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レイディ・メイディ 42-28
2008.06.22 |Category …レイメイ 42話
フェイト「俺だってそうだろ。貴族だからって理由だけで交際を申し込んできたんだから」
レク「そうだよ。あのときはまだフェイトなんかどうでもよかったに違いないんだ」
フェイト『フェイトなんか…?』
なーんか引っ掛かる言い方だ。
レク「その辺に丁度よく落ちてた石ころくらいかな、好意レベルとしては」
フェイト「そんな解説は望んでない」 がくーっ。
レク「だけど、あのときフェイトが言った言葉、メイディには相当効いたんだよ」
「俺は君を好きになれない」
「君は家の威光をかさに着て、権力を振り回しているだけだ」
「俺は嫌いなんだ」
「そんな奴が自分一人じゃ何ひとつ出来ないクセに」
これが入所していくばくも経たないうちに、学舎の裏でメイディアから告白を受けたときのフェイトの返答だった。
▽つづきはこちら
フェイト「それでワガママが治ったという話は、まったく耳に入って来ないぞ?」
現在だって、召使いを呼ぶ用の銀の鈴を振り回しているではないか。
シラけて肩をすくめる。
レク「普段はね。でも、試験のとき自分で自分でってそればかり押し通そうとする、困ったもんだってフェイトやダレスに聞いて、思ったんだ」
フェイト「?」
レク「変だな…って」
フェイト「変? 何が変なんだよ? 性格的に合ってるだろ」
レク「我を通そうとするから、一見、いつも通りに思えるし、そう思ったらそこまでで、いつものことって流してしまえるかもしれないけど……やっぱり、それは変なんだよ」
フェイト「何がどう変なのかさっぱりだ」
ベットから立ち上がり、窓辺に寄る。
レク「これまでの彼女なら、“自分が”じゃなくて、“誰か”がやってくれるのが当然だったんだから。連れていって、疲れた、背負って……そんな風に他力本願でくると思うんだよ」
フェイト「さぁな。俺はそんなに親しくないから、そこまで詳しくは……」
レク「メイディは苦労が大嫌いだからね」
フェイト「だろうな」
レク「そんな彼女が自分でこなそうとしたのは、きっとフェイトに言われたことを気にしていたからじゃないかって俺……」
フェイト「それと好きとは違うんじゃないか? 見返したいのはあったかもしれないけど」
レク「認めてもらいたいから、そういう行動をとるんだ」
フェイト「嫌いな奴の鼻を明かしてやりたいと違う?」
レク「嫌いなら、苦労してまで実行しようとするかな? 無視したり、メイディなら靴に画鋲入れるとか、例えばの話だけど、落とし穴を作って、例えばだけど、そこに腐ったウンコをわざわざ運び込んで、例えばだけど、それを手伝ってあげた友達をふん縛ってその辺に一晩放置しておくとか、例えばだけど、」
フェイト「待て待て、ストップ。具体的で真実味溢れる例え話はもういい」
いつの間にか熱が入って握りこぶしを震わせているレクを現実に引き戻すため、話を一度区切る。
レク「ともかく……別の方法で仕返ししてくるよ」
フェイト「そうか?」
レク「好きじゃなかったとしても、意識はしてたと思うんだ。……無視できないくらいに」
フェイト「……………」
レク「だって、周りと態度が明らかに違ったもんな。フェイトの差し伸べた手には絶対につかまらなかったり」
フェイト「ソレを嫌われていると世間一般では言うんだが」
レク「フェイトに頼ったら、一人でできることにならないからだよ」
フェイト「意地っ張り」
レク「仕方ないよ、そういう子なんだから」
フェイト「好かれているのは、お前だろ」
レク「うん。好かれているね、俺は。ちゃんと素直に好意的に」
フェイト「じゃあレクなんじゃないのか?」
レク「違うな。俺は友達だよ。懐かれてるから、少しは特別と自惚れてもいいかもしれないけど」
フェイト「そしたら、リクやクレスはどうなんだ」
レク「クレスのことは好きだと思うよ、メイディは。……どちらかというと、俺に向ける好意と近いカンジで。リクは……リクはどうだろう? ちょっとわかんないけど、たぶん………」
リク「詳細は追って騎士団の方から上がると思います。俺たちがわかっている範囲ではここまでです」
所長「ごくろうだった」
リク「失礼します」
養成所所長に報告を済ませたリクが、大きめの扉から現れた。
クレスはお偉いさんに会うのは面倒だとリクだけに役目を押し付け、部屋の前の廊下でしゃがみこんでいた。
リク「お待ちどー」
クレス「ん。じゃ、戻るか。ふぁ~あ。疲れたー」
大きく伸びをしながら立ち上がる。
リク「部屋に戻るのはもう少し後にしよう」
クレス「なんでだよ。疲れてるのに」
一刻も早く横になりたいと不平を鳴らす。
このみそぼらしく変わり果てたメイディアの服も早く着替えたい。
リク「部屋の二人が大事なお話しの最中だから」
クレス「?」
現場にいなかったクレスはわけがわからず首をかしげる。
けれど大事な話の最中だと言われて無理やり入って行く程、無粋でもない。
仕方なく、リクについて宿舎の食堂に居場所を決めた。
リク「あ~あ~…おばちゃんいないよぉ、グレズゥ~」
人っ子一人いない食堂を見回してがくりとひざを折る。
クレス「当たり前! 食堂のおばちゃんも学舎の食堂に移動してるに決まってら」
リク「でも学舎の食堂も終わってる時間だよ」
クレス「じゃあ、洗濯でもしてるんじゃない?」
リク「おばちゃん、おばちゃん、おばちゃーん!!!」
伏せて丸くなって床を叩き、涙ながらにおばちゃんを連呼。
クレス「グズるな、黙れ、この食欲大魔神!」
丸くなった背中を蹴る。
リク「クレスがイジメるよ、おばちゃん、エネルギー補充!!」
声「うるさいね、リッくん!!」
リク・クレス「……あ?」
厨房の奥から、ずんぐりと体格のよい中年女性が顔を出した。
リク「おばちゃん!!」
ヨダレを垂らして振り返る。