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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-30

 その頃、女子寮。

 メイディアを送る形でレイオットも同じ部屋に来ていた。

 彼女はレクとフェイトの会話をどこから聞いていたのだろうか。

 レイオットはそれが気になって仕方がなかった。

 

レイオット「えっと……レクの言ったことだけど……」

 

 何かフォローを入れなくてはと恐る恐る声をかけると、メイディアの方から先に話しだした。

 

メイディア「ワタクシが一人勝手に先走ったことで、クロエが危険になってしまったのですね……」

レイオット「う……」

     『フェイトの言葉もしっかり聞いてるぅ~っ!! バカー! フェイトのバカー!!』

メイディア「本当は、わかっていたの。途中も……知らせなきゃって思ったんだけど……でも、失敗を取り返そうってつい……」

 

 鏡台の椅子に腰を下ろしてうつむく。

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レイディ・メイディ 42-29

おばちゃん「この時間は夜のための仕込みに決まってんだろ。ギャーギャー騒ぐんじゃないよ」

リク「おばちゃん、何か恵んで下さい」

 

 表情を堅くして、ヨダレを袖でふき取る。

 

おばちゃん「こんな時間にこっちにいるってことは、サボリだね!?」

クレス「違うよ! 色々あったんだよ。えっと、色々」

おばちゃん「ふん。色々ねぇ」

 

 太く浅黒い腕を組んで、じろり。

 

リク「おばちゃん、恵んでぇぇ~っ!!」

 

 みっともなく、足にすがりつく。

 

おばちゃん「ああっ! もぅっ! うっとうしい!!」

 

 そんなリクを短い足で蹴り飛ばして引きはがす。

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レイディ・メイディ 42-28

フェイト「俺だってそうだろ。貴族だからって理由だけで交際を申し込んできたんだから」

レク「そうだよ。あのときはまだフェイトなんかどうでもよかったに違いないんだ」

フェイト『フェイトなんか…?』

 

 なーんか引っ掛かる言い方だ。

 

レク「その辺に丁度よく落ちてた石ころくらいかな、好意レベルとしては」

フェイト「そんな解説は望んでない」 がくーっ。

レク「だけど、あのときフェイトが言った言葉、メイディには相当効いたんだよ」

 

 

「俺は君を好きになれない」

「君は家の威光をかさに着て、権力を振り回しているだけだ」

「俺は嫌いなんだ」

「そんな奴が自分一人じゃ何ひとつ出来ないクセに」

 

 これが入所していくばくも経たないうちに、学舎の裏でメイディアから告白を受けたときのフェイトの返答だった。

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レイディ・メイディ 42-27

リク「……ウソ……」

クレス「嘘だと思うなら、養成所内を探してみればいいだろ。ナツメなんて生徒、いないんだからな!」

リク「そんなバカな……。いや、でも……」

 

 チェリーを抱き上げて、どきどき。

 

チェリー「ニャ?」

 

 金色の目をくりくりと動かせて、リクの顔に鼻面を近寄せる。

 

リク「………………」 どきどき。

 

 なんだか、リクまで半分、だまされ気味。

 真剣になって、自分の顔をナメてくる猫を凝視している。

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レイディ・メイディ 42-26

 小さな部屋にそれは反響してしんと静まり返った。

 フェイトは言い返して来なかった。

 引っ繰り返ったテーブルを下敷きに、立ち上がりもしなかった。

 ただ、視線が左右をさまよって、レクを通り越した向こうで止まる。

 

レク「……?」

 

 様子がおかしいと気が付いて、レクも自分の背を振り返る。

 

レク「メ……」

 

 ドアを開いて立っていたのは……………………メイディアだった。

 

メイディア「………………………ごめんなさい」

レク「メイディ!」

 

 興奮して自分の口走ってしまった言葉に後悔の波が押し寄せる。

 

レク「今のは……その……」

フェイト「…………………」

メイディア「………………」

 

 誰もが言葉を失ったが、沈黙は長くは続かなかった。

 クロエの兄、ガーネットが元の町から到着したのである。

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レイディ・メイディ 42-25

 レイオットが止めに入ったが、今度ばかりはフェイトの怒りも冷めやらない。

 他の面子と違って、彼は試験でも立て続けに彼女の独断と先走りにしてやられているのだ。

 

フェイト「……今回はな。でも毎回こう独りでつっぱしられちゃ、たまらないな。善かれと思ったって、結果が伴わなければダメだ。あれじゃいつか仲間を殺す」

リク「……正論だね」

 

 それまでおとなしく聞いていたリクがぽつりと言った。

 

レク「……リク」

 

 てっきりメイディアの味方をするのだと思っていた彼がフェイトの意見に賛同したので少々驚いた。

 けれど、冷静になって思い返せばそうだったかもしれない。

 彼は1もなく2もなくメイディアの味方というわけではなかった。

 クラスメイトとしてちょっかいを出すのは好きなようだが、意見がそろったところなど見たことない。

 むしろ、メイディアの傲慢な言動に平気でチクリとイヤミを刺すのが普段の彼だったことを思い出した。

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レイディ・メイディ 42-24

クレス「“その、あれ”?」

レク「ああ、それ、俺も気になってた。ずっと」

レイオット「私も。聞いたらいけないのか、ツッコんで欲しかったのかわからなくて黙っていたけど」

フェイト「何なんだ、ソレ?」

クレス「………え…っと?」

リク「まぁ、色々、事情がありまして」

 

 皆の目線をたどってクレスは改めて自分を見た。

 そうだった。

 クロエ誘拐事件ですっかり忘れていたけど、自分はメイディアを追って町まで繰り出して来たのだった。

 わけもわからず殴られて、気を失ったところで服をはぎとられ、代わりにメイディアの服を着せられていたという……。

 入所当時はメイディアより小柄だったクレスはだいぶ背が伸びて、今ではわずかに上回っている。

 まだ伸びる気配があって、時々、足の関節が痛む。

 そんなクレスがやや小さめで細い服を着ればどうなるか。

 考えなくてもわかる。

 同じ背でも男女では骨格も違うのだ。

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