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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 51-2

 心は鬱々と。

 けれどあれほど渇望した母の愛を確認でき、シラーという義妹もできた。

 シラーと結び付いたことにより、彼女をやっかむ連中が再びしっぽを振り始める。

 複雑ではあるが、メイディアのヒビ入れた心は修復に向かっていた。

 魔法もスランプなどなかったかのように絶好調。

 かつての地位を取り戻したのである。

 

レヴィアス「よくやったじゃないか、メイディア君。魔力喪失から立ち直った生徒は君が初めてだ。一度は指導した私としても鼻が高い」

 

 2番目の担任だったレヴィアスがそう声をかけてくれ、メイディアは丁寧にお辞儀で返した。

 

メイディア「ありがとうございます、レヴィアス先生。先生が陰ながらワタクシを応援して下さったので勇気づけられました」

レヴィアス「い、いや……まぁ……」

メイディア「これ、お返しします。お守りになりましたわ」

 

 試験で預かっていた指輪を差し出す。


▽つづきはこちら

 

レヴィアス「……ん、ごほんっ。君が私の真の指導を理解してくれていてよかった。決して君が憎くて厳しくしたのではない。立ち直って欲しかったからだよ。あれらはみんな、試練だ。……わかってくれるね?」

メイディア「はい、もちろんですわ」

レヴィアス「私は試験でこれを君が使うかどうか試していたのだよ」

メイディア「合格ですか?」

レヴィアス「も、もちろんだとも。これからも頑張りたまえ。期待しているよ」

メイディア「はい、ありがとうございます」

 

 憧れの対象に再び優しく接してもらい、感激である。

 

メイディア「ヒサメ先生の言った通りだわ。レヴィアス先生はワタクシをお見捨てになったワケではなかったのね」

 

 単純で幸せなメイディアは都合よく解釈した。

 自分と同じかそれより小さい友人には服を、そうでない友人にはアクセサリーなどを配って歩き、持ち物は数日で最低限となった。

 男性陣に渡せるようなものは持っていなかったので、レクには……

 

レク「ぎゃあぁっ!? いっ、今っ!? 今背中に何入れたんだよっ!??」

メイディア「カエル。メイと呼んで可愛がってあげて下さいね、レク。私はレクというお友達に出会えて幸運だったと思っております」

レク「うわーっ! うわーっ!! うわーっ!!!」

メイディア「聞いてますの、レク?」

レク「うわーっ! うわーっ!! うわーっ!!! だだだだ、出してっ! カエルッ!! うわぁっ!?」

メイディア「レクってば!」

 

 レクには、冬眠していたのをわざわざ掘り起こした巨大カエルを服の中にプレゼントし、ダレスには一生懸命集めた………

 

ダレス「何の嫌がらせだ、テメェッ!! 元気になった途端コレかっ!?」

 

 ……ミノムシを両手一杯にプレゼントした。

 きっと喜ぶはずだとメイディアは間違った確信をしていた。

 

メイディア『だってミノムシのミノをはぐのは楽しいですもの!』

 

 ちなみにクレスには意外やまとも、子供のころから集めて押し花にしていた四つ葉のクローバーである。

 

メイディア「これも、これも、これも」

クレス「なんだよ、コレ」

 

 机の上に並べられた無数のクローバーを見つめる。

 

メイディア「ずっと集めていたの。養成所に来てから見つけたのもありますのよ」

 

 両親の愛を求めて止まなかったメイディアが思いを込めて採集していたものだ。

 彼らが自分を見返ってくれるように。

 けれどもう母の愛を確認できた彼女には不要だ。

 

クレス「なんでこんなの、僕に?」

メイディア「これはね、願いが叶う幸運のクローバーなの。本当に本当なの。ワタクシの願いは叶ったから、クレスに差し上げますわ」

クレス「……叶った? 本当に?」

メイディア「ええ。効果てきめんですわ。だから今度はクレスが願いを叶えて」

クレス「……願い……」

 

 残りのクローバーをクレスの頭から降らせる。

 

メイディア「幸せになーれ、幸せになぁーれ」

 

 身寄りのない寂しい少年に、これからどうか幸せが訪れますように。

 

クレス「………メイディア……どこかに………行くの?」

 

 前髪に引っ掛かってぶら下がった一枚を手に取り、クレスが遠慮がちに聞いた。

 メイディアは一瞬の間をおいて首を横に振る。

 

メイディア「………行きませんわ」

クレス「皆、そう噂してるけど……」

メイディア「それでは、ご機嫌よう」

 

 取り合わずに授業の終了した教室から立ち去った。

 後には、幸福のクローバーにまみれた少年がポツンと一人。

 すれ違いにカイルが入ってきて、彼を宿舎へ誘う。

 

カイル「リクはまだシズカちゃんに質問あるって。俺ら先に帰ってようぜー」

クレス「え、あ、うん……ってか、別に僕はお前らなんかと……」

 

 いつの間にか“リクとカイルとクレス”になってしまっている。

 去年までは一人を通していたのに、今年は当たり前のようにリクとこのカイルに引きずり回されている。

 が、それは嫌ではなかった。本当は。

 

カイル「ごっ飯♪ ごっ飯♪」

クレス「聞いてんのかよ」

カイル「なんだこのしわくちゃ。クローバー?」

 

 机の上にあるものに気づいた。

 

クレス「さっ、触るな、僕のだ!」

 

 興味を持たれる前にかき集める。

 1枚が足元にひらり落ちた。

 それを拾い上げて、

 

カイル「幸運の四葉……ね。意外にロマーンチースト。きししっ♪」

クレス「うるさーい!」

 

 赤くなって引ったくる。

 少年は身寄りはなかったが、決して孤独ではなかった。

 それに気づくのはいつになるのか。それとももう気づいてはいるのか。

 幸運は少年のすぐ側に。

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