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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-7

 一つに束ねた髪を高く結い上げて、顔までを覆い隠す額当てをしており、黒装束を着ている。

 365日、その決まりきった格好こそが生徒の知る「ヒサメ先生」なのだ。

 目立つのが嫌なら、そんな奇抜な格好をしなければいいと当然の意見を何度か言われたことがある氷鎖女だが、これにはワケがあった。

 常に同じ格好をしていることで、その姿=ヒサメ先生と周りに思い込ませることである。

 そうすることで別の服、別の髪型、そして素顔をさらして別の場所で会っても誰も気づかない。

 現在、彼の格好はといえば、普通に町で見かける服に髪は下ろして後ろで三つ編み。
  顔は右を包帯で隠してそのまま。

 これならば、少なくとも生徒たちは本人だとわかりようもない。

 何しろ、ヒサメ先生の顔を見たことがないのだから。

 ただ最大の誤算は、ナツメとして生徒と共に試験を受けなければならなくなったこと。

 スタート時に少し顔を合わせた程度の生徒たちならば、時間も経ったことだ。
  もう忘れているだろうが、丸1週間、共に過ごしたチームメイトはそうもいくまい。

 今しがた、店で一緒になったメイディアとクロエなどはまだ記憶に新しいはずだ。

 それに教官たちも覚えているだろう。

 入所時、一度だけならまだしも、試験で観察している。

 これが1年以上経てば記憶も薄らいでいくだろうが、それにはまだ間がある。

氷鎖女『もしものときのために早ぅ、忘れてもらわねば困るわ』


 もしものため。

 それはローゼリッタから逃げおおせるときのため。

 そんなときが来なければよいと願ってはいるものの、いつ正体がばれないとも限らない。

 罪人であり、化け物を宿している身では、常に戦々恐々だ。

 行きつけの店で髪飾りと、同じく東方の国で使用されている油紙でできた朱色の傘を購入した氷鎖女は、そそくさと店の前を離れて行った。

▽つづきはこちら

 

 

 同じ頃。レイオットはレク、フェイトと共に早々と広場前。

 お芝居のためのテントは張られているものの、準備中で他には誰もいない。

 

レク「……いや……、レイオット……」

レイオット「何?」

 

 そわそわ、あっち行ったり、こっち来たり。

 落ち着きのないレイオットを何とかなだめようとするレク。

 

レク「こんなに早くからスタンバイしててもさぁ……まだ10時30分だよ?」

レイオット「遅刻したらどうするの?」

レク「しないよ、お芝居は午後2時からじゃないか。お昼食べてからでも間に合うって」

レイオット「じゃあお昼を食べましょう」

レク「待って、待って、そうじゃなくて……」

フェイト「……その前に。俺は何のために連れて来られたんだ?」

 

 二人のやり取りにそっと手を挙げて質問したのは、どんより曇り顔のフェイトだった。

 

レク「そりゃあ!」

レイオット「もちろん!」

二人「……何でだっけ?」 顔を見合わせる。

フェイト「……オイ」

 

 仲直り大作戦を決行すると大張り切りで養成所を飛び出したレイオット。

 ちょうど、町に用事もあるし、心配だからついていくとレク。

 馬車に乗り遅れそうになって走る二人。

 前方に歩いていたフェイトを真ん中に避けた二人。

 とっさにフェイトの両腕を左右からつかんでいた二人。

 そのまま何故か馬車に乗せられてしまったフェイト。

 ………理由も分からず、今に至る。

 

フェイト「はぁぁ~」

 

 盛大にため息を吐き出す。

 

レク「ごめんてば」

 

 理由をここでようやく打ち明けられて、

 

フェイト「つまり。要約すると、俺には全く一切、ほんのひとカケラも関係ない。……そういうことだな?」

レイオット「そんなことないわ。私とメイディが仲直りすれば、フェイトも嬉しいでしょ?」

フェイト「俺には別に……」

レイオット「嬉しいでしょ?」

フェイト「俺は……」

レイオット「嬉しいでしょ、……嬉しいわよね?」 にこっ。

フェイト「………………」 汗、だらだら。

    「おい、レク……」

 

 小声でレクをひじでつつく。

 

レク「うん?」

フェイト「レイオット、どんどん凶悪になってきてないか?」 ぼそっ。

レク「いや……割りと初めからあんなモンかなーって……」

フェイト「そうか……」

レイオット「ん? なに?」

レク「な、なんでもっ」

フェイト「…………」

レイオット「そっか、フェイトも喜んでくれるのね」

レク「おい、フェイト」 軽く足を蹴る。

フェイト「……バ……バンザーイ……」

    「なぁ、冗談はさておき。仲直りって問題棚上げにしたままでできるものなのか? また同じ問題で言い合いになったりするんじゃないのか?」

レイオット「うっ…」

レク「いいんだよ。そんな話し合い、仲が修復してからゆっくりやればいいんだから。急がなくたっていいと思うよ?」

レイオット「う、うん」

フェイト「だいたい、そんなまですることなのか? 悪いのは、結局、あのお嬢さんだっていうのに」

 

 放っておけばいいものをと腕を組む。

 

フェイト「どうせ話なんて通じるものか。他人を見下すことしかできないんじゃな」

レク「フェイトはちょっと相手と意見が違ったからって、じゃあもういいって切り捨てるのか? それじゃ確かに話し合いにならないよ。だってフェイトが話を聞く気も説得する努力もしないんだから」

フェイト「なに?」

レク「誰だってすれ違うことはあるよ。メイディだって気が立ってたんだし……」

フェイト「あの女は毎度だろうが」

 

 もめている発端となった内容は聞いて知っている。

 試験のときに少しだけ見直したと思ったら、今度はアンのノートを引き裂くというとんでもない暴挙に出る。

そうかと思えば、今度はシラーブーケに対しての酷いふるまい。

 噂は速いもので、すでに彼女がメイディアの姉妹であることは、聞こうとしなくても耳に届いていた。

 それをよく思わないメイディアが彼女を虐げているという噂も。

 噂どころか、目の前のレイオットからそのことが原因で言い合いになったことを直接聞いているわけだ。

 

フェイト「どうして、どいつもこいつもアレをかばうんだ? 普通は逆だろ。シラーブーケがこれじゃ気の毒だな。ま、俺には関係のないことだが」

レク「わかっているよ。だからこそ、レイオットが先に仲直りして、メイディにシラーのことをわかってもらわなきゃ」

レイオット「……メイディはフェイトが言う程、悪い子じゃないわよ」

フェイト「どうだかな」

レク「そうだよ、悪いのは頭だけだから!! ちゃんとかみ砕いて言い含めればわかってくれるって!」

 

 力強く、断言。

 

フェイト・レイオット「………………」

          『言っちゃった………』

レク「え? え? どうしたの?」

フェイト「……いや」

レイオット「……別に」

レク「?」

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