると一緒に前に踏み込んきて体勢を立て直すより早く喉元(のどもと)にホウキを当てられてしまった。

 これはレイオット自身が試験試合でヒントを得て勝ちに導いた型だ。それも完全形での。

 

レイオット「……ま……参り……ました……」

 

 この間、約20秒。

 

ジャック「ホラホラ、何をやっている。チーム戦なんだぞ。5人もいる意味がないだろう。せっかく彼女が先陣をきったのにフォローする仲間が後ろでオタオタしてちゃダメだ。ハイ、すぐかかってくる」

 

 ボンヤリと勝負の行方を眺める格好になってしまった残りの4人が弾かれたように駆け出した。

 チームメイトたちが動き出したのを尻目に、レイオットは見学席に紛れた。

 4人同時でも試合は1分と持ち堪えられなかった。

 

レイオット「つ……強い……」

 

 フリフリエプロンを身につけていようと、それが淡いピンクでウサちゃんワッペンが縫い付けてあるものだろうと、得物がホウキであろうと彼は間違いなく薔薇の騎士であった。

 それもジャックは実力だけならば小隊長で収まるような器ではない。

 剣の腕前だけで昇格されるものではないのが軍隊であるものの、年に1度開催される薔薇の騎士団・剣技会では上位に食い込み、勲章も手にしている。

 ランクは低くとも誰もが認める実力者であるのは間違いない。

 あの性格さえなんとかなればもう少しマシだったかもしれない彼だ

 レイオットたちのチームが敗退した後に挑んだいくつかのチームでもこの先輩に一撃を与えられる者は皆無であった。

 

ジャック「……っふー。さすがに疲れたな」

 

 日が短くなりつつあるこの時期、空気が澄んで空はきれいなグラデーションを描く。

 ジャックはナーダに挨拶をすると「また明日も来ます」と言って後輩のガーネットとしゃべりながら去っていった。

 

ナーダ「皆、よく見た? アレが正騎士の実力よ」

   『ジャックの奴……今日は何もしでかさなかったわね。これなら助かるわ』

   「今日負けた者は何故負けたのか、後の試合を観察して答えを探してちょうだい。これから挑むチームも今日の試合を思い出して攻略を練っておきなさい。今日は解散!」

 

 見学するだけで一日が終わってしまった連中も退屈はしていなかった。

 それどころか興奮した状態で、こうきたらこう返せばいいのではないか、いいや違うなどと熱く語り合っている。

 レイオットは宿舎に戻る前にもう一度、試合をしたその場所に立って頭の中でイメージを描いてみた。

 しかしどんなに角度を変えてみても勝てる気がしなかった。

 

レイオット「これが正騎士の力なの」

     『それもまだ若い小隊長だなんて……』

     「スゴイ……私もああなりたい」

 

 小さな微笑みが知らず、口元に浮かんだ。

 

レイオット「青の……レクの方はどうだったろう? 話が聞きたい」

 

 レイオットは軽い足取りでかけていった。

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