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レイディ・メイディ 42-30
2008.06.22 |Category …レイメイ 42話
その頃、女子寮。
メイディアを送る形でレイオットも同じ部屋に来ていた。
彼女はレクとフェイトの会話をどこから聞いていたのだろうか。
レイオットはそれが気になって仕方がなかった。
レイオット「えっと……レクの言ったことだけど……」
何かフォローを入れなくてはと恐る恐る声をかけると、メイディアの方から先に話しだした。
メイディア「ワタクシが一人勝手に先走ったことで、クロエが危険になってしまったのですね……」
レイオット「う……」
『フェイトの言葉もしっかり聞いてるぅ~っ!! バカー! フェイトのバカー!!』
メイディア「本当は、わかっていたの。途中も……知らせなきゃって思ったんだけど……でも、失敗を取り返そうってつい……」
鏡台の椅子に腰を下ろしてうつむく。
▽つづきはこちら
レイオット「そんなの、仕方ないわ。誰にだってそういう心理は……」
メイディア「あのときワタクシは、自分のことしか頭になかったんですの。クロエのことを一番に考えるのなら、知らせに行くのが一番だってわかってたクセに……。フェイトの言った通りですわ」
レイオット「お願いだから、そんなに自分を責めないで? ね、メイディ」
背後に回って、ゆるく抱き締める。
メイディア「……ありがとう、レイオット。いつもアナタは親切にして下さるのね」
レイオット「アナタの友達だもの。……違う?」
メイディア「ええ。そうでした」
ゆっくりとまぶたを下ろし、友人だと言ってくれる人間の心地よい体温を背中に感じる。
レイオットの優しさが触れた体を通して染み込んでくるようだった。
レイオット「クロエもアナタを大切な友達だって思ってる。メイディがどんな気持ちでいたかなんて、お見通しよ。それでもちゃんとわかってくれているわ。戻って来てまだメイディがしょぼくれていたら、そんなことで? って笑われちゃうわよ?」
メイディア「クロエはそういう人ですものね」
レイオット「そうよ」
メイディア「自分の危険を顧みず、ワタクシを逃がして戦って……誰にも真似できない、素敵なレイディ」
レイオット「うん。そうだね」
メイディア「剣で勇敢に戦えて強いの」
レイオット「うん」
メイディア「あんまりキレイで見とれてしまいました」
レイオット「うん」
メイディア「その上、回復してくれた白魔法は温かくて優しくて……」
レイオット「うん」
メイディア「これでは到底、かないっこない」
レイオット「え? メイディ?」
メイディア「パンツは……」
レイオット「パンツ!?」
どうして、この会話から突然パンツ?
誰か説明して!
レイオットは軽いパニックに陥った。
メイディア「パンツは………………もう、いいです」
レイオット「そ、そう?」
『パンツ?!』
メイディア「パンツは、このままにしておきましょう」
レイオット「………………………」
『パンツ!??』
『パンツ…………………パンツ…………』
だいぶ考え込んだが、その単語に該当するブツはレイオットが持ち得る最大の知識と記憶の引き出しを引っ繰り返してみてもただ一つしか出てこなかった。
レイオット『でも……まさか下着のことを急に言い出すハズないしー……? 貴族言葉で何か意味があるのかしら? ダメだわ。回答のしようがない!!』
「ね、ねぇ。今日はもう何も考えずに休んだ方がいいわ。クロエのことも、フェイトのバカのことも、その……よくわかんないけど、パ、パンツのことも……とりあえずはどっかよそにやっちゃって。ね?」
メイディア「そうですね。ありがとう、レイオット」
レイオット『ほっ、よかった』
「眠れるまで側にいようか?」
メイディア「いいえ。大丈夫ですわ。レイオットも疲れているのですもの。戻ってお休みになって?」
レイオット「わかった。じゃ、何かあったらいつでも呼んで? ただ寂しいってだけでもいいのよ? 用がなくたって」
メイディア「ええ」
レイオット「それじゃ」
ドアを細く開けて、隙間から廊下に出る。
メイディア「レイオット」
レイオット「ん?」
メイディア「いつぞやのことは謝ります」
レイオット「あ、うん、こっちこそ。ぶったりして、ごめんね」
メイディア「それから……」
レイオット「うん?」
メイディア「大好き」
贈られた言葉にレイオットは目を大きく開き、それから柔らかく微笑んだ。
レイオット「………ふふっ。知ってた」
うなずき、ドアを静かに閉じる。
仲直り大作戦は空振りに終わったが、結果は二重丸だ。
クロエも無事で済んだ。
レイオットは不眠の疲れも忘れて、調子外れの鼻歌にスキップを加えて部屋へと戻って行った。