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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-20

 その、本来守られるべき対象に逆に守られっぱなしのメイディアは、森を抜けてひた走っていた。

 

メイディア『歩きじゃ……どのくらいかかるかわからないわ。1日経てばきっともう彼らはクロエをどこかにつれ去ってしまうもの』

     「どうしよう……もう……無理よ……」

 

 足がもつれて地面に伏せる。

 

メイディア「クロエ………クロ………ハッ!?」

 

 立ち上がろうとして、もう一度地面に顔を、正しくは耳をつけた。

 

メイディア「これは………馬の蹄の音?」

 

 日が落ちてしまい、暗くて景色はよく見えないけれど、間違いない。

 こちらに向かっている。

 疲れきった表情に希望の光が差し込んだ。

 賊かもしれない危険を考えもせず、大声で叫ぶ。

 

メイディア「ここです、馬の方、お願い止まってぇーっ!!」

     「お願いーっ!! ここです、困っていますのー!!」


▽つづきはこちら

 

 助けを求める声を受け取ったのは、老婆の家……まさにクロエが捕らわれていた場所へ向かっていた見習い騎士の一行であった。

 

レク「あの声っ!!」

レイオット「メイディよ!!」

 

 馬をさらに急がせる。

 

レイオット「メイディー!!!」

メイディア「レ、レイオット!!」

レイオット「無事なのっ!?」

 

 手綱をリクに任せ、馬から飛び降りて駆け寄るレイオット。

 

リク「クロエは!?」

 

 降りるのも一苦労なリクは馬上から尋ねる。

 

メイディア「変な男たちに捕まっているの! 助けて!!」

レイオット「落ち着いて、メイディ。敵の数は?」

メイディア「4人ですわ」

リク「あれ、ちょっと。馬が止まってくれないんだけど……ねぇ?」

 

 リクを乗せてどこかに歩いて行ってしまおうとする馬の手綱をレクが横から引き寄せて止める。

 

レク「魔法使いは混ざってる?」

メイディア「いいえ」

 

 かぶりを振る。

 

クレス「それは確か?」

 

 クレスが口を挟んだ。

 

メイディア「ええ。使ってもよさそうな場面でも誰も使わなかったもの」

 

 自分のように、スランプで使えないということもないだろう。

 

レイオット「メイディは馬に乗れるわね? この一頭に乗って、道案内を」

メイディア「わかった」

     「今ならまだ距離が近いと思うの。急げばきっと……」

 

 飛び乗って馬の腹を蹴る。

 

フェイト「知らせを出して、俺たちは追跡だ!!」

レイオット・レク「よしっ!!」

 

 フェイトの判断に、二人が応じて馬を走らせる。

 

クレス「ちょっと! 俺たちって全員じゃんか! 3人で行ったら、誰が知らせるんだよ?」

 

 レクの後ろからクレスが叫んだ。

 

3人「……あ。」

メイディア「早く! こっち!」

 

 苛立ちを含めた声で先を行くメイディアが呼ぶ。

 

レク「……そうだな、じゃあ知らせには、俺が行く。クレスはメイディの後ろに乗り換えて」

クレス「いや、待て!! 今、森からなんか出て来たっ!?」

レク「どこにっ!?」

クレス「遠いけど……何か動いたような気がしたんだ!!」

レク「真っ暗でそんなのわかるの!?」

クレス「見てろ」

 

 呪文を唱えて、遠く前方に放つ。

 光の中にぽつんと影が浮かび上がったのが一瞬だけ見えた。

 

レク「うわ」

フェイト「どーゆー視力だ」

クレス「ふふん。どーだ」

レイオット「捕らえてしまいましょ!! やっ!!」

 

 言うが早いか、レイオットは速度を上げた。

 

男たち「ちくしょう! 見つかった!!」

   「姫さんが手間を取らせるからだ」

 

 奮闘して友人を逃すまでは戦い抜き、自己に課した責務は果たしたクロエだったが、男4人がかりでとうとう力尽きてしまったのである。

 逃げた娘を今から探すよりもこの暗闇に乗じて遠くに逃げた方がよいと判断した男たちだったが、少しばかり遅かったようだ。

 馬ならばさほど遠くない距離に松明が3つ見える。

 

男たち「どうする?」

   「やるしかない」

「ヤツラ、魔法を撃ってきた!! 追っ手に魔法使いが混ざってる!!」

   「オマケに剣士が薔薇騎士だったら勝ち目がないぞ!」

   「魔法使いが混ざっているってことは、薔薇騎士に決まっているだろう」

   「……最後の切り札を出すしかないか」

 

 馬にくくりつけられているクロエが薄く目を開く。

 

クロエ『最後の切り札?』

 

 男の内、一人が手のひらサイズの布袋を地面に放り投げた。

 走りながらの行動で、クロエの耳には届かなかったが、湿った何かがつぶれる音が暗闇に溶けていた。

 乳白色の液が染み出た布がもぞもぞと動く。

 中から産声をあげたのは、腸の一部を切り取ったような姿の虫であった。

 卵から孵って外気に触れるとすぐにむくむくと両手いっぱいくらいの大きさに成長する。

 生まれたばかりの虫は、“エサ”の気配を感じ取り、薄紅色に艶めく体をうねらせて、跳んだ。

 先頭をきって走り込んできたレイオットの顔面に向かって。

 

レイオット「!? ナニ!?」

 

 とっさに抜き身の剣でなぎ払う。

 

メイディア「今のは!?」

 

 隣を走るメイディアが尋ねた。

 

レイオット「よく見えなかったけど……虫?」

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