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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 43-4

 授業が終わってすぐ、モーリーはアンをつれ去った。

 

アン「痛い、痛いよ、モーリー! そんなに引っ張らないで。どこ行くの?」

モーリー「トイレ」

アン「どこのトイレよ」

 

 階段を上がって上級生のいる階にたどりつく。

 

アン「ダメだよ、ここ3回生の教室あるとこじゃない」

 

 縮こまって周りを見回す。

 

モーリー「ここのが知り合いもいなくて話やすいと思ってさー」

アン「話?」

モーリー「返したい物、あるんじゃないの?」

アン「え……」

モーリー「……返したい物」

 

 色白の、やや丸っこい手を差し出す。


▽つづきはこちら

 

アン「や、やだ……何の話?」

 

 ポケットに手を入れる。

 

モーリー「そうそう、ソレよソレ」

アン「う」

 

 完全に知られている。

 もう隠し立てしても無駄とあきらめてモーリーにソレを手渡した。

 脱衣所で手に入れた、シラーのロケットペンダントである。

 

アン「……皆に言う?」

 

 うつむいて自分のつま先を見つめる。

 

モーリー「まさか。そんなことしないわよう。でもさー、もしマジでバレたらどうするつもりだったのぉ? ヤバイわよー? あんだけの騒ぎ起こしてぇ」

 

 ペンダントを宙に投げては受け取り、投げては受け取る。

 二人の前後を生徒達が行き交うが、学年が違うために誰も気に止めていない。

 

アン「……それは……その……」

モーリー「これはアタシが上手に返しておいてあげるから。後は心配しなくていいよ」

アン「でもそれじゃ、モーリーが……」

モーリー「平気ー。見つけたよって返せばそれでいいもん。お手柄、お手柄♪」

アン「でももし、バレて責められたら?」

モーリー「笑ってごまかす~♪」

アン「……素直に言ったらどうかな? シラー、怒るかな……」

モーリー「怒るんじゃない?」

アン「もしシラーにわかっちゃったら、私……メイディにも謝らなければならない?」

 

 それだけは嫌だ。

 あの高慢で底意地の悪い女に頭を下げれば、どんな仕打ちが待っているとも限らない。

 それに仕組んだのがリクに知られてしまったら……?

 

アン「どうしよう……ねぇ、モーリー、どうしよう?」

 

 泣き出しそうに顔を歪めて助けを請う。

 

モーリー「メイディなんか放って置けばいいのよー」

 

あっさりと言い切った。

 

アン「え?」

モーリー「例えシラーにバレたって怖くないわ。だって、あれだけ大騒ぎしてメイディを責め立てたのよ? 今更、別の人でしたゴメンナサイってさっすがのシラー様も言えないっショ。うやむやにしておしまいよ。疑いの晴れないメイディには気の毒だけど、これも自身のカリスマ性のなさが招いた災いと思ってあきらめてもらお」

アン「リク君にも知られない?」

モーリー「もちろん。シラーの中だけで処理するしかないと思うな。一緒に恥かくことになるから。うっふふ♪」

アン「……モーリーって……時々……」

モーリー「なぁにー?」

アン「ううん。……モーリーは怖いものってないみたい」

モーリー「そんなことないわよ。アタシ、カエル大嫌いなの」

 

 弾いて遊んでいたのをやめてペンダントをポケットに突っ込む。

 

アン「………………」

モーリー「でさー。アタシぃ、思うんだけどぉー」

アン「う、うん」

モーリー「アンは下手な謀略、巡らさない方がいいよ。……似合わないから」

アン「……う」

モーリー「おおかた、メイディに一泡吹かせてやろうとしたんだろうけど」

アン「…………」

モーリー「そんなことしなくたって、あんなのアンの敵じゃないわよ。アンは普通にしてるだけで、少なくともメイディには勝ってるんだからさぁ。気にする価値ないよぉ」

アン「……そんなの、嘘」

 

 せっかくの慰めをアンは一蹴して跳ね除けた。

 

モーリー「どーしてぇ?」

アン「私なんか地味だもん、誰も見てくれない。髪の毛だって太くて固いし、金髪でもないし、ソバカスあるし、日に焼けて黒いし、美人じゃないし」

モーリー「そんなのカンケーなくない?」

アン「関係あるよ! メイディは意地悪でワガママばっかりなのに、なんでかチヤホヤされてる!!

 派手で目立つ子はそれだけで得なのよ! だから、皆に本当の正体わかってもらいたかったのっ!!」

モーリー「本当の正体ったって……もう初めから丸出しっていうかァ、誰でも知ってると思うんだけど……」 汗。

 

 登場からして、皆が皆、ドン引きだったではないか。

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