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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-21

 真っ二つに切られた虫は空中で傷口を修復し、2匹に増えた。

 その2匹がまたフェイトとレクの元へ跳びかかり、さらに2つに切られる。

 2つに切られた2匹は4匹に。

 地上に落ちる事なく、馬の尾にからみついた虫がはい上がって……

 

クレス「うわあっ!?」

氷鎖女「!?」

レク「どうしたっ!?」

クレス「何だよ、コイツは!? 気持ち悪いな!」

 

 肩まで上がって来たのをあわてて払い落とす。

 

クレス「食らえ!」

 

 氷の魔法で弾き飛ばすと千切れた虫が闇の中で再び数を増した。

 

フェイト「放っとけ!」

クレス「わ、わかってる…!」

 

 言いながらも気になって振り返ると数倍に増えた虫が飛び跳ねながら馬を追って来ているではないか。

 

クレス「ぎゃあぁっ!?」

レク「どうしたんだ!?」

クレス「い、いや、なんでも…! このまま進んでくれ。虫が馬に追いつけるハズ………」


▽つづきはこちら

レク「うわぁっ!!」

 

 突然、馬が暴れだした。

 

クレス「な、なんだよっ!?」

レク「しまった! 変な虫が!!」

クレス「ええっ!?」

 

 レクとクレスの乗った馬の耳に、千切れて小さくなった虫が入り込んでしまったのである。

 馬は狂ったように暴れだし、二人は落馬する。

 

レク「クレス! 大丈夫か!?」

クレス「いっつぅ~」

 

 受け身訓練も受けさせられているレクには大事はなかった。

 クレスも運のいいことに骨を折ったりする事態は免れていた。

 尻をしこたま打ちつけたらしいが。

 

フェイト「レク! クレス!?」

 

 旋回させようと手綱をしぼる。

 

レク「平気だ!! フェイトはクロエを追って!!」

フェイト「わ、わかった」

氷鎖女「……降りる。先に行って」

フェイト「え?」

 

 馬の後ろから飛び降りて氷鎖女はレクとクレスの方へ走った。

 

フェイト「了解した! 頼むぞ、ナツメ」

氷鎖女「んっ」

 

 意図をくみ取って、フェイトは一人、レイオットとメイディアの後を追った。

 

レク「ナツメ、来てくれたのか! 気をつけて、あの虫、胎内に入ろうとする!!」

クレス「ヤツラ、切ったらダメだ!! 切ると増える! つぶすんだ!!」

氷鎖女「……承知」

 

 三人で滑稽なダンスを踊るようにその場で足踏み。

 間抜けに見えるが、たかってきた虫を踏み潰しているのである。

 後で判明することだが、クロエを護衛していた部隊はこの虫によって、全員、命を落としていたのだった。

 「奥の手」を使い切った男が振り向くと、追っ手が半分に減っていることが確認できた。

 

レイオット「待ちなさい!!」

リク「メイディ、道案内はもういい。後ろに下がって、いつでも撃てるよう、魔法の準備を」

メイディア「……できないの……」

リク「何か言った?」

メイディア「……いえ……」

 

 メイディアの小さなつぶやきは向かい風にかき消されて誰にも届かなかった。

 リクが魔法で敵の行く手を阻み、牽制すると、レイオットとフェイトが追いついて、馬上での戦いが始まる。

 レイオットの後ろに乗ったリクはクロエを奪い返そうと注意深く、隙をうかがっている。

 接近戦になっては、もはや魔法の出る幕があまりないためだ。

 下手に馬を驚かせて転ばれては、くくりつけられているクロエが下敷きになってしまう。

 

フェイト「このっ!」

 

 互いに剣を合わせては弾きを繰り返す。

 月明かりと松明だけが頼りの闇の中で、火花がちらついた。

 

フェイト「ここまでだ! 観念して止まれ!!」

レイオット「あきらめなさい! 愛と正義と光の戦士! 薔薇騎士☆レンジャーの名において、貴方がたを逮捕します!!」

フェイト「それはチウ!! どさくさにまぎれて何言ってるんだ!?」

レイオット「ちっ、バレたか……」 ぼそっ。

 改めて……

レイオット「あきらめなさい! 薔薇の騎士……見習い……の名において、貴方がたを逮捕します!!」

     『あーあー、もー、フェイトが余計なこと言うから、見習いまで言わなくちゃならなくなっちゃったじゃないのー。ぷーっ!』

 

 密かにスネてみる、レイたま18歳。

 

男たち「見習い騎士か!」

   「チクショウ!」

メイディア『魔法が撃てない私では戦いに加われない……。レクたちは一体、どうしたのかしら。来てくれれば多勢に無勢ですぐクロエを取り返せるのに!』

 

 後ろを振り返ったが、レクたちの姿が見えない。

 けれど、何者かと戦っている声だけはする。

 

レク「うわっ! うわっ!! キッモ!」

クレス「デッカッ!?」

氷鎖女「!?」

 

 虫をあらかた踏み潰して、一息ついた3人は驚きを隠せなかった。

 狂ったように激しくのたうちまわっていた馬の腹を突き破って、肥大した例の虫が現れたのである。

 

レク「血を吸って大きくなったのか!? こっ、こんな短時間に!?」

氷鎖女「あわて……」

クレス「あわてるな。大きくなった方が的も広いし、やりやすいってもんだ!」

レク「そうだね。確かにクレスの言う通りだ!」

氷鎖女「……ん」

レク「だけど、切ったらダメってことは……どう戦えば?」

クレス「剣に魔法をかける」

レク「そうか。頼む」

 

 クレスの氷の魔法の力をレクの剣に宿す。

 

クレス「チェリーもおいで!」

氷鎖女「いらない………にゃー」

クレス「チェリー、ワガママ言わないのっ! 僕の言うこと聞いてっ」

 

 氷鎖女の携帯していた刀を取り上げて、魔法をかける。

 

氷鎖女「……………」

クレス「ホラ」

氷鎖女「……………」

 

 クレス、黙ってにこっと笑顔。

 

氷鎖女『……もしや……褒め言葉を待って……る?』 滝の汗。

   「……………。や……」

   「……やたー。ス、スゴイにゃー。さすがクレスにゃー。ありがとうにゃー。うーれしーいにゃー……ばんざーい」

 

 不自然に棒読み。

 無表情で両手を挙げる。

 可愛さのカケラもナシ。

 むしろ、気持ちが悪い。

 

クレス「へへっ♪」

 

 しかしそれでもなおかつ不自然に思わないクレスは、満足して鼻の下をこする。

 ある意味、大物だ。

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