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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 45-10

 夜。男子寮。

 

レク「あれ? 先生、外れたんだね、おめでとう」

リク「はは、ありがとう。俺は、もう少しあのままでも構わなかったけど。ゆっくり話したいことがあったから、夜とか丁度よかったかなと。いつも俺見ると逃げようとするからなかなかね」

クレス「それは普段、無意味に追い回すから警戒されるんじゃん」

リク「まぁ、そうなんだけど。面白いからついついイジメたくなっちゃって」

 

 頭をかく。

 

クレス「わかんなくはないけどさ」

レク「またぁ。可哀想なこと言ってぇ」

 

二人のたちの悪い冗談にレクが苦笑いする。

 消灯の時間になり、それぞれベッドに転がる。


▽つづきはこちら

 暗くなった闇に目を凝らしながら、リクは今日の一連の出来事を思い返していた。

 

リク「これなら……うっ」

  「やられた」

  「よし……あ、いけない」

  「うわ、ダメか」

 

 どう頭の中でシミュレートしてもどこかで負ける。

 

クレス「うるさいよ」

 

 上のベッドでクレスの文句が聞こえた。

 

リク「え? 口に出てた?」

クレス「クロエの妄想病でもうつったの?」

リク「えっと、今、先生と戦ってて……」

クレス「も~。カンベンしてよ」

リク「ごめん」

  「あのさ……クレス。先生のこと、どう思う?」

クレス「ただのアホ」

リク「そ……そっか……」

 

 即答。

 会話が終ってしまった。

 消灯して1時間は経つ。他の皆は寝てしまったようだし、クレスも迷惑していたのだろう。

 明日も早いことだ。自分も寝なくては。

 そう思ってまぶたを下ろすがしばらく経つとやはり同じことを繰り返し考え始めてしまう。

 勝てると一瞬思ったのに、結局、いとも簡単に屠られたこと。

 レヴィアスからの要請があったこと。

 それを氷鎖女自身から勧められたこと。

 

リク「うっかり変な約束してきちゃうんだからもう……」

 

 ぼそりとつぶやくと、思ってもみなかった方向から返答が返ってきた。

 

レク「リク、怒ってるの?」

リク「え…………俺が? 怒ってる?」

 

 驚いて身を起こしかける。

 

レク「なんだか、不満げだったから。声が」

リク『不満……? ……そうか、ちょっとムッときてたんだな、俺……』

 

 最近、自分の気持ちがわからないことが多くなってきたような気がする。

 以前は知っていたのに、あの日から、わからなくなっていた感情たち。

 それが再び蘇ろうとしているのだろうか。

 けれど、それは何故だ?

 

リク「……レクは鋭いね」

レク「いや、わかんないけどさ。……何か、あった?」

リク「何かっていうか……」

レク「言ってみなよ。俺じゃ役立たないかもしれないけど」

リク「そんなことは……」

 

 断わりかけて思い直し、レクの優しさにたまには甘えてみることにした。

 

リク「……あー、そうだね。聞いてくれるかな?」

レク「うん」

リク「大したことじゃないんだ。ただ、レヴィアス先生に向こうのクラスに来ないかって引き抜きの話があって……」

レク「すごいじゃない」

リク「……うん……」

レク「……あ、行きたくないんだ?」

リク「はは……」

 

 声だけでこちらの心情を読み取ってくれたらしいレクの言葉に、リクは笑うしかない。

 自分は案外、読まれやすい性格をしているようだ。

 少なくともレク=フレグリットという人間からすれば。

 

リク「行きたくないっていうより、離れたくないんだよね。レヴィアス先生がスゴイって噂は知ってるけど。俺にはヒサメ先生が合ってると思うんだ」

 

 他の教官の授業は実際には知らないけれど、聞くところによれば、より大きな魔法を追い求める傾向にあるようだ。

 ただひたすら頭に詰め込んで覚える、覚える、覚える。

 軍隊での役割を思えば、黒魔術は大砲である。

 より強大な魔法で敵を降す。

 それができればよいのなら、氷鎖女が展開するような小規模の実戦訓練は必要ないのかもしれない。

 室内にこもってひたすら多くの呪文を覚え、野外訓練では、並んで覚えた魔法が発動するかどうかを試せればいいのかもしれない。

 だが、リクは仇が討ちたい。

 家族を惨殺した敵を追い詰めて……そう。ハッキリ言えば、殺してやりたいのだ。

 そのためには薔薇の騎士になって、その組織力を活用できる立場に上り詰め、犯人を見つけ出す。

そして自分の力で、この手で罪を突きつけてやりたい。

 望みはそれだけだ。

 探し出すまでは組織の力を借りるが、実際に手を下すのは自分自身でありたい。

 そのためには大砲ではなく、一人の戦士でなくては。

 戦士であるためには、他の教官ではなく、個人でも勝つ方法を知っているヒサメ先生の力が必要不可欠。

 他の教官は確かに物知りであるが、強いとは感じない。

 シズカ=ヒサメは違う。

 彼は強い。

 そして他の教官が持ち得ない何かをまだ知っており、隠し持っている。

 ハッキリした言葉にはできないが、リクはそう肌で感じていた。

 

リク「先生がさ、ああいう授業やってるからって、俺たちが他のクラスの黒薔薇候補生に比べて魔力が劣っているかっていったら、そんなことはないんだ。むしろ、全体的に上位にいると思う。初めの内は呪文の一つも教えてくれなくて、ひたすら魔力を高める授業ばかりだったからね。それに毎朝走っているせいかもしれないけど、持続力がついてきてるし」

レク「ああ、何だか時々、壮絶な追いかけっこやってるよね。俺たち剣士の間でも名物になってるよ。黒薔薇ヒサメ組の生徒はいつも死に物狂いで走ってるって」

リク「うーん、先生、イタズラ好きだからね。アレには困ったものだけど」

  「遊びが混ざったり、焼き芋とか食べて時間潰しちゃったりもするけど、そういうときも魔法の使い方っていうのを話してくれたり、先生から知識を受取るだけじゃなくて、こっちに質問振って考えさせられたり、戦術的なこととかにも話が及ぶんだ」

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