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レイディ・メイディ 51-5
2008.07.15 |Category …レイメイ 49-51話
しかし、翌日。
その時刻、その場所に現れたのは、怒りに燃える正義の味方・薔薇騎士レンジャー……になりたいレイオットではなかった。
フェイト「メ、メイディア!?」
『いや、まさかな。果たし状だし……』
メイディア「お手紙は読んでいただけたのですね?」
フェイト「き、君だったのか? お手紙っていうかあれ……」
メイディア「果たし状です」
フェイト「……だ、よ、な」 汗。
メイディア「仕切り直しですわ」
仕切り直しといわれても。
メイディアと共闘はしても、ライバルとして戦った覚えはない。
常にチームメイトだったからだ。
冷たい木枯らしが吹き抜けて、二人の髪を踊らせた。
▽つづきはこちら
同じころ、果たし状を気にしたレクが思い違いもはなはだしく、レイオットを説得しちゃったりしていた。
レイオット「さっきから何を言ってるかわかんないんだけど」
レク「積もる怒りもあるだろうけど、フェイトも反省しているし……いや、させるし、ここは穏便に……」
レイオット「?? あ、リク」
教科書を脇に抱えて通り過ぎようとするリクをレイオットが捕まえる。
レイオット「レクがさっきからわけわかんないことを……リク、通じる?」
リク「ああ、昨夜なんか言ってたよね?」
レク「レイオットがフェイトを呼び出してボコろうと……」
レイオット「してない、してない」
リク「……ふぅん?」
フェイトに果たし状。
それだけでは何とも判断しがたいが、メイディアではないかと直感的に思った。
昨日、食堂で皆と話をした時点でフェイトだけがプレゼントを受け取っていなかったからだ。
フェイトはメイディアにとって特別な恋の相手である。
だとしたら渡さないことはないだろうし、それが最後でもおかしくはない。
リク「場所は?」
レク「聞いてないよ、そこまでは。レイオットを思い止どまらせればいいと思って……」
レイオット「なんでそこで私になる?」
レクの頬をつねり上げる。
レク「イタタタッ! リ、リク、何とか言ってやってよ」
リク「夫婦ゲンカは犬も食わないってね」
さっさと逃げ出すリクが置き去りにした言葉に、レクとレイオットが頬を染める。
レイオット「ちょっ、ちょっと! 誰が夫婦ゲンカよ! んもー! …ねぇ?」
同意を求めるとレクはうつむいてモジクサしている。
直撃だったようだ。
つられてレイオットもモジクサ黙る。
そんな彼らの間にレイ様ファンクラブの皆様が割って入った。
女子生徒たち「何、真に受けてるのよ!」
「バッカじゃないの!? アンタみたいなの、アタシたちのレイ様が好きになるワケないでしょ!」
「うぬぼれないで!」
「レイ様は男に惚れたりしないのよ!」
「私たちのレイ様にちょっかい出さないで!!」
レク「い、いや、俺は……」
攻撃…いや、口撃の嵐だ。
当のレイオットは恥ずかしさのあまりに猛スピードでダッシュして、窓から飛び降り、いずこかへと走り去ってしまっていた。
あわれレクは女の子に取り囲まれて私刑である。
一方、争いの種を放り投げたリクは無責任にも後ろを振り返りもせずに目的地へと向かっていた。
もしも果たし状の相手がメイディアであるならば、場所はわかるのだ。
彼女が初めて告白した場所。
そして失恋した場所。
リク「おっと待てよ?」
ふいに足を止める。
リク「行って、何をするつもりだったんだろうね。ねぇ、キース君?」
懐から顔だけハミ出させたウサギのぬいぐるみに問いかける。
止まった場所はすでに、目的地のすぐ近くである。
例の、メイディアが告白して30秒足らずで玉砕した校舎裏。
その真上。
校舎の2階にリクはいる。
記憶に新しい、玉砕勇者カイルがクロエに告白しようと呼び出した場所もここである。
そのときは大事な指輪をなくしたフェイトがやってきて、結局フラレたカイルの告白劇を無残なものに仕立て上げたのである。
指輪はクロエが見つけたことになっているが、本当はメイディアが持っていた。
指輪を返すために投げた、ちょうど、あの窓にリクは立っている。
下をそっと覗けば、やっぱりいた。
メイディアとフェイトだ。
季節は移り変わり、新緑から舞う落ち葉もなくなった寂しい木々が立ち並ぶ。
冷たい北風に吹かれて、二人は黙って佇んでいる。
メイディア「仕切りなおしのための果たし状ですわ。もちろん」
フェイト「俺には君と戦う理由がない」
どうやら、プレゼントを渡すという雰囲気ではなさそうだ。
メイディア「ワタクシにはあります。……フェイト=ウィスタリア」
フェイト「……なんだ」
名前を呼ばれて身構える。
メイディア「……………………………………………好きです、貴方が」
フェイト「……え?」
リク「………………」
メイディア「以上。終わり」
フェイト「お、終わり……って……」
拍子抜けして、肩を落とす。