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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-11

クロエ「!!」

 

 何をするのとクロエが問う前に、布の袋をかぶせられあっという間に縛り上げられてしまった。

 

クロエ「ちょっ!?」

リチャード「姫、騒がないで下さい。騒げば、お友達の首が飛びます」

 

 目の見えなくなったクロエの耳にリチャードの声が不気味に聞こえた。

 

クロエ「…ッ!!」

リチャード「そう。聞き分けのよい方ですね。……誰か! さるぐつわをかませろ」

手下「ハッ!」

クロエ「んんっ!」

   『メイディ! メイディ、無事で…!!』

 

 かつがれて、放り込まれた。

 馬車の中にだろう。

 

リチャード「顔を見られている。あの疑り深いお嬢さんは可哀想だが、死んでもらうしかないな」

クロエ「!!」

   『約束が違う!!』

 

 さっと血の気が引いた。


▽つづきはこちら

 

クロエ『……お兄ちゃん!! 助けて、メイディを助けてお兄ちゃん!!』

 

 ぎゅっと目をつぶる。

 

リチャード「……ナニ!? 娘がいない!?」

クロエ「?」

   『いない?』

リチャード「気絶したんじゃなかったのか! くそっ、どこだ!? 探せ!!」

クロエ『よかった…! 逃げてくれたのね?!』

手下「探しているヒマはありません。追っ手が来ます」

リチャード「ちっ。まぁいい。あんな娘に何ができるということもあるまい」

手下「しかし、姫と友人ということは、恐らく見習い騎士……黒薔薇だとすると攻撃範囲が広い。少々、やっかいかと」

リチャード「どうせよというのだ。ったく、世話を焼かせ……ぐあっ!?」

 

 台詞が終わらないうちにリチャードが倒れた。

 

リチャード「…いっつ…。石!? 石なんて投げやがって……このっ!」

クロエ『メイディだわ!』

 

 縄から抜け出そうと体をよじる。

 

リチャード「お…おやおや。お友達を置いて逃げたのかと思ったら、戻ってきたのですね、お嬢さん。だが、その選択は正しくない。わざわざ命を落としに来ようとは……んねっ!?」

 

 また倒れた。

 メイディアの投石によって。

 

リチャード「おぉ~っのれぇぇぇ!!!」

メイディア「クロエをお返しなさい!! さもなくば、石では済ませませんことよ!!」

 

 頭に大きなタンコブを作らされたメイディアは、めまいはしたものの、気絶まではしていなかったのである。

 男たちがクロエを縛って馬車にかつぎこんでいるうちに、今来たばかりの裏路地に転がり込んだというワケだ。

 

リチャード「お嬢さんは、剣を携帯していないようだ。すると黒か白。黒ならば、石を使わずに攻撃魔法を使っていたはず。つ、ま、り! 君は白薔薇見習い。……違うかな?」

 

 余裕の笑みを浮かべたリチャードが一歩一歩、距離を詰める。

 

リチャード「どうする? この私を相手に?」

メイディア「……どうするって? 決まっていますわ」

リチャード「んん?」

メイディア「こうするのッよッ!!」

 

 続けて石を投げる。

 しかし、今度は軽々と鞘をつけたままの剣で叩き落とされてしまう。

 

リチャード「ははははっ! もう手元の石がなくなったようだね、レイディ」

 

 真剣を抜き放ち、

 

リチャード「あのまま逃げていれば良かったものを。さらば、うら若きつぼみの薔薇よ」

メイディア「……言い忘れておりましたけれど、ワタクシ、」

 

 相手が勝ち誇り、大きく剣を振りかぶった瞬間、メイディアは放った。

 至近距離での黒魔法を。

 

メイディア「黒薔薇ですの!!」

リチャード「ッ!?」

 

 敵の胴体と突き出したメイディアの手の間で閃光がほとばしる。

 

リチャード「うっ、わっ、あっ!? たっ、助……っ!!」

 

 爆呪を唱えられたリチャードは鎧ごと体を貫かれ、一瞬にして絶命した。

 激しく地面に叩きつけられる血の模様。

千切れた臓物が辺りに散乱してへばりついた。

 

メイディア「……ハッ、ハッ、ハッ……! ……や、やった」

 

 呼吸を粗くして、上半身と下半身の離れた男の死体を目に止める。

 死体は驚きの表情を浮かべて、目には涙がたまっていた。

 

メイディア「ハァッ! ハァッ!!」

 

 人を殺した。

その衝撃からか急激に吐き気とめまいが襲ってきた。

 同時に耳なりが始まり、その騒がしい中にいくつもの声と場面が混ざってくる。

 切り取られたいくつもの場面が。

 

声「いいかい、メイ。罪には罰だ」

 「罪を犯した者は、ホラ、ごらん。ああやって首を落とされるのだよ」

 

 ギロチン台に首がひとつ、転がった。

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