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第46話:魔法の使えない魔法使い
2008.07.01 |Category …レイメイ 46-48話
かかさまは、手をつないでは下さらない。
ととさまと真ん中にあにさま、となりにかかさま。
少し離れて後ろを追うのが、―。
―も、かかさまと手がつなぎたくて、後ろからそっと触れようと手を伸ばしてみたけど、払われたらどうしようと思ったら、急に怖くなって引っ込めた。
気づいて、振り向いて、「どうしたの、―。お前もおいで」そう言って、手を引いてくれたらいいのになと思いながら、その背中を見上げた。
落ち葉を巻き上げ、森の中を走る。
魔法が飛び交う。
小さく、的確に。
時に大きく、フェイントを織り混ぜながら。
ヒサメクラスの生徒達はくる日もくる日も、実戦訓練に明け暮れていた。
2時間の間、氷鎖女に追われ、生徒が逃げるというアレだ。
動きながら、神経を張り詰めながら、魔力を練り上げて魔法に結び付けるのは容易ではなく、不発も多出した。
▽つづきはこちら
これはもちろんリクにも起こることだった。
ここぞというときに発動してくれずに、ジ・エンド。
やはり養成所内でただ並んで魔法に専念できるのと勝手が違う。
各々、弱点が露呈されて、今後の課題が明確になる。
初日は惨憺たる成績だったクレス=ローレンシアは、次回にはさすが。
まるっきり手を替えて、ラストまで生き残った。
魔法使いの家で育っただけあって、不発などという体たらくもない。
それでもまだ、
クレス「うっわ!?」
……負けて罰ゲームの顔にラクガキをされている。
クレス「…くぅっそ~お!! おーぼえていやがれぇーっ!!」
森の中に絶叫が響く。
リク「あ~……今日は下から数えた方が早いよ、俺」
順位表を見てため息のリク。
天才・リクでさえも常に上位とは限らない。
速攻を狙って返り討ちになったのである。
しかも他の生徒が放った魔法と同士討ちさせられてあっけない幕切れだ。
リク「計算どおりに躍らされましたってカンジ。みっともなー」
クレス「ふふんっ。今のところ、僕のが連続3回勝ってるね」
リク「……だね」
肩をすくめる。
二人の天才ともてはやされている内、どちらかと言えばリクの方が実力上だと見られている。
けれど総合力で言えば僅差はないのだ。
むしろ魔力の放出・破壊力などではクレスがリクを上回っている。
両者の差は、その性格にあった。
慎重派のリクに比べて、その持てる力を台なしにするクレスの浅はかな考えと短絡的なその性格。
読みが当たれば持ち前の爆発力でトップに君臨するが、外れると初戦を落とすような大ポカもやらかす。
すでにまとまっているリクよりも将来性を伺わせる魅力があるものの、博打的な要素も大きく不安定である。
クレス「カイルの奴はどうなんだよ」
カイル「それは秘密です」
優等生ではあるが、天才には遠く及ばないカイルはそそと自分の成績表を背中に隠した。
カイル「それより、シズカちゃん、遅くない?」
ごまかすために担任の名を出す。
リク・クレス「シ、シズカちゃん!?」
あまりの馴れ馴れしさに二人はビックリ。
さすがは唐突にクロエに愛の告白しちゃう勇者カイルだ。恐るべし。
そんな会話に女子たちも加わってくる。
ステラ「でも本当に遅いわね。全員そろっているのに」
ジェーン「またモンスターと戦ってたりして」
リク「! 俺、見てくる」
クレス「僕も。助けてーってお願いするんだったら、助けてやらなくもないし」
カイル「素直に心配だって言えばいいのに」
つぶやいたカイルはクレスに睨みつけられて、口笛を吹く。