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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 第51話

第51話:別れの儀式

 養成所に帰った二人の前にはいつもとなんら変わらない毎日が待っていた。

 シャトーでの事件など、関係なくここでの生活は続くのである。

 戻った彼女らを見て、友人たちがまず気が付いた変化。

 シラーがメイディアを愛称で呼び、しかもお互いの距離が縮まっていること。

 これにはシラーの取り巻きたちが一番驚いたに違いない。

 特別親しげにしているわけではないが、ほんの10日ほど前を思えば何事かという大事件である。

 

レイオット「川原で決闘してきたに違いないわ!」

 

 レイオットが握り拳を作り、食堂で吠えた。

 

フェイト「また始まったよ、脳みそ筋肉女……」

 

 小さくつぶやいたつもりが、しっかりと聞こえていたらしく、フェイトはスープの中に顔をつっこまされてしまった。

 

レク「また余計なことを言うから~。でも本当に良かったよ、何があったか知らないけど、二人が仲良くなって」

 

 そんなやりとりにレクが苦笑い。

 


▽つづきはこちら

レイオット「だから、川原で決闘して友情が深まったのよ。お前強いな。お前もな。また俺と戦ってくれ。望むところさ。アハハハハ………って具合に」

クロエ「それで夕焼けに向かって走って行くんでしょ、土手の上を」

 

 クロエが調子を合わせて目を潤ませる。

 

レク「……………」

レイオット「そうよ。それでもって、一人がスピード上げればもう一人も負け字とスピードをあげてぇ」

フェイト「…………」

クロエ「そのうち転んで、芝の上に転がるのよね! もちろん、もう一人も隣に転がるのよ」

レイオット「……わかってるじゃない」

クロエ「フフフフッ。あなどってもらっちゃ困るわ。伊達にニンジャ授業受けてないのよ」

ステラ「それ、ヒサメ先生は一言も言ってなかったよねぇ」

クロエ「ステラが聞いてなかっただけよ」

ステラ「マジですか」

 

 ステラのまともなツッコミは非常識にも一刀両断の憂き目に遭う。

 変化による周囲の歓迎ムードとは反対にメイディアの気持ちは沈む一方だ。

 とうとうあの公爵の元に嫁ぐことが決定し、好きな友人たちとの別れが一刻一刻迫ってきているのである。

 もう一生会えないであろうと思うと誰かといさかいを起こそうという気にもなれず、おとなしく残りの日々を消化していた。

 

メイディア「アン、これいらない?」

アン「えっと…?」

 

 持ち物の整理を始めたメイディアが服を広げてアンに見せた。

 

メイディア「ワタクシ、背が高いからアンには合わないかもしれないけど、でも詰めれば何とか着られないかしら?」

アン「どっ……どうして私に……」

メイディア「……別に。……似合うかもって、思って……」

 

 ひょっとして仲直りのつもりなのだろうかとアンは訝しんだが、結局、受け取ることにした。

 メイディアを家に連れ戻すための兵糧戦で、使用人が送ってくれていた荷物を両親から止められていたため、何度も同じのを着回して少しくたびれている。

 けれどそれはどの生徒達も変わりない。

 アンも例外ではなく、母のお下がりを着ているくらいだったので、この思ってもみない申し出は本音は有り難かった。

 

アン『……これを着たら私ももっと美人に見えるかも』

 

 胸がときめいた。

 

メイディア「それから……いつかのノートだけど……」

アン「!」

メイディア「ワタクシ、本当に中身なんて見ていないの。拾っただけです。リクにもクレスにも見せたのは、表紙だけ。ひょとしたら彼らの持ち物かと思って……」

アン「……う、うん…」

  『本当に……仲直りしたいんだ……どうしよう、私……』

メイディア「でも他の女子生徒に一度取られたわ」

アン「エエッ!?」

メイディア「彼女たちが小説だって騒いでたけど、ワタクシが書いたと思ってる」

アン「…………」

メイディア「すぐにフェイトが取り返してくれたし、だから、心配なさらないで」

アン「だったら……どうしてあのとき言わなかったの?」

メイディア「だってアンが怒って聞いて下さらなかったんですもの。泥棒呼ばわりされれば面白くありません。だから破いたの」

アン「…………」

メイディア「大人気なかったと今は少しだけ反省してます」

アン「少しだけ?」

メイディア「少しだけです。だってとっていないもの」

アン「うん……わ、私も……ちょっと悪かったわよ」

メイディア「ちょっと?」

アン「ちょ…ちょっとよ! だって、最初からそう言ってくれれば私だって……」

メイディア「じゃあそれでよろしいです。この話は」

アン「う、うん。いいよ」

 

 すっかり毒気を抜かれたアンは、逆に後ろめたくなってしまった。

 破られ踏みにじられたノートの仕返しに、シラーのペンダント事件を起こしてしまったからである。

 けれどさすがにこれは告白できなかった。

 小説を書き綴ったノートをメイディアが見ていないとわかれば尚更である。

 

メイディア「この髪どめは使います?」

アン「あ、うん、ありがと……」

  「あ、あの……メイディ……どうしたの、急に?」

メイディア「急ではいけませんか?」

アン「そうじゃないけど……」

メイディア「ならばよいではありませんか」

アン「うん……」

 

 穏やかになった彼女の急激な変化に誰もが戸惑っていた。

 

ジェーン「まるで引っ越し前のお別れみたいね」

 

 荷物をもらったアンの話を聞いてジェーンが言った。

 

モーリー「引っ越し? ひょっとして、魔法が使えなくなって追い出されるとかぁ?」

ステラ「それっていつの話? もう普通に使っているわよ、彼女。それより留年するんじゃないかしら。最後の試験、メタメタだったから。でもこればかりは仕方ないね」

モーリー「あー、それだ」

 

 合点いって、手を打つ。

 

アン「留年ったって、養成所からいなくなるワケじゃないんでしょ?」

ステラ「よほどショックなんじゃない? あの子、プライド高いから留年するくらいなら辞めちゃおうって思っているのかも」

ジェーン「それはありうる」

 

 ジェーンとモーリーが同時に頭を上下させる。

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