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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 45-11

レク「戦略や戦術は別に座学であるけど、そこでもやってるの?」

リク「うん。座学で他の先生に習っているのは、軍隊としての動きじゃないか。ウチのクラスでやってるのは、黒魔法使いとして……ってカンジかな。手持ちの魔法でいかにして勝利するかって言う。それも最小限の力で」

レク「なるほど」

リク「だから、周りから言われているほど無駄な時間なんて過ごしていないんだ。……焼き芋おいしいし」

レク「ははっ。いいね、焼き芋」

リク「魔法数が少ないけど、それはいずれ教えてやるって先生言ってるから、心配してないんだ。ちゃんと他のクラスにも追いつく。先生が言うには土台がしっかりしていれば、呪文や魔法の種類なんて後で追加すればいいだけのオマケだってさ」

レク「土台か。それは重要だけど……割と地味なんだね。いや、呪文をオマケと言い切っちゃう辺りはある意味、突飛?」

リク「そうだね。だから周りの先生たちから反感かって、つつかれてるみたいだけど。……あの人は、知識を教えるだけじゃなくて、その知識の使い方もちゃんと教えてくれる。俺は物知りになりたいんじゃない。強くなりたいんだ。勝ちたいんだ」

レク「珍しいね、リクがそんなにこだわるなんて」

リク「……あ。ごめん、何だか一人でしゃべっちゃって……」


▽つづきはこちら

 

 いつの間にか毛布の下で握り締めていた拳に気づいて開く。

 話を聞くと申し出てくれたレクの優しさに義理立てしたつもりで当たり障りないことを話すつもりが、とんでもない。

 熱くなっている自分がいる。

 レクの聞き上手のお陰だ。

 これがレクの人を惹きつける魅力なのだと妙に感心してしまった。

 それから、話しすぎた自分がちょっぴり恥ずかしかった。

 相手は気にしていないのだろうけれど。

 

レク「いいんだ。気にせず続けてよ」

リク「いや……その……」

 

 リクが口ごもっていると今度はレクの方から話をつないだ。

 

レク「俺はさ、リクは天才だってもてはやされてるし、実際、そうだと思うし、性格も飄々としているから、勝ち負けにこだわらないのかと思ってたよ」

リク「あ、うん……それは……俺も、そう思ってた」

レク「え?」

リク「今まで、あんまり悔しい思いをしたことがないんだ。こんな風に言うと嫌味に聞こえるかもしれないけど……」

レク「そんなことないよ」

リク「ありがとう。でも、本当なんだ。あまり、今まで負けたことがないから……メイディとかクレスがお前を倒してやるぞって言ってくるのは楽しくてね」

レク「余裕あるからかな?」

リク「さぁ。ライバルが欲しかったのか……それとも負けを味わってみたかったのかわかんない。俺は、あまり強い感情がないから……」

レク「でも実際に負けてみたら悔しかったと」

リク「その通りです、レク先輩」

レク「はははっ」

リク「俺のおごりってやつだね」

レク「リクはそんなにおごってるイメージないんだけどな」

リク「どうかなぁ。今日も勝てる気でいたからね。鼻をへし折られたカンジだよ。いっそ気持ちがいいくらいにね」

レク「良かったんじゃない?」

リク「ははっ、厳しいなぁ。でもそう言ってくれたのはレクだけだ」

レク「どういたしまして」

リク「ま、そんなワケで完敗を喫した俺としては、メイディじゃないけど、勝つまではあの先生の下で学びたいんだよ」

レク「それなら断わればいいんじゃないの?」

リク「断わったんだ。先生もそれならそれでいいって」

レク「じゃあ……」

リク「でも先生は俺に移動を勧めてた。それも断わったけど」

レク「………………」

リク「俺は先生がいいけど、先生は俺じゃなくてもいいんだなぁ……って思ってさ」

レク「それで怒ってたの?」

リク「っていうか……勝手にメイディと戦って勝たないと向こうにいかなきゃいけない約束させられてきちゃってさ。あの人、押しに弱いから……」

レク「ははーん」

リク「勝てばいいんだし……本当は……俺が怒るようなことでもないんだけど……」

レク「そういうときもあるよ」

リク「何でだろうね?」

レク「理由を明確にしなくてもいいときもあると思う。わかるときがくれば自然にわかるよ……きっと」

リク「うん……そうかもしれない。レクはすごいなぁ」

レク「何が?」

リク「なんでもわかっちゃうんだ」

レク「そんなこと言われたの、こっちこそ初めてだよ」

 

 少し照れ笑いをしてから、

 

レク「でもさ、リク。先生はリクをどうでもいいって思ったんじゃないよ。リクの才能を引き出せるのはレヴィアス先生の方がいいかもしれないって考えたんじゃないかな?」

リク「だろうね。それは一応わかってるつもりなんだけど……先生は自分の教え方に自信がないみたいだから。これは俺の一方的な……アレだよね。アレ……えっと……うん、まぁいいや。言葉にならない」

レク「いいよ、いいよ、無理しなくて。断わったんなら、それでいいってことにしようよ」

リク「……そうだね」

 

 部屋の誰かがうなった。

 会話がうるさかったのかとあわてて口をつぐむ二人。

 

リク「つき合わせてごめんよ。寝る時間がなくなるね」

レク「いや、気にしないで。でも誰かを起こしてもいけないから、そろそろ寝ようか」

 

 改めて寝る体制に入ったのかレクが動く音がした。逆側を向いたのだろう。

 リクも再び目を閉じる。

 レクが誰からも好かれる理由がよくわかるなどと思いながら、いつしか眠りに落ちていった。

 話してすっきりしたのかもう今日の出来事を思い返してぐるぐると回ることもなくなっていた。

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