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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-23

 メイディアから馬を譲られたレクとクレスは急ぎ、現場へと向かう。

 そこではとうとう男がクロエを人質にナイフを当てているところであった。

 

男たち「それ以上、近寄るな!! 剣を捨てて、馬から降りろ!」

   「そっちもだ!!」

 

 やってきたレクたちにも怒鳴りつける。

 

レイオット「言うこと聞いて。クロエが危ないわ」

フェイト「……ふん」

 

 剣を捨てたレイオットとフェイト。だが、二人の口元には小さく確信めいた笑みが浮かんでいる。

 なぜなら。

 たった今、リクの光の呪文が完成したからだ。

 男たちの目の前に強い光が弾ける。

 

男たち「ぐあっ!?」

   「目が!」

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レイディ・メイディ 42-22

レク「行くぞっ!!」

クレス「傷つけても、くれぐれも切り離すなよ。増えるから」

レク「わかってる。俺たちが引き付けているうちに、魔法で片付けてくれ!」

 

 虫が巨体を起こして威嚇する。

 血管の透けた腹が見えたところにレクが迷いなく斬りつけた。

 裂けた側から傷口が凍っていく。

 

レク「これが魔法剣の威力か! おっと」

 

 虫が口から妙な液体を飛ばしてきたので、跳んで避ける。

 

レク「熱湯か!?」

 

 今の今までいた場所に吐きつけられた液が蒸気を立ちのぼらせている。

 

氷鎖女「熱湯でなく、恐らくは酸」

レク「酸! …っと! また来た!!」

 

 転がって避ける。

 

レク「いけない! クレスの方に!!」

 

 呪文詠唱を始めているクレスの邪魔はさせまいと、レクが続けて斬りかかる。

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レイディ・メイディ 42-21

 真っ二つに切られた虫は空中で傷口を修復し、2匹に増えた。

 その2匹がまたフェイトとレクの元へ跳びかかり、さらに2つに切られる。

 2つに切られた2匹は4匹に。

 地上に落ちる事なく、馬の尾にからみついた虫がはい上がって……

 

クレス「うわあっ!?」

氷鎖女「!?」

レク「どうしたっ!?」

クレス「何だよ、コイツは!? 気持ち悪いな!」

 

 肩まで上がって来たのをあわてて払い落とす。

 

クレス「食らえ!」

 

 氷の魔法で弾き飛ばすと千切れた虫が闇の中で再び数を増した。

 

フェイト「放っとけ!」

クレス「わ、わかってる…!」

 

 言いながらも気になって振り返ると数倍に増えた虫が飛び跳ねながら馬を追って来ているではないか。

 

クレス「ぎゃあぁっ!?」

レク「どうしたんだ!?」

クレス「い、いや、なんでも…! このまま進んでくれ。虫が馬に追いつけるハズ………」

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レイディ・メイディ 42-20

 その、本来守られるべき対象に逆に守られっぱなしのメイディアは、森を抜けてひた走っていた。

 

メイディア『歩きじゃ……どのくらいかかるかわからないわ。1日経てばきっともう彼らはクロエをどこかにつれ去ってしまうもの』

     「どうしよう……もう……無理よ……」

 

 足がもつれて地面に伏せる。

 

メイディア「クロエ………クロ………ハッ!?」

 

 立ち上がろうとして、もう一度地面に顔を、正しくは耳をつけた。

 

メイディア「これは………馬の蹄の音?」

 

 日が落ちてしまい、暗くて景色はよく見えないけれど、間違いない。

 こちらに向かっている。

 疲れきった表情に希望の光が差し込んだ。

 賊かもしれない危険を考えもせず、大声で叫ぶ。

 

メイディア「ここです、馬の方、お願い止まってぇーっ!!」

     「お願いーっ!! ここです、困っていますのー!!」

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レイディ・メイディ 42-19

レク「でも気になるなら、片っ端からつぶしていった方がいいって」

レイオット「そうね。虫の知らせとか、私、割りと信じるタイプなの。そんなに強く感じているなら、もしかして、近くに何かあったのかもしれないわよ。おばあさんがどうのっていうんじゃなくて」

 

 老婆を思いやるあまり反対一貫になったクレスを気遣って、レイオットが優しい意見でまとめた。

 

クレス「……いいよ。わかったよ」

 

 悠長なことを言っていられないのも確かだと考え直したクレスが不服半分に同意する。

 残ったフェイトとナツメに視線が注がれた。

 

ナツメ「……うん」

フェイト「……………」

 

 フェイトはナツメの手を勝手に拍手させたりして無意識にいじって遊んでいたが、やがて「俺に異論はない」と静かに答えた。

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レイディ・メイディ 42-18

クレス「えいっ!!」

 

 馬の鞍につかまってジタバタ。

 近くで目にする馬は思ったより大きい。

 

クレス「んおっ! ……ふぬっ!!」

 

 ……上手く乗れない……

 戦闘の花形である赤・青の見習いは早々と馬上戦闘の訓練もさせられる。

 しかし、後方から剣士の援護をする役目の白・黒見習いは馬を操る訓練開始が遅く、3回生になってからなのである。

 それまで馬に触れる機会のなかったクレスが乗れなくても仕方のないことであった。

 何度かレクたち3人が見本を見せたり、コツを教えてみたがどうにも上手く乗ることができないため、クレスは誰かの後ろに乗せてもらうこととなった。

 

クレス「くそー…」

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レイディ・メイディ 42-17

男たち「知らせに走らせるな!!」

   「追え! 殺せ!!」

メイディア「…………」

クロエ「メイディ!! 走って、メイ!!」

メイディア「………うううっ。うわあぁんっ!!!」

 

 きびすを返して、泣きながら走った。

 ……友達を置いて。

 魔法を撃てなかったばっかりに。

 自分が助けるなどと欲をかいたばっかりに。

 全部、自分の身勝手と無力さが招いた結果だ。

 せっかくクロエの居場所をつきとめたが、これでまたヤツラは移動してわからなくなる。

 見つけた時点で、引き返して知らせに走っていれば良かったのに。

 どうしていつも悪い方に悪い方に動いてしまうのだろう。

 

メイディア「こんな……ひっく、つもりじゃ……なかったのに……」

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