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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 11-5

クレス「どうせ教えるの下手なんだからさ」

 

 授業中、窓の外に見える風景を写し取ったもの、動物、植物をモチーフにしたもの、人形の設計図、町の見取り図から建築物のことまで描いてある。

 それだけではなく、ちょっとしたメモや教え子たちの修行中での癖や特徴、注意点なども書き込まれていた。

 この部屋同様、中身は統一性がなくてゴチャゴチャ。

何でもノートといったところか。

 下に目を向ければ、床にはこれまた作りかけの人形の部品が散乱している。

 それはバラバラにされた死体にも見えて気味が悪い。

 

クレス「人形趣味かよ……気持ち悪いな」

 

 整理整頓は下手とみえる。

机の上もガラクタだらけだ。

 それらを腕で脇にどけるとクレスは椅子に腰掛け、空けた机のスペースに顔をふせて眠ってしまう。

 帰ってきたら起こしてくれるだろうと他力本願。


▽つづきはこちら

 その待ち人・氷鎖女はただ今、講義中。

 大あくびをしている生徒にも構う事なく説明を続けている。

 眠くなるのを我慢して真面目に聞いている者もいるがリクほど興味深く聞いている生徒は他にいない。

 

リク『学問の時はともかく、近頃急に他の連中も先生に興味持ち始めたみたいだ。俺も早いところ捕まえておいた方がいいかもしれないなぁ』

 

 とにかく一度、ゆっくり話す機会が欲しい。

 終業の鐘が鳴るとやはり氷鎖女はそそくさと教室を出て行こうとする。

 前の時間に学徒たちにからかわれたのがまた、逃げ腰に拍車をかけている様子。

 氷鎖女は人との関わりがとても苦手だ。

とにかくそっとしておいて欲しくてたまらない。

 自分と教え子たちの関係は、技術や知識を与える者と吸収する者という関係だけでよい。

 友達になりたいとは思いもしなかった。

また、なれるだなんて想像だにしなかった。

 

リク「先生」

 

 教室を出る直前で呼び止める。

 

氷鎖女「……学問の質問なら……受け付けるけど」

 

 すでに警戒心が防衛線を張っている様子の氷鎖女。

 

リク「少々、話をしたいと思ってねぇ」

氷鎖女「背の話なら十分間に合ってござる」

リク「? 先生が十分小さいことは見ればわかるから別にいいです」

氷鎖女「…………………………」

リク「…………………………」

 

 シーン……

 

氷鎖女「……さよならっ!」

 

 いきなりダッシュ!

 

リク「あ、逃げた」

 

 追いかけるリク。

 まさか走ってまで追われるとは思っていなかった氷鎖女は足音に気づき、恐怖にかられてさらにスピードアップ。

 女の子たちもリクを追いかけようとしたが、コンパスの長いリクに追いつけず残念そうにしていた。

 

リク「なんで逃げるの、先生」

 

 大股でズンズン。速足で追う。

 

氷鎖女「逃げてなどいないでござる」

 

 短い足でスタコラスタコラ。速足で逃げる。

 

リク「じゃあ止まってよ」

氷鎖女「でもあの……次の授業の準備が……」

リク「次は何も予定に入ってなかったでしょ?」

氷鎖女「えと……じゃあちょっと(かわや)かな」

リク「それに合わせて俺も予定入れなかったんだ」

氷鎖女「!?」

リク「意外そうだね。でも俺は前からずっと先生……」

氷鎖女「わーっ!!」

 

 足の回転をあげてとうとう廊下を走りだした。

 

リク「や、だから何で逃げるのかな。あ、ちょっとすみません、通してねー……」

 

 人にぶつかりそうになり、避けながら進むとどんどん引き離されてしまう。

 

リク「うーん。すばしっこいな。チョロチョロと……。ネズミみたいだ」

 

 見失って仕方なく、先程の言葉を信じてトイレに行ってみる。

 逃げ込むには丁度良い場所でもあるだろう。

 一つ一つドアをノック。

 

氷鎖女「拙者、入ってナイでござる」

リク「……あ。いた」

氷鎖女「ヒィ!? いないって言ってるのに!」

リク「……本人が答えてたら……そりゃあ……ねぇ?」

 

 頭、ポリポリ。

 

氷鎖女「入ってナイでござる。こんなトコにいないでござるよぅ」

 

 鍵を押さえてあわてる。

 

リク「入ってないなら俺が入ってもいいよね。ちょうどトイレ行きたいと思っていたんだ」 にこっ。氷鎖女「……エ?」

 

 ガタゴトと外で音がする。

 まさか個室に登って入ろうとでもいうのか。

 

氷鎖女「なんとっ!? まぁ、なんて恐ろしい子! 中で本当に用を足しているかもしれないのにっ!」

 

 ショッキーング。

 

氷鎖女「わわわ、どうしよう、どうしよう」 

 

オロオロ。

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