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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-16

メイディア「……何だか……温かいみたい……? 疲れがすっと抜けてく……すごいわ、クロエ」

クロエ「うん、何だか授業のときよりずっと効果出てるみたい。授業だとちっちゃい光しか出ないのに。なんでかなー?」

 

 回復魔法が終わると素早く立ち上がって、辺りの様子をうかがう。

 

クロエ「短剣はそのままメイディが持っていて。私はこの長剣で……」

メイディア「扱えるの?」

クロエ「任せて。これでも武家の子よ!」

メイディア「まぁ、頼もしい!」

クロエ「えへっ♪ 本当は私、白薔薇じゃなくて赤薔薇目指してたんだから」

 

 それが白薔薇の才能があると希望とは別の専攻に回されてしまったのである。

 

メイディア「ワタクシと同じですのね。ワタクシは白薔薇が良かったのに……でも今は……」

     『関係なくなってしまったけど……』

 

 嫁に行ってしまうのだから。


▽つづきはこちら

 小走りに家を出て森を走る二人。

 このまま逃げ果せるかと期待したところで、見回りに出ていた男たちと鉢合わせてしまう。

 

男たち「コッ、コイツラ!」

   「アレは黒薔薇の娘! 馬なしでどうやってこんなところまで……」

クロエ「メイディ、魔法を!!」

メイディア「それがその……」

クロエ「どうしたの、早く!!」

メイディア「魔法が……発動してくれませんの……」

クロエ「えぇぇええぇぇ!??」

メイディア「……………」

クロエ「なんで…?」

メイディア「わかりません……わかりませんけど……撃てたり撃てなかったり……最近はまた調子も戻ってきたと思ったのに……」

 

 会話の間にも男たちはそれぞれ剣を抜き放っている。

 

クロエ「まったく撃てないワケじゃないのね? だったら落ち着いて、撃てると思ってやってみて」

メイディア「でも……失敗してしまいます……」

クロエ「何度、失敗してもいいから」

メイディア「何度失敗しても……?」

クロエ「大丈夫! それまで私が食い止める」

 

 幼い頃から体にたたき込まれた構えを取る。

 

クロエ「今は白薔薇だけど、猛将と言われた父と薔薇騎士である兄の元で育った私よ! そうそう負けはしないわ!! いざ、尋常に勝負!!」

メイディア「……一発にかけて、大きな魔法? それとも少ない魔力でも練ることができる威力の低い魔法?」

 

 自信を無くしたメイディアがグズグズしている目の前で2対1の剣劇が始まってしまう。

 言うだけあって、クロエの剣は訓練されたそれであった。

 

クロエ「ハッ!! たあっ!!」

男たち「クソッ! 白薔薇じゃなかったのか!!」

   「姫のクセに剣を振るうのか!? どういう育ちだ!!」

 

 その剣さばきは見事で美しく、一刻も早く魔法を完成させなければならないハズのメイディアはうっかり見惚れてしまっていた。

 

クロエ「メイディ!」

メイディア「…あっ、え、ええ、わかっています!!」

     『お願い、発動して、ワタクシの魔法!』

 

 魔力を練り上げても、呪文と上手くかみ合ってくれない。

 あせればあせるほど、魔力を形にできなくなってゆく。

 

メイディア『ああ、杖さえあれば……!』

 

 授業で使用している杖は、1年生の始めに担任から全員に配布されたもので、それから2年、1日たりと休む事なく自らの魔力を注ぎ込み続けた水晶がはめ込まれている。

 杖もまた担任……移籍した今では元担任だが……から贈られたものだった。

 それがあれば、多少の調子の悪さはカバーしてくれるハズだったのだが、町に出る際は持っていってはいけない決まりになっている。

 事故が起こっては困るからだ。

 

メイディア「どうしたらいいの……レヴィアス先生……」

クロエ「アセらないで!」

 

 どうやらニセのリチャードと違い、正式に剣を学んだわけではなかったらしい男たちは、2人いるのに関わらず、クロエ相手に劣勢に。

 

クロエ「これならイケる!! 魔法がなくても抜け出せるかもしれないわ!!」

メイディア「魔法が……なくても?」

クロエ「メイディ、走って!! 先に逃げて!」

メイディア「でもそれでは…っ!!」

クロエ「私ももちろん、行くわ! 時間稼ぎしたら!」

メイディア「……………」

クロエ「メイディより私のが足が速い! 早く!!」

メイディア「……くっ!」

 

 魔法をあきらめて走りだす。

 

メイディア「ああ、せめて光の魔法が使えたなら、目くらましもできたのに!」

 

 剣を合わせながら、

 

クロエ『メイディアを逃がしたはいいけど……私はどうしよう!? 時間稼ぎはできるけど……』

 

 それも長くはもたない。いずれ、残りの2人も駆けつけるはずだ。

 問題はそんなことよりも、クロエが人を殺した経験がないということだ。

 戦に出たわけではない。

 養成所の試験で人工魔物と戦いはしたが、生き物を殺す感覚とは違う。

 あれはあくまで幻だからできたことだった。

 血が通っており、体温を持った同種族を切り捨てることができるだろうか。

 緊急とはいえ、自分はまだ正気だ。

 それでもこの場を切り抜けるには、気絶をさせるか殺すかしかない。

 しかし気絶させるのは、不意を突くか、相当の実力差がないとそうそうできるものでもない。

 

クロエ『せっかくメイディが縄を切ってくれたのに……ダメかも。ごめんね。危険な思いまでさせておいて……』

 

 走って走って、クロエがいつまで経っても追いついてこないことに気づいたメイディアがたたらを踏んで止まる。

 

メイディア「クロエ…?」

     「クロエ!!」

 

 少し戻ってみると、男たちの人数が増えており、クロエは囲まれてしまっていた。

 

メイディア「クロエ」

クロエ「メイディ、逃げて!! 助けを呼んで来て!!」

メイディア「でもっ!」

クロエ「二人で捕まったら、元も子もないわ!!」

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