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レイディ・メイディ 42-9
2008.06.17 |Category …レイメイ 42話
鬼の形相でメイディアを追ってきたクレスが、骨組みだけでできた粗末な大型馬車から飛び降りた。
メイディアに履かされたスカートが風になびく。
クレス「どこだぁ、メイディアァー!!」
町に到着した馬車は、今度は養成所に戻る生徒のためにしばし時間待ちだ。
まだ午前の早い時間帯なので、待っても帰る生徒がいるとは思えなかったが、それでも決まりで御者のおじさんはタバコをふかせてのんびりと20分間、留まってくれているのだった。
しかしこの日は珍しく、その早い帰りの馬車に乗り込もうとしていた学徒がいた。
いや、正確には学徒ではなく、教官。
氷鎖女 鎮だ。
▽つづきはこちら
リク「アレ?」
クレス「いたか、メイディア!」
リク「違う、違う。アレ」
クレス「うん? ……あっ!?」
誰もいなくなった馬車の最後尾に足をそろえて澄まして座っていたのは、
クレス「チェ、チェリー!!」
リク「エ?」
クレス「ダメじゃないか、ついてきちゃあ~♪」
降りた馬車にもう一度乗り込んで、氷鎖女に近づく。
氷鎖女『ギックー!』
『ぐあ、こんな所で……クレスでわないかぁぁっ!!』
追ってきて、リク「ナツメじゃないの? 久しぶりだね」
クレス「僕を追ってきたんだ」
氷鎖女……もとい、ダイヤモンド・チェリーの前にしゃがんで手を伸ばし、頭を撫でる。
リク「そうなの?」
氷鎖女「…………」
必死になって、首を横にブンブン。
氷鎖女『っていうか、今、帰ろうとしてたトコだしー!!!』
クレス「僕が心配で変身してついて来たのさっ! ふっふーん♪」
誇らしげに胸を張る。
リク「へぇ……」
氷鎖女「………………」 どきどき。アセアセ。
『んなワケあるかー!! 夢見んなーっ!!!』
クレス「しょうがないなー、お魚を買ってあげるよ。おいで」
氷鎖女「…………」
リク「……もしヒマだったら、付き合ってやって?(可哀想だから)」
氷鎖女「……に……」
クレス「さぁっ!!」
珍しい爽やか笑顔で白い歯が光る。
氷鎖女「……に……に……………………にゃあーん……」
こちらはテンションのひっくぅ~い声。
顔も引きつって青ざめている。
クレス「うっははーい♪ 行こう、チェリー、行こう!!」
氷鎖女『た、た、大変なことに…………嘘が……嘘の上塗りが……!』
帰りの馬車から引きずり下ろされて、ガタガタ、ブルブル。
クレス「ホラ、お魚だよ、チェリー!!」
氷鎖女「……やったにゃー。おいしそーだにゃー……」
棒読み口調で生魚を受取る。
クレス「ほぅら、チェリー! キャットフードだそぅ!!」
氷鎖女「……うわーい……食べ放題だにゃー……」
バリボリ。乾燥猫餌を頬張る。
口の端から、キャットフードをハミ出させながら、
氷鎖女『……俺は―……。俺は、一体……何をしているんだろう……?』
遠い目。
氷鎖女『遠い国におわします、ととさま、かかさま、あにさま、お元気でしょうか。鎮は今、何だか頭が小春日和のアホ少年の妄想に付き合って、人の道を踏み誤っておりまする……』
連れ回されて、ヨロヨロ。
リク「案外と付き合いいいんだね、ナツメ」
氷鎖女「おまっ……! ………………なんでもナイにゃー……」 ゲンナリ。
リク「ふふっ」
氷鎖女『何やらエライことに……。隙を見て逃げ出さなければ……!』
一難去ってもう一難とはまさにこのことだと氷鎖女は思うのだった。
……律儀に付き合わなければいいだけなのに。