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レイディ・メイディ 5-7
2007.10.30 |Category …レイメイ 5話
メイディア「一時休戦ですっ!」
氷鎖女「そうこなくては」
二人、一気にはい上がって、びたびたとアレを飛び散らせながら、獲物を狙うハンターのように走りだす。
惨状に巻き込まれまいと逃げたのは正解だったと速めていた足をゆるめるリクはまだ、血に飢えた野獣がごとき二人が自分を追って来ているなどと知る由もなかった。
今も二人がお互いに穴の中で先の見えぬ争いを繰り広げていると思っている。
己が身が危ないと悟ったのは、草がこすれる音が背後から迫ってきてからだ。
リク「あらら。追って来るかな、フツー。俺、本当は無関係だと思うんだけど」
落ち着き払っているものの、捕まっては一大事。
再び速足になる。
だが、思ったより向こうも早くてとうとう駆け足に。
リク「待ってよ、コラコラ。相手が違うでしょーに」
▽つづきはこちら
だんだん本気で走らねばならなくなってきた。
メイディア「むわぁてぇぇ~!!」
リク「それより洗ってきたら~?」
声「お前を殺ったらな!」
リク「!?」
はらり…
若葉が一枚舞い落ちた。
リク「う、上っ!?」
しまった!
そう思ったときにはすでに遅い。
身軽だとさきほど話していた場面を思い出す。
声の主・氷鎖女「つっかまえたぁーっ!!」
樹の枝を渡って来たブラック・ンコは空から降りてリクの背中にへばりつく。
メイディア「よくやりました、ブラック!」
リク「…わぁ…」
さすがのリクも固まるしかない。
ぷぅ~んと刺激的な香り…
それは禁断の世界。
氷鎖女「一人だけ助かろうなんて、そうはゆくものか」
背中にへばりついたまま、なにやらモソモソ動いている。
顔を拭いているのだろう、リクの着物で。
リク「せ…先生…」
氷鎖女「何か?」
肩越しにひょっこり顔を出す。
リク「もう充分でしょ? 降りてくれないかなぁ……なんて……」
氷鎖女「うん」
素直に飛び降りる。
被害を最小限に押さえようとリクは再び走りだそうとしたが、着物の袖がピンと何かに引っ掛かってつんのめってしまう。
振り向くと袖は氷鎖女がつかんでいて、髪やら手やらを当たり前のように拭いていた。
リク「コラコラコラッ」 勘弁して。
氷鎖女「あー、ひどいめにあった」
リク「ホントに……。で、とりあえず、俺の袖で拭くのやめてもらいたいんだけど……」
どんどん距離を縮めて来るメイディアと見比べながら。
メイディア「えいっ!」
ダイビング。
リクに抱き着いて共倒れ。
リク「……………」
すっかり明けた空はどこまでも青く、鳥たちがさえずり、仲むつまじ気に横切ってゆく。
森林に囲まれた草の上、若い男女は抱き合ったカッコウで転がっていた。
ただし、クソまみれではあったが。
リク「今日もいい天気だねぇ……」
メイディア「フフ……そうね」
二人「ウフフフ。アハハハハ」
そんな二人のすぐ側で、氷鎖女はぺたんと座り込んでいる。
何かといえば、まだヒトサマの着物で汚物をふき取っているのだった。
ところで元の穴の中では……
レク「んんん~っ」
『誰か~っ』
一番の被害者が泣き叫んでいた。
メイディVS氷鎖女、一回戦目、引き分け ……