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レイディ・メイディ 42-10
2008.06.17 |Category …レイメイ 42話
場面はクロエとメイディアに戻る。
買う意志もないのに店の品物を一通り眺めた二人は、また別の店へ別の店へと興味のおもむくままにあっちフラフラ、こっちフラフラ。
まさに女の子お得意の見るだけショッピング。
クロエ「わー、この帽子、可愛いねー♪」
今度は帽子屋に入り込んで、鏡の前でとっかえひっかえ。
メイディア「その……」
クロエ「うーん?」
メイディア「あれからフェイトとはいかが?」
クロエ「あれからって? ……あ、こっち帽子のがいいかも」
メイディア「あ、いえ……その……」
クロエ「?」
メイディア「……何でもございません」
クロエ「うん?」
メイディア「お気になさらず」
クロエ「??」
店から出て、時間を確認すると次こそ下着屋に向かおうとするクロエ。
クロエ「そろそろパン……アレを買いに行こ。メイディ」
メイディア「今のワタクシはクレスです」
クロエ「……いいけど……」
▽つづきはこちら
そんな二人の少女を先程から尾行していた男たちがいた。
男たち「アレだ。あれこそ姫だ……間違いない」
「予定通りにやるぞ」
「よし……」
尾行する男たちをさらに追う者たちもあった。
女王直属の隠密小隊一団だ。
クロウディア姫の周辺を影ながら護衛する任に就いた者たちである。
隊員「ヤツラ、明かに姫を追っているな」
「こちらの気配に気づいた様子はないようです」
「一番近い、騎士団詰め所に知らせに走れ。残りは後を追う」
「ハイ」
隊員、それぞれの方向へ散って行く。
そんなときだ。
すぐ目の前で男たちのケンカが始まったのは。
やじ馬が集まってきて、道はたちまち人だかり。
隊員「ええい、邪魔だ!」
「道を変えましょう!」
「視界から一時でも消してはならん」
「しかし…!」
隊員達は姫を見失わないように町人をかきわけて進むより他にない。
実はこのケンカもやらせであり、姫を狙う連中が、目をひきつける、あるいは惑わすために始めたものである。
クロエ「ケンカだわ。止めなくちゃ」
そのわずかな隙に、ある男が二人の少女に声をかけた。
男「クロエ=グラディウス?」
メイディア「?」
クロエ「あ、はい。……えっと、あなたは?」
男「突然のお声かけ、申し訳ございません。私は青薔薇の騎士、リチャード=ハインシュタイン。あなたのお兄様の部下です」
礼儀正しく、敬礼。
クロエ「お兄ちゃんの?」
『そういえば、ハインシュタインって聞いたことあるかも……?』
メイディア「お兄様の?」
リチャード「今、あちこちで狂信者が貴女を狙ってうろついております。こちらへ」
手を引いて、横の小道に入る。
クロエ「私……狙われる覚えなんて……」
メイディアと顔を見合わせる。
リチャード「覚えがないとは言わせませんぞ。試験のときは兄上らが駆けつけなければ、どうなっていたことか」
クロエ「お兄ちゃん来る前に、ナツメがやっつけてたけど?」
リチャード「そのときは、でしょう! ともかく、外出されるときは危険ですから、必ず護衛をつけてもらわねば困ります」
クロエ「でも私、ただの見習いだし、護衛なんてそんな……」
リチャード「ご自分の立場をわきまえなさい! 狂信者たちは何故かあなたを姫とカンチガイしている。それだけで十分でしょう」
クロエ「……そんなことを言われても……」
『メイディのパンツが……じゃない、レイオットとの約束が……』
メイディア「……………」
リチャード「いいですか、ガーネット様より、貴女をお連れするようにと申し使っております。さ、どうぞ、こちらへ」
クロエ「ま、待って! 私、まだ用があるの。用が済んだら、行くから」
『メイディのパンツが……、レイオットとメイディの仲直りが……』
リチャード「そのような悠長なことは言っていられません、見なさい、あの者たちを」
人込みからこちらに向かって来ている男たち……実は彼らこそが護衛なのだが……を指し示し、
リチャード「彼らは狂信者です! 姫をシレネに捧げれば、この国が救われるとわけのわからないことをほざいている連中です」
クロエ、メイディア、息を呑む。
メイディア「でも待って」
リチャード「なんです、レイディ?」
メイディア「貴方、本当の薔薇の騎士ですの? 証拠をお見せなさい」
リチャード「追っ手が来ます。急いでいるのです。それは後でもよろしいでしょう」
クロエの手首をつかんで走りだす。
クロエ「あっ!」
メイディア「お待ちなさい! ワタクシ、知らない人について行ってはいけませんとばあやから習いました! 身分を明かせない者について行くワケにも連れて行かせるワケにも参りませんわ!」
リチャード「緊急事態という言葉を知らないのですか、お嬢さん!」
メイディア「試験での事件は、薔薇の騎士を装った方々が犯人だったと聞き及んでおります」
リチャード「私がそうとでも?」
メイディア「そうは申しておりませんが、念のためです」
リチャード「この角を曲がれば、ガーネット様がいらっしゃいます。それが証拠です」
言って細い裏路地を走りだし、腕をつかまれたクロエはついてゆく以外なく、またメイディアも追いかけるしかない。
路地を抜け出て、広い道の曲がり角を曲がると確かに言われた通り、馬車が停車していた。
数人の男が即座に駆け寄ってくる。
男「さ、クロエ殿、こちらに」
クロエ「お兄ちゃんはどこ?」
メイディア「お兄様の姿を確認してからでないと……」
ガツッ!
メイディア「!?」
メイディアの頭に突然の衝撃が走る。
リチャードが剣の柄で殴ったのだ。