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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 51-7

 友人たちに渡せるものは譲り渡して、一方的なさよならの儀式を済ませたメイディアは担任教官の下へ事の次第を報告に行って仰天させた。
 
氷鎖女「つまり、嫁に行くと?」
 
 顔のない教官は首を右に曲げた。
 
メイディア「はい」
氷鎖女「要するに、嫁に行くと」
 
 今度は首を左に曲げた。
 
メイディア「はい」
氷鎖女「わかった! 嫁に行くんだ」
 
 最期にポンと手を打つ。
 ……相当、混乱しているらしい。
 

▽つづきはこちら

メイディア「あのぉ~……」
氷鎖女「いやいや、通じておるよ。ちょっぴしびっくりしちゃっただけでござる」
メイディア「…………」
氷鎖女「で? 嫁に行くゴールデンは、何のつもりでこの養成所に来たのか」
メイディア「逃げて来ました」
氷鎖女「嫁に行くことになったゴールデンは、逃げて来たのにどうしてまた行く気になったのか。嫁に」
メイディア「事情が変わりまして」
氷鎖女「魔力を取り戻すためにあれだけ大騒ぎをしておいて?」
メイディア「も、申し訳ございません」
 
 身をすぼめる。
 
氷鎖女「拙者はようござるが、ニケ殿が何とおっしゃるか……候補生育成には資金がかかっておるからな」
メイディア「そ、そこまで考えておりませんでした……」 しょぼーん。
氷鎖女『おいおい』
 
 ただで生活をできるワケではないのに、それすらもわかっていなかったとはさすがはお嬢様である。
 
氷鎖女「しかし嫁に行くというのにダメだとも言えまいしな。騎士の称号を取ってからでは遅いのでござるか」
メイディア「……本当は……お嫁になんて行きたくない……ですが……」
 
 親の取り決めた結婚が嫌でこの養成所に逃げ込んだこと、ダーリン事件は代わりの相手を見つけてくれば、親もNOとは言えないだろうとの浅はかな考えなどを聞かされて執務室の氷鎖女は唸った。
 
氷鎖女「一言で言うと、アフォ……でござるな」
メイディア「うっ」
     「だって……だって……」
氷鎖女「あっ! これこれ、泣くでないよ」
 
 べそをかき始めた女生徒に困った様子を見せる。
 養成所に逃げ込んでやり過ごそうと思ったのに、彼女を育てたばあやが不始末を起こし、その責任を取るために結局、嫁入りを決意したことも聞く。
 
メイディア「相手は60を過ぎたご老人。お子様どころか孫まで沢山いらっしゃいます」
氷鎖女「ろ、60?」
メイディア「それも肉の中に埋もれたようなお方……」
氷鎖女「に、肉?!」
メイディア「ああ、ワタクシ……純潔を守って死んでしまいたい」
 
 嘆いて顔を両手で覆う。
 
氷鎖女「めったなことを言うものではないよ。生きておれば、いくらでも巻き返しの機会が回ってこよう」
メイディア「……何の巻き返しでしょう?」
氷鎖女「人生の。60ならば、しばし待てば死ぬわ。さすれば自由ぞ?」
メイディア「……………」
氷鎖女「そだ。ミハイル殿に薬をもらっていっては?」
メイディア「薬?」
氷鎖女「早死にしていただくよう。鎮ったら、あったまイイ」
メイディア「……ご冗談を」
氷鎖女「冗談? ああ、そう」
   『冗談のつもりじゃなかったけど、まぁいいか。そう思うなら』
メイディア「……先生……やはり……手立ては……ございませんか?」
氷鎖女「覚悟を決めたのでは?」
メイディア「…………」
 
 黙ってうつむく。
 
氷鎖女「…………」
   『うーん……』
 
 60歳の醜悪な初老に16歳の花盛りの娘。
 確かにこれは哀れである。
 かといって、一介の教官では泣きつかれてもどうしようもない。
 
メイディア「えっえっ……うっく……ぐすっ。イヤ、イヤ、イヤ……」
氷鎖女「あー…。また泣くぅ」
 
 皆の前では格好つけて平静を装っていたものの、人目がなくなればすぐこれである。
 嫁に行ってもただ共に暮らすだけかと思っていた。
 それだけでも嫌だったのに、母からの結婚生活が何たるかを教える長い手紙で、身体に触れられると知らされた途端におぞましくてたまらなくなったのである。
 
氷鎖女「家のためであらば、もう断われないのであろう?」
メイディア「……はい」
氷鎖女「そか」
メイディア「ワタクシ、死んでしまいたい」
氷鎖女「極端に走るなとゆうに」
メイディア「…………」
氷鎖女「日取りは?」
メイディア「もう次の日曜には実家に戻らねばなりません。式はその2ヵ月後、エグランタインで」
氷鎖女「……うん、そか……」
メイディア「そです」
 
 すんと鼻をすする。
 
メイディア「先生……助けて、先生……」
氷鎖女「………………」
 
 無駄だとわかっていてもすがらずにはいられないメイディア。
 けれど話は堂々巡りになるだけ、恩師を困らせるだけ。

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