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レイディ・メイディ 42-11
2008.06.17 |Category …レイメイ 42話
クロエ「!!」
何をするのとクロエが問う前に、布の袋をかぶせられあっという間に縛り上げられてしまった。
クロエ「ちょっ!?」
リチャード「姫、騒がないで下さい。騒げば、お友達の首が飛びます」
目の見えなくなったクロエの耳にリチャードの声が不気味に聞こえた。
クロエ「…ッ!!」
リチャード「そう。聞き分けのよい方ですね。……誰か! さるぐつわをかませろ」
手下「ハッ!」
クロエ「んんっ!」
『メイディ! メイディ、無事で…!!』
かつがれて、放り込まれた。
馬車の中にだろう。
リチャード「顔を見られている。あの疑り深いお嬢さんは可哀想だが、死んでもらうしかないな」
クロエ「!!」
『約束が違う!!』
さっと血の気が引いた。
▽つづきはこちら
クロエ『……お兄ちゃん!! 助けて、メイディを助けてお兄ちゃん!!』
ぎゅっと目をつぶる。
リチャード「……ナニ!? 娘がいない!?」
クロエ「?」
『いない?』
リチャード「気絶したんじゃなかったのか! くそっ、どこだ!? 探せ!!」
クロエ『よかった…! 逃げてくれたのね?!』
手下「探しているヒマはありません。追っ手が来ます」
リチャード「ちっ。まぁいい。あんな娘に何ができるということもあるまい」
手下「しかし、姫と友人ということは、恐らく見習い騎士……黒薔薇だとすると攻撃範囲が広い。少々、やっかいかと」
リチャード「どうせよというのだ。ったく、世話を焼かせ……ぐあっ!?」
台詞が終わらないうちにリチャードが倒れた。
リチャード「…いっつ…。石!? 石なんて投げやがって……このっ!」
クロエ『メイディだわ!』
縄から抜け出そうと体をよじる。
リチャード「お…おやおや。お友達を置いて逃げたのかと思ったら、戻ってきたのですね、お嬢さん。だが、その選択は正しくない。わざわざ命を落としに来ようとは……んねっ!?」
また倒れた。
メイディアの投石によって。
リチャード「おぉ~っのれぇぇぇ!!!」
メイディア「クロエをお返しなさい!! さもなくば、石では済ませませんことよ!!」
頭に大きなタンコブを作らされたメイディアは、めまいはしたものの、気絶まではしていなかったのである。
男たちがクロエを縛って馬車にかつぎこんでいるうちに、今来たばかりの裏路地に転がり込んだというワケだ。
リチャード「お嬢さんは、剣を携帯していないようだ。すると黒か白。黒ならば、石を使わずに攻撃魔法を使っていたはず。つ、ま、り! 君は白薔薇見習い。……違うかな?」
余裕の笑みを浮かべたリチャードが一歩一歩、距離を詰める。
リチャード「どうする? この私を相手に?」
メイディア「……どうするって? 決まっていますわ」
リチャード「んん?」
メイディア「こうするのッよッ!!」
続けて石を投げる。
しかし、今度は軽々と鞘をつけたままの剣で叩き落とされてしまう。
リチャード「ははははっ! もう手元の石がなくなったようだね、レイディ」
真剣を抜き放ち、
リチャード「あのまま逃げていれば良かったものを。さらば、うら若きつぼみの薔薇よ」
メイディア「……言い忘れておりましたけれど、ワタクシ、」
相手が勝ち誇り、大きく剣を振りかぶった瞬間、メイディアは放った。
至近距離での黒魔法を。
メイディア「黒薔薇ですの!!」
リチャード「ッ!?」
敵の胴体と突き出したメイディアの手の間で閃光がほとばしる。
リチャード「うっ、わっ、あっ!? たっ、助……っ!!」
爆呪を唱えられたリチャードは鎧ごと体を貫かれ、一瞬にして絶命した。
激しく地面に叩きつけられる血の模様。
千切れた臓物が辺りに散乱してへばりついた。
メイディア「……ハッ、ハッ、ハッ……! ……や、やった」
呼吸を粗くして、上半身と下半身の離れた男の死体を目に止める。
死体は驚きの表情を浮かべて、目には涙がたまっていた。
メイディア「ハァッ! ハァッ!!」
人を殺した。
その衝撃からか急激に吐き気とめまいが襲ってきた。
同時に耳なりが始まり、その騒がしい中にいくつもの声と場面が混ざってくる。
切り取られたいくつもの場面が。
声「いいかい、メイ。罪には罰だ」
「罪を犯した者は、ホラ、ごらん。ああやって首を落とされるのだよ」
ギロチン台に首がひとつ、転がった。