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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 第5.5話

第5.5話:悲劇の後で… ~フレグレンスな4人~

 薔薇の騎士団養成所は赤茶けたレンガの、高い壁で囲われていた。

 黒い鉄製の正門をくぐると正面には小綺麗に手入れされた庭園が広がっている。

 季節によって代わる代わるに咲く花々。壁に沿うように行儀良く立ち並ぶ並木。

 ローゼリッタ王国の城下町からやや外れた広大な土地にそれは位置していた。

 庭園の奥に建つ巨大なゴシック式の建物は、将来の薔薇の騎士を育成するための学び舎である。

 あの中で日々、騎士を目指す少年少女が切磋琢磨しているのだった。

学徒と呼ばれる身分の彼らは、明るい間はこの学び舎での勉強や外での訓練に時間を費やし、暗くなると正面からは学び舎の建物の影で見ることはできないが、後ろに建っている宿舎に戻るのだ。

 宿舎は学徒たちが寝泊まりする部屋と食堂、浴場などが設置されている。

 本日もいつもの朝となんら変わらずに食堂は学徒たちでごった返していた。

 

フェイト「……何で隣に座るんだよ……


▽つづきはこちら

 2晩も続けて部屋を抜け出し、行方不明になっていた同室のレクが姿を現したのは、つい10分前。

 早すぎてまだ食堂が開いていない時間だったにも関わらず、腹が減ったと部屋を出て行ったリクも一緒だった。

 二人は全身から水滴を垂らして6人部屋に戻って来たのだ。

 夏でもあるまいに頭から水をかぶって何をしていたのやら。

 フェイトは自分を挟んで両隣に座ったルームメイトを交互に睨んで、ガタンと不機嫌に立ち上がった。

 席を移動しようと思ったのだが、二人は彼の腕を左右からつかんで無理に座らせてしまう。

 普段なら前後と隣など意識せずともごく普通に座る彼らなのに、今日ときたら不自然に横一列。

 しかも逃げようとすると今のように無理やり座らせてくる。

 

フェイト「食事がマズくなるっての! 他に行ってくれないか? ダメなら俺が他に行きたい」

リク「そう嫌ったものじゃあないよ」

 

 柔らかく笑って、ひとつ跳んだ隣のレクに同意を求めるように見やる。

 それを受けたレクもうなづいて微笑む。けれど目は笑っていない。

 

レク「俺たちトモダチじゃん♪」

フェイト「……誰が」

    「仮にもし本当にそう思っているのなら! なんだって、横にくるんだ!?」

リク「それこそ、友達だからじゃないか」

レク「分かち合おう!」

 

 びしょぬれの服は着替えたものの、髪にはまだ湿気を残している二人。

 

フェイト「嫌だよっ!! 何をしてきたんだか敢えて問いただそうとは思わないが

リク「ああ、これね。これは…」

フェイト「問いただそうとは思わないって言ってるだろっ!!」

 

 っていうか、むしろ聞きたくない。

 だって左右の二人から香っているのは、“あの臭い”としか思えないのだから。

 何故、二人から“アレ”の臭いとしか思えない悪臭がするのか。

 何故、レクは2晩も姿を消していたのか。

 何故、後から出て行ったリクと共に戻って来たのか。

 何故、それらが何を共有して帰って来たのか…

 謎はあげればきりがなかったが、聞きたくはなかった。

 この臭いからして、内容は良からぬことに決まっているのだから。

 特に今、食事中だけは。

 

フェイト「まったく…コイツラ…」

 

 二人に挟まれていると臭くて食欲がわかない。

 周囲も臭いから逃げて離れた席に座っているため、この一角だけが妙に広々としていた。

 

フェイト「仲間だと思われるだろ」

レク「仲間じゃん。冷たいなぁ」

フェイト「違う」

リク「また。照れなくてもいいんだよ。さぁ」

フェイト「さぁじゃない」

 

 言い争っている間に強敵がさらに数をまして、フェイトは危うく口に含んだものを吐き出しそうになってしまった。

 目の前の席に腰を下ろしたのは、金髪の少女だった。

 朝食の乗ったトレーを長い数人がけのテーブル上に置く。

 

フェイト「?」

 

 見覚えがあるようなないような……

 しかし思い出さずともわかったことが一つある。

 それは彼女の髪がやはり湿っていて、横を占領している彼らと同じ臭いを漂わせているということだった。

 半ば絶望的な気分になりながら、フェイトは食事を早く済ませてこの場を切り抜けようと思った。

 金髪の少女を横の二人が同時に見る。

 

レク「メイディッ!」

 

 途端に温厚なレクが珍しく声を荒げた。

 

メイディア「メイディって気安く呼ばないで下さる?」

 

 つんとはねつける少女。

 

フェイト「メイディ?」

レク「よくもやってくれたなっ!」

メイディア「そう。それを謝罪しに参ったのです。さすがにいけないことをしたなと思って」

 

 言いながら、静かに食事を始めてしまう。

 

レク「もうだまされるもんか」

 

 鼻から息を吐き出して口をへの字に曲げる。

 

レク「大変だったんだからな!」

メイディア「何ですの、その言いようは。ちゃんと助けて差し上げたではありませんか」

レク「……だいぶ起ってからな」

 

 目を細めて軽くにらむ。

 

メイディア「…ム。ワタクシがわざわざ引っ張り出してあげたのですから、お礼を言われてもいいくらいですのよ!? それなのに謝りにきてあげてるのですから素直に受けたらどうなの!?」

レク「何言ってんだよっ! そっちがあんなコトしなければ、俺はうんこまみれにならなくて済んだんだっ!!」

 

 とうとう立ち上がって、巨大ビックボイス。

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