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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 45-6

 先日、クロエ救出時に相手をした気味の悪い虫のように酸ではなかったが、無害なものでもなかった。

 殺傷能力ではなく粘着力の恐ろしく強い粘液だったのだ。

 

氷鎖女「それはそうか。意味のないものを攻撃手段にしようもないな。捕えるのが目的であらば、なるほどよい選択だ」

 

 などと感心しておる場合ではなかった。

 幸い、下は枯れ草と土だけだ。

 力を入れて足を引き上げれば、草がちぎれて自由になる。

 

氷鎖女「ちっ。この足で走ることになるか」

 

 靴の裏に草と土がくっついて重い。

 実際に戦闘になったときに文字通り、足を取られてしまいそうだ。

 しかしそれを気にしている場合ではない。

 まだいくつがの目がこちらを観察している。

 捕らえなくては。

 氷鎖女がクナイを森の闇に向かって投げた。


▽つづきはこちら

 

氷鎖女「……? 手応えはあったが……妙だ」

 

 走りだそうとしてまた前につんのめってしまう。

 

氷鎖女「ああっ、もうっ!! またっ! このっ!」

 

 枯れた草と近い色をした液に気づかずにまた踏んでしまった。

 草を引き抜こうと足を踏ん張ったとき、ふと影が落ちてきて顔を上げた。

 ただごとでないと体をひねって振り返る。

 

リク「先生、危ない、どいてーっ!!」

氷鎖女「おっ、あっ……えっ!? ちょっ……あっ、足がっ……まだ……っ」

 

 みるみる視界が黒い何かに覆われて……

 

 ぐしょっ。

 

氷鎖女「ぐえっ!!」

 

 蛙が潰されたような声が発せられる。

 

リク「…………ごめん………」

 

 リクの魔法は魔物を直撃、絶命させていたが、同時に勢いよく吐き出された相手の液を前面に受けた衝撃でよろめき、続いて尾で引っぱたかれて吹っ飛んでしまったという結末だった。

 敵にクナイを撃ち込んで正体を確かめようとしていた氷鎖女をつぶしてリクは目を回している。

 もちろん、つぶされた方も地面にしこたま打ち付けて、頭に星がきらめていてる。

 

 恐怖の追いかけっこが開始されて、2時間が経過していた。

 捕まって顔にラクガキされた者たちは、スタート地点に戻り、何が駄目だったか、次はどうしたらいいかと各々話し合いをしていた。

 

ジェーン「おかしくない? あとはリッ君だけでしょ? まだ戻ってこないわ」

アン「リク君は天才だもん。逃げ切れたのよ。さすがね」

ステラ「逃げ切ったとしても、もう戻って来てもおかしくないよね」

シラー「ヒートアップしてまだやりあってるんじゃないの、おいかけっこ」

クレス「ちくしょう、僕だって次こそは……! 今回は単に作戦ミスしただけなんだからな!」

カイル「リクのが上だったって素直に認めろよ」

クレス「何だと!?」

ジェーン「ちょっとぉ、ケンカしないでよぉ」

アン「私、ちょっと探してくる」

ステラ「ヒマだから、私も行こうかな」

 

 アンが歩きだすと何名かが賛同してついていき、連鎖して結局、クラス全員が捜索に当たることとなった。

 

ステラ「あれ? あそこに倒れてるの、リク君じゃないの!?」

 

 大きくはない森の中心部に出て、ステラが叫んだ。

 

アン「いやっ! リク君!!」

 

 アンが血相を変えて走りだす。

 

クレス「ヒ、ヒサメの奴は?」

カイル「いないぞ………あっ!」

クレス「どうした?」

カイル「魔物の死体が……」

クレス「!!」

 

 クラスの大半はリクの元へ駆けつけ、途中、氷鎖女がそうだったように、そこらに飛び散った粘着液に足を取られてあちこちで転んでいた。

 

クレス「まったく、何やってるんだ」

 

 魔物の死体を確かめようと近づいたクレスもまた、

 

クレス「うっわ!?」

 

 ……コケた。

 体を揺さぶられて、気を失っていたリクが目覚める。

 

リク「あ、皆……」

アン「よかった、リク君、死んじゃったかと思った」

 

 アンがべそをかく。

 

リク「大丈夫だよ」

ジェーン「リッくん、ケガは?」

リク「大したことないよ、打ち身くらいかな。……よっと」

 

 地面に手をついて起き上がろうとし、やたらと重たいと感じた。

 

リク「あれ?」

ステラ「ヒサメ先生も……いたんだ?」

リク「……………」

 

 自分の前面にベッタリ、おまけが張り付いていた。

 

氷鎖女「……………」

シラー「……何……やってんの、リク君……」

リク「………うん………そうだね。どうしようね…………コレ」

氷鎖女「………………」

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