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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-19

レク「でも気になるなら、片っ端からつぶしていった方がいいって」

レイオット「そうね。虫の知らせとか、私、割りと信じるタイプなの。そんなに強く感じているなら、もしかして、近くに何かあったのかもしれないわよ。おばあさんがどうのっていうんじゃなくて」

 

 老婆を思いやるあまり反対一貫になったクレスを気遣って、レイオットが優しい意見でまとめた。

 

クレス「……いいよ。わかったよ」

 

 悠長なことを言っていられないのも確かだと考え直したクレスが不服半分に同意する。

 残ったフェイトとナツメに視線が注がれた。

 

ナツメ「……うん」

フェイト「……………」

 

 フェイトはナツメの手を勝手に拍手させたりして無意識にいじって遊んでいたが、やがて「俺に異論はない」と静かに答えた。


▽つづきはこちら

 

レク「よし、出発だ」

 

 思いつく限りのルートは薔薇の騎士団及び、町の警護団がおさえてくれている。

 自由の利く見習い騎士一行は、リクの「なんとなく」を確かめるべく、再び町外れの森に住居を構える老婆の家へと向かって馬を走らせた。

 

リク『どうしてだろう? 何だろう、この感覚。彼女に強く引き付けられるような……そんな感じが。クロエを可愛いと思うから? 紫音と似てるから?』

 

 レイオットの後ろに乗ることになったリクは、ずっと感じていた。

 クロエの存在を。

 

リク『いや……似てないよ。全然。顔も違うし……クロエがお兄ちゃんって慕っているのは、俺じゃなくて本物のお兄さんだ。クロエは俺のことなんて何も思っていない。じゃれあうだけの友達……』

  『俺……もしかして、クロエが好きなのかな? 女の子として? ……そうかな?』

 

 愛しいと思う。

それは確かなのだ。

 今だって、いても立ってもいられないほど、心配でたまらない。

 けれど、これが恋なのかは確信がない。

 リクはあの日、13歳の誕生日に感情を封じ込めてしまったから。

 友達に囲まれていれば、笑う。

 いつもにこにこして幸せそうだと言われることも多い。

 だが、心から笑うことはもうずっとないのだ。

 その自分が恋などするものだろうか? どんな気持ちかもわからないのに。

 リクが自分の思いに沈み込んでいるとき、ふいにナツメが口を開いた。

 

氷鎖女「……くさい」

フェイト「え?」

氷鎖女「手が、くさい」 くんくん。

フェイト「あんなモン、いつまでも持ってたからだろ。手は洗ったんだろうな、ちゃんと!? うわ、俺の服にこすりつけるなっ!! あーもー、だからコレを後ろに乗せたくなかったんだ! 誰か代わってくれ」

レク「ワガママ言うなよ、俺やレイオットよりフェイトのが大きくて、ナツメは一番小さいんだからさー」

フェイト「レクやレイオットよりって……ほんの数センチしか差がないじゃないか」

レク「背があんま変わらなくてもレイオットは女の子だから、体重軽いよ」

フェイト「じゃあ、レクが代わってくれ」

レク「俺の後ろ、クレスだけど?」

フェイト「くそ、微妙だな」

クレス「コラ、オマエラ。それ、どういう意味だよ」

レイオット「もー、ケンカしないで。フェイトもイジワル言わないの。ナツメもフェイトの言うこと聞いておとなしくしててね」

氷鎖女「? ……おとなしい」

フェイト「やってるコトが不合格だっつってんのっ!」

氷鎖女「……フェイトは怒ってばっかし……」 ぼそ…

フェイト「この…っ」

レイオット「はいはい、おしまい、おしまい」

リク「………」

 

 耳に滑り込んできた平和な?会話で、現実に引き戻されたリクが苦笑する。

 

リク『待ってて……クロエ!』

 

 女の子の馬尻に乗せてもらった形でカッコ悪いリクは、真剣な眼差しを日の落ちた紺色の空に向けた。

 

 

 メイディアを逃がして、居場所がばれてしまうことを恐れた犯人グループの男たちは、早く姫を捕らえて、馬で追いかけようとしていたが、想像以上にクロエが強い。

 手負いの獣の如くがむしゃらになって抵抗してくるのだ。

 始め捕らえたときは、だまし討ちだったから簡単にことが運んだのだと男たちは認識を改めることにした。

 これはただのお姫様ではない。

 現女王であるクロエの実母が、わざわざ武家の人間にあずけたのは、守られるだけの姫にはしたくなかったからである。

 そうでなくとも常に危険が付きまとい、兵士たちの命を楯や鎧にしていかなければならない立場。

 ならばせめて、守ってくれる人間たちの足かせにならないように厳しく鍛えて欲しいと養父となるガーネットの父に頼んだのである。

 そんな女王の考えは間違っていなかった。

 クロエは育まれた自分の力で危機に立ち向かっている。

 

男「町に駆け込まれてはマズイ! 誰かあの黒薔薇娘を追え!!」

クロエ「待ちなさいったら!!」

 

 メイディアを見逃してくれたら、言うことを聞くと取引を持ちかけようと口を開きかけたが、その考えはすぐに捨てた。

 始めに捕まったときも、おとなしくすればメイディアを殺さないと言ったのに、実際に指示通りにすると、相手は簡単に約束を破ってメイディアを手に掛けようとしたのだ。

 

クロエ『戦うしかない……! メイディが逃げ果せるまで!!』

 

 背後に回られないよう、木を背にして剣をにぎり直す。

 肩で息をしながら、再び瞳に強い覚悟の光を宿した。

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