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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 42-12

声「よーく見ておくといい」

 「帰りに玩具を買ってあげようね?」

 

 人の言葉を話す鳥の羽根をむしって、犬に与えたのはだぁれ?

 その犬を打ち殺したのはだぁれ?

 

 縄で首を引っかけられた人々が、広場で吊り下がってくるりくるりと風に吹かれて回っている。

 

メイディア「あはっ! てるてる坊主みたい」

声「メイはいいことを言うね。ああやって、お天気になるのをお願いしててもらおう、あの人達には。だって、悪いことをしたから、今度は良いことをしてもらわないと」

 

 温かな、よその家庭の光を求めて素足で走る。

 覗き込んだら、そこに思っていた風景はなくて、赤で塗りたくられた部屋があった。

 下腹部にうずく痛みを感じた。

 足の間から、赤い液体。

 赤、赤。

 後から入って来て、呆然と立ち尽くした黒髪の少年がゆっくりとメイディアを見つめる。

 その瞳も、赤。

 ほんの一瞬の間に、多くの情報が弾けて散らばった。


▽つづきはこちら

 

男たち「ひいっ!?」

   「ばっ、馬車を出せっ!!」

   「黒魔法で狙われるぞ!!」

 

 男たちの声に我を取り戻したメイディアが、脅迫を含めて細い腕を馬車に向ける。

 

メイディア「次にお亡くなりあそばすのはどなたかしら?」

男「黒魔法を唱えてみろ!! 姫もろともだ」

メイディア「……返しなさい、クロエを」

男「馬車を出せ!!」

メイディア「まぁ、どうして頭の悪いことでしょう。馬か車輪を破壊すればすむことですのに」

 

 逃げる馬車に向かって魔法を唱える。

 ところが。

 

メイディア「…!? 嘘……? 魔法が……魔法が発動しない?」

 

 もう一度、呪文を唱えるがやはり魔法は発動してくれなかった。

 

メイディア「こんな時に、またっ!」

 

 強く舌打ち。

 スランプがまだ完全に治っていないのである。

 レヴィアス教官の元へゆき、徐々に力を取り戻しつつあった彼女だったが、クレスが教官から誘いを受けていると聞き、再び不安定に陥っていた。

 そんな彼女を見上げてリチャードと名乗った男の死体があざ笑っているように思えた。

 

メイディア「誰か……助けを……?」

声「一人じゃ何もできないクセに」

メイディア「……………」

声「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」

 

 クロエを乗せた馬車はどんどん遠くなる。

 

メイディア「わっ、ワタクシが助けないと。だって、だって呼びに行ったら……馬車が見えなくなっちゃう」

     『一人で……一人でやらなきゃ!』

     「ワタクシだってクロエくらい取り戻せますわっ!!」

 

 近くの宿屋に駆け込み、宿泊客の馬を勝手に強奪。

 

宿屋の下働き「うわぁっ!? アンタ、何するんだっ!?」

メイディア「おだまりっ! コレをくれてやるから、新しい馬でも買いなさい!!」

 

 いつも身につけているサファイアのブローチとイヤリングを下働きに叩きつける。

 

メイディア「走れっ!!」

 

 馬の腹を蹴って、馬車の追跡しにかかった。

 

 

 姫誘拐の情報が騎士団に届いたのは、ずいぶんと時が経ってからであった。

 姫の護衛に当たっていた部隊がことごとく、命を奪われていたからである。

 裏路地に入った者も、騎士団詰め所に走った者も。

 誰にどうやってやられたのか、不明のままに。

 だが、現場を見られても不自然ないように敵は計らって馬車を用意し、クロエをだまして連れて来たのだろうが、結局、メイディアと争いになった。

 その騒ぎを目撃した住民が詰め所へ届け出て事件は発覚したのである。

 同時にクレス、リク、氷鎖女と黒魔術師がそろった3人組も魔術の発動に気づきはしたが、一瞬のことで所在まではつかめずにいたのだった。

 メイディアが大きく強力な魔法を使えていれば、もっと正確にわかったのかもしれないが、残念なことに彼女はまだ不調。小さな威力の魔法しか発動させられなかったのである。

 約束の時間になっても現れないクロエとメイディアを待って、結局、待ちぼうけになっていたレイオットは事件を知らずにしょぼくれていた。

 

レク「先に中に入って芝居を見ていれば良かったのに」

レイオット「メイディたちが来ないんじゃ……意味がないわ」

     『本当は超見たかったけど』 くすん。

レク「レイオット……」

レイオット「やっぱりクロエが説得しきれなかったのかなぁ。レイオットなんか大嫌いってメイディが聞き分けてくれなかったのかも……」

 

 肩をすぼめて体全体で息をつく。

 

レク「そんなことないよ。クロエにはだまして連れて来いって言ってあるんだから」

レイオット「気を利かせて、先に説得しておいてくれようとしたのかも」

フェイト「それはありそうだな。余計なことしかしないから」

 

 フェイトが相槌を打つ。

 

レク「うーん。クロエだからなぁ」

フェイト「しかしもう、養成所に戻る最後の便が出るぞ、戻らないと」

レク「うん……さ、行こう。お芝居も終わっちゃったしね」

レイオット「……メイディたちはもう帰っちゃったのかな……」

フェイト「待て、二人とも」

レク「どうした?」

フェイト「何だか騒がしくないか?」

 

 街中を見回す。

 

レク「そういえば……」

 

 薔薇の紋章をつけた騎士たちがあわただしく駆け回っている。

 その中の一人を捕まえて尋ねた。

 

レク「何かあったんですか?」

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