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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-16

メイディア「……何だか……温かいみたい……? 疲れがすっと抜けてく……すごいわ、クロエ」

クロエ「うん、何だか授業のときよりずっと効果出てるみたい。授業だとちっちゃい光しか出ないのに。なんでかなー?」

 

 回復魔法が終わると素早く立ち上がって、辺りの様子をうかがう。

 

クロエ「短剣はそのままメイディが持っていて。私はこの長剣で……」

メイディア「扱えるの?」

クロエ「任せて。これでも武家の子よ!」

メイディア「まぁ、頼もしい!」

クロエ「えへっ♪ 本当は私、白薔薇じゃなくて赤薔薇目指してたんだから」

 

 それが白薔薇の才能があると希望とは別の専攻に回されてしまったのである。

 

メイディア「ワタクシと同じですのね。ワタクシは白薔薇が良かったのに……でも今は……」

     『関係なくなってしまったけど……』

 

 嫁に行ってしまうのだから。

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レイディ・メイディ 42-15

 天の助けか、その民家はまさにクロエが捕らわれている家であった。

 ただし、こんなボロぞうきんになって魔法も使えない彼女が役に立てるかはまた別だ。

 あまりに古い家なので人がいるかどうか心配しながらそっと窓を覗いてみると、いるにはいた。

が、例の男たちではないか。

 

メイディア『ひえぇ~っ!!』

 

 ボンヤリしていた頭がショックのために動きだし、あわてて首を引っ込める。

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レイディ・メイディ 42-14

 袋詰めクロエが運び込まれていたのは、ガーネットやリクらの予想通り、大捜索が行われている範囲の中にあった。

 人を隠すなら人の中で、街中に逃げこんだのではないかと見当をつけていた。

 目立つところに隠れては、捜索が入ったときに一発でわかってしまうからだ。

 だが、その部分については、予想は完全に外れてしまっていた。

 彼らは敢えて、町外れにぽつんと立つボロ小屋に身を隠したのである。

 ただし、使用した馬車はそのまま別の荷を積んで、手下に走らせる。

 敵の目を引き付けられるように。

 肝心のお姫様は、一人暮らしの老婆の家に監禁されていた。

 視力が弱って目は濁り、耳も遠くなった老婆がよもや悪漢共を庇い立てするはずがない。

 もし捜索の手が入っても、そこまで慎重に調べられないはずだ。

 実際に、老婆は庇い立てするつもりなどなかった。

 むしろ、何が起こっているのか現状を理解さえしていなかったのである。

 年老いて記憶も曖昧になっている家の主を無視して、勝手に彼らは作業を進める。

 老婆は見知らぬ男を見て、息子が帰って来たと口元をほころばせた。

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レイディ・メイディ 42-13

薔薇騎士「何だ、君たちは? 我々は今、忙しいんだ。今度にしなさい」

レク「俺たち、薔薇の騎士見習いです、お手伝いできることがあれば……」

 

 養成所の学徒である証しのプレートを突き付ける。

 

薔薇騎士「見習いなど……いや、手が足りてないかもしれないな……。それなら……。よし、詰め所に行きなさい。そこにガーネット小隊長代理がいるはずだ。指示をもらって動くように」

レク「はいっ!」

 

 三人、敬礼して走りだす。

 

レイオット「ガーネットっていったら、クロエのお兄さんだわ」

レク「ひょっとするとクロエとメイディアもそっちに行ってるかもしれないね、この騒ぎを聞き付けて」

フェイト「この騒ぎったって、まだ内容知らないけどな。ただ事ではなさそうだが」

 

 騎士団詰め所のドアを開ける。

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レイディ・メイディ 42-12

声「よーく見ておくといい」

 「帰りに玩具を買ってあげようね?」

 

 人の言葉を話す鳥の羽根をむしって、犬に与えたのはだぁれ?

 その犬を打ち殺したのはだぁれ?

 

 縄で首を引っかけられた人々が、広場で吊り下がってくるりくるりと風に吹かれて回っている。

 

メイディア「あはっ! てるてる坊主みたい」

声「メイはいいことを言うね。ああやって、お天気になるのをお願いしててもらおう、あの人達には。だって、悪いことをしたから、今度は良いことをしてもらわないと」

 

 温かな、よその家庭の光を求めて素足で走る。

 覗き込んだら、そこに思っていた風景はなくて、赤で塗りたくられた部屋があった。

 下腹部にうずく痛みを感じた。

 足の間から、赤い液体。

 赤、赤。

 後から入って来て、呆然と立ち尽くした黒髪の少年がゆっくりとメイディアを見つめる。

 その瞳も、赤。

 ほんの一瞬の間に、多くの情報が弾けて散らばった。

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レイディ・メイディ 42-11

クロエ「!!」

 

 何をするのとクロエが問う前に、布の袋をかぶせられあっという間に縛り上げられてしまった。

 

クロエ「ちょっ!?」

リチャード「姫、騒がないで下さい。騒げば、お友達の首が飛びます」

 

 目の見えなくなったクロエの耳にリチャードの声が不気味に聞こえた。

 

クロエ「…ッ!!」

リチャード「そう。聞き分けのよい方ですね。……誰か! さるぐつわをかませろ」

手下「ハッ!」

クロエ「んんっ!」

   『メイディ! メイディ、無事で…!!』

 

 かつがれて、放り込まれた。

 馬車の中にだろう。

 

リチャード「顔を見られている。あの疑り深いお嬢さんは可哀想だが、死んでもらうしかないな」

クロエ「!!」

   『約束が違う!!』

 

 さっと血の気が引いた。

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レイディ・メイディ 42-10

 場面はクロエとメイディアに戻る。

買う意志もないのに店の品物を一通り眺めた二人は、また別の店へ別の店へと興味のおもむくままにあっちフラフラ、こっちフラフラ。

まさに女の子お得意の見るだけショッピング。

 

クロエ「わー、この帽子、可愛いねー♪」

 

 今度は帽子屋に入り込んで、鏡の前でとっかえひっかえ。

 

メイディア「その……」

クロエ「うーん?」

メイディア「あれからフェイトとはいかが?」

クロエ「あれからって? ……あ、こっち帽子のがいいかも」

メイディア「あ、いえ……その……」

クロエ「?」

メイディア「……何でもございません」

クロエ「うん?」

メイディア「お気になさらず」

クロエ「??」

 

 店から出て、時間を確認すると次こそ下着屋に向かおうとするクロエ。

 

クロエ「そろそろパン……アレを買いに行こ。メイディ」

メイディア「今のワタクシはクレスです」

クロエ「……いいけど……」

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