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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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第43話:友人、水面下で戦い。

 日曜日に誘拐事件が発生して3日間、クロエ救出劇を演じて彼らが戻ってくる間に養成所内でもちょっとした事件が起こっていた。

 

シラー「ナイ……ナイナイナイナイナイ!!」

 

 シラーブーケの大切な母の形見のロケットペンダントが紛失してしまったのである。

 失せ物に気が付いたのは、日曜よりも前ではあった。

 始めは自分でどこかに置き忘れでもしたのだろうと、そこまで深刻になってはいなかった。

 ところが週の真ん中を過ぎてもまだ見つからない。

 こうなると当人はもう、大騒ぎである。

 母の形見というだけでなく、あのペンダントはこの先、エマリィ=シャトーの一員として潜り込むのに必要な物なのだ。

 絶対に手放してはならない。


▽つづきはこちら

 

取り巻き1「部屋のベッドの下じゃないよね?」

シラー「そこは初めに見たわよ!」

取り巻き2「職員室に届け出た?」

シラー「当たり前でしょ!」

取り巻き3「落とし物預かり所は?」

シラー「確認しないわけないでしょう、わかりきったこといちいち言わないで!! いいから探してちょうだい!」

 

 学科の授業開始前に教室内をくまなく捜し回る。

 周囲を巻き込んでの大捜索だ。

 

シラー『アレは切り札なのよ! 冗談じゃないわ、こんなことで……』

モーリー「シラー、コッワーイ☆ 地が出てるよ、地が~♪」

 

 四つんばになって、机の下を覗き込みながら、

 

ジェーン「コラ、またモーリーはぁ。やめてあげなさいよ、こういうときに茶化すのは。可哀想じゃない。お母様の形見がなくなったのよ? 空気読みなさいって、空気」

アン「…………」

 

 母の形見をなくして必死になるシラーを見て、アンの心がちくりと痛んだ。

 

アン『ごめんね、すぐ返すから。ちょっとだけ貸しておいてね……』

 

 ちょっとだけ。

 彼の人にあの女がどんな女であるかわかってもらうために。

 証明して目を覚ましてもらうのだ。

 

シラー「誰かが盗ったんだわ……」

アン「!!」 どきん。

 

 無意識にスカートのポケットに手を入れて、中にある金属の塊をにぎりしめた。

 そのしぐさをモーリーの垂れ目が捕らえる。

 

モーリー「……………」

シラー「だってそうでしょ、こんなに探しても見つからないなんて! 誰かが盗んだに決まってるじゃない!!」

ジェーン「決めつけるのは、まだ早いんじゃない……かなー……なんて……」

 

 ジェーンが遠慮がちな意見を出すが、きっぱりとはねつけられてしまう。

 

シラー「私を妬んだヤツがとったに違いないわよ。……そうだわ! 持ち物検査よ」

取り巻きたち「持ち物検査?」

シラー「そうよ。持ち物検査。皆、とりあえず今持ってる物、全部出して! ポケットの中の物もだからね!」

 

 教室中がざわめいた。

 

アン『持ち物検査…! そんな……どうしよう…』

 

 顔色を悪くしたアンが空いた方の手で噴き出た汗を拭う。

 

ジェーン「でもさぁ、それやっちゃうと皆を疑ることになってヤバくない?」

 

 休み時間が半分も過ぎたところでドアが開いた。

 男子も女子もはいつくばっているその不思議な光景が広がる教室に踏み込んできたのはメイディアだった。

 

メイディア「?」

 

 何事かと思いはしたが、尋ねることはせずに窓際の最前列に席を取る。

 今の彼女は他人どころではないのだ。

 覇気が失せて、何事にも関心が向かない。

 思い煩っては切ないため息の繰り返しである。

 シラーの方でも今日に限っては、宿敵をかまっている場合ではない。

 何しろ、伯爵家に入り込むための証拠品をなくしてしまったのだから。

 

シラー「さぁ、ホラ、早く出して!!」

 

 せかされて、一部の連中は渋々ながらも自分たちの持ち物を並べ始める。

 

アン「……わ……私っ」

 

 胸の当たりのブラウスを力の限りにぎりしめる。

 

アン「私……っ! メ……メイディが持ってたのっ、見た気がする!!」

シラー「!」

   『……ナルホド、アンか……』

 

 失せ物、見つけたり。

 シラーはアンの挙動を見逃さなかった。

 同時にパニックから開放され、本来の彼女が戻ってくる。

 

モーリー「…………」

 

 全員の目が発言者アンから容疑者メイディアに向けられた。

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