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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 45-7

 薔薇の騎士団・養成所。

 所長室。

 

氷鎖女「くせ者は取り逃がしました。申し訳ございませぬ」

所長「……………」

 

 所長の太いまゆが跳ね上がった。

 事の次第を報告に上がった新米教官が生徒に抱かれた格好で背中を向けていたからである。

 あちらこちらに草やら土やらをつけっぱなしで。

 

所長「ケガをしたのか。大丈夫かね?」

氷鎖女「いえ。ケガなどは別に」

リク「……………」

所長「足をひねって歩けないのかね?」

氷鎖女「足が床に届けば歩けるのですが」

所長「? 届けば?」


▽つづきはこちら

リク「届いても後ろ向きで歩かなきゃじゃない?」

氷鎖女「拙者が後ろ向きに歩くのでござるか!?」

リク「俺でもいいけど、コケたらまた巻き添え必至だよ? 先生がコケても俺が受け止められるけど、俺がコケたら先生、受け止められないでしょ?」

氷鎖女「うううっ」

所長「ま、まぁ、自分で立つこともできないならそのままでもいいから、とにかくこっちを向きなさい」

氷鎖女「は、はい。……す、すまぬがリク」

リク「あ、はい」

 

 くるりと今度はリクが背を向ける。

 これで所長に対して氷鎖女は正面を向いた形には一応なったが、今度はリクが背を向けていて本人の姿がほとんど見えない。

 

所長「…………それでは意味がないだろう。ヒサメ殿だけこちらを向ければよい」

リク「それができないんです、先生」

所長「何故だね?」

リク「くっついちゃってて」

所長「…………………………………」

 

 妙な形で報告を済ませた二人は所長室を出て、ドアを閉めた。

 

氷鎖女「………………」

リク「………………」

氷鎖女「うっうっ……なんと情けない。リクがアホだから……」 シクシク。

リク「あはは、先生が避けないから悪いんだよ。危ないって言ったじゃん」

氷鎖女「気楽に言うな! 足が外れなかったのでござるっ! リクさえマヌケなことになっておらんかったら、こんなことには……」

リク「そんなコト言ったら、先生があの粘着液を踏ん付けてなければ、こんなことになってなかったんだから」

氷鎖女「詰めが甘い、詰めがっ!!」

リク「それは認めるよ。次から気をつけるからさぁ。はははっ」

氷鎖女「はははじゃない、はははじゃ! うわーんっ」

 

 デッカイ子供をおなかにくっつけたリクは、校内の注目の的だ。

 注目といったら普段からではあるが、今回はどうも勝手が違う。

 どこへ行ってもくすくすと笑い声がついて回っていた。

 

リク「俺、今さ、先生」

氷鎖女「何ぞ」

リク「昔、絵本で見たことがあるカンガルーみたいな気分なんだ」

氷鎖女「拙者の気分はサイアクでござる」

リク「あれま。ゴキゲンナナメ」

氷鎖女「少なくともゴキゲンにはなれぬわ。……シクシク」

リク「あっはっは。泣かないでよ先生。重たいの俺だけだし、先生は自分で歩かなくてもいいんだから楽じゃん。ミハイル先生が溶解液を調合してくれるって言うんだしさ、もう少しの辛抱だよ」

氷鎖女「ミハイル殿、早くして下されぇ」 およよ。

リク「あっ、そうだ。今こそ、クロエに自慢するときだ」

氷鎖女「いい、いいっ! 余計なことをせんでもいいっ!!」

リク「とか言っている間に、クロエ発見☆」

氷鎖女「なぁぁっ!?」 がびんっ!?

  「逃げるのだ、逃げるのだ、リクッ!! 今すぐ早く! 光の速さで逃げてェッ!!」

リク「嫌だよ、自慢するんだ」

氷鎖女「ぬおぉうっ!?? 助けてカミサマ!! 皮を剥がれて、壁に飾られるッ!」

リク「おーい、クロエ~」

 

 無情にも、氷鎖女が怖がるクロエを呼び寄せてしまう。

 

クロエ「あっ!! 素敵アクセサリーどうしたの!?」

氷鎖女「………あ…あくせ……?」

リク「ふふふふっ。ニンジャ☆完・全・捕獲ッ!!」

 

 きらーん☆ 目が光る。

 

クロエ「いいな、いいなー! 私もほしーい!!」

リク「残念だったね」

クロエ「よこせー!!」

 

 ガシッ!!

 氷鎖女の頭をつかんで引っ張る。

 

氷鎖女「イテッ! 死ぬっ! 死ぬるっ!! 死に至りまするっ!!」

リク「あんまりひっぱるとモゲちゃうよ。これからご飯だけど、どう?」

クロエ「あ、行く行く♪」

氷鎖女「……おのれ、こやつらぁ~……」

 

 食堂でも当然、注目の的。

 大荷物を抱えたリクは先に席を取る役になり、食事はクロエが運んで来てくれた。

 

レイオット「あれ、クロエ、3人分も?」

クロエ「あ、レイオット。今日はね、ヒサメ先生も一緒なの」

レイオット「珍しいわね。トレー運ぶの手伝うわ」

 

 確保してもらっていたスペースに足を運ぶと、青薔薇でレイオットより少し先に終わっていたレクとフェイトも同じ席についていた。

 

レク「話には聞いてたけど、実際に見るとアレだね………ぷぷっ」

 

 リクがテーブルに向かって食事をすれば、当然、ヒサメは背を向けている形になる。

 

フェイト「一応、両手は空いてて良かったじゃないか、先生も」

レク「片方は手首までくっついてるけどね。ご飯食べるのにはかなり辛そうだ」

氷鎖女「む、誰だ、今、つついたのは」

フェイト「レク」 しらっ。

レク「ウソだよっ!! フェイトですよ、フォークでっ! 俺じゃないよ、先生!!」

レイオット「レクですよ、レクー」

 

 悪乗りして、レイオットも氷鎖女をつついてレクのせいにする。

 

レク「うわー、よせったら。俺じゃないよ!」

リク「すぐあわてるから、面白がられるんだよ、レクは。クレスや先生と一緒で」

氷鎖女「むっ!?」

クロエ「あははー♪」

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