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レイディ・メイディ 42-26
2008.06.21 |Category …レイメイ 42話
小さな部屋にそれは反響してしんと静まり返った。
フェイトは言い返して来なかった。
引っ繰り返ったテーブルを下敷きに、立ち上がりもしなかった。
ただ、視線が左右をさまよって、レクを通り越した向こうで止まる。
レク「……?」
様子がおかしいと気が付いて、レクも自分の背を振り返る。
レク「メ……」
ドアを開いて立っていたのは……………………メイディアだった。
メイディア「………………………ごめんなさい」
レク「メイディ!」
興奮して自分の口走ってしまった言葉に後悔の波が押し寄せる。
レク「今のは……その……」
フェイト「…………………」
メイディア「………………」
誰もが言葉を失ったが、沈黙は長くは続かなかった。
クロエの兄、ガーネットが元の町から到着したのである。
▽つづきはこちら
ガーネット「ここにいたか、お前たち。よくやってくれた。今度のことでは、俺からも礼を言わせてもらう。妹が世話になった」
レク「ガ、ガーネット……さん」
ガーネット「? なんだ、ずいぶん、派手に遊んだな」
メチャクチャになった室内を見回す。
ガーネット「片付けておけよ。もう養成所に帰ってもらわないとだからな。馬車を用意した」
リク「クロエの様子は?」
ガーネット「しばらく預かることになった。大したことはないから、すぐに復帰するだろう」
マントを翻して歩きだすガーネットの背中をメイディアが呼び止めた。
メイディア「お兄様、すみません、ワタクシがクロエを……」
ガーネット「ああ、聞いて知っている。君が居場所を突き止めてくれたんだな」
メイディア「そ、そうでなく……本当なら……」
ガーネット「君たちの役目は終わりだ。さ、乗って」
建物の外に案内して、用意した馬車に乗るように指示する。
メイディア「………………」
全員が無言のまま、乗り込み、出発。
町の出口まで来たとき、追ってくる声に気が付いた。
レイオット「ああっ!? クレスがいないっ!?」
馬車を見つけて遠くから走ってくるクレスの姿を確認して、
リク「御者さん、止めてくれますか」
クレス「コラーッ!!」
追いついてきて、停車した馬車に転がり込んだクレスは当然だがカンカンだった。
クレス「ふーざーけーんーなーっ!!!」
レイオット「ごっ、ごめんなさい。……わ、忘れ……」
リク「ははっ」
クレス「ったく」
「ん? アレ? なんか……」
レクとフェイト、それにメイディアの間に漂う重い空気に気が付いて、リクに解答を求める視線を送った。
リク「うん……まぁ、そっとしておいてあげて?」
クレス「……いいけど……」
「クロエは?」
レイオット「意識戻ってから後でお兄さんが連れてくるって」
クレス「そっか」
彼らの知っている限りの事件はこれでひとまず終わり。
とうとう知らされることはなかったが、捕らえた犯人たちは尋問する前に全員が死に至ったという。
レクたちが戦った、あの奇妙な虫の卵が取り付いていたのである。
犯人グループの男たちの体を突き破って出てきた虫は騎士たちによって退治されたが、これで有力な情報はなくなってしまったというわけだ。
ガーネット「……頼りは、ジャック小隊長か……」
隊員「ビミョー……ですね」
ガーネット「……言うな」
数日ぶりの養成所に戻った7名。
門をくぐったところで、ナツメが姿を消した。
クレス「あれ? チェリーは? チェリー?」
氷鎖女は門を入ってすぐの木の上に飛び乗っただけである。
まだ落ち葉の季節ではないというのに、はらりと数枚、緑の葉が落ちてきたので、リクが木を見上げた。
氷鎖女『はわわ、コラ、見るでない』
?「にゃあ」
間近で猫の鳴き声。
氷鎖女『お』
横を見ると、本物のダイヤモンド・チェリーが側の枝にいた。
氷鎖女「こ、これ、鳴いてはいかぬ、猫殿。後生だから、おとなしくしておくれ」
ひそひそと通じもしないのに、語りかける。
チェリー「にゃあん?」
氷鎖女「しーっ! しーっ! お願い、しーっ!」
指を一本立てて、口元に当てる。
クレス「チェリー」
チェリー「にゃー」
クレスの呼び声に応えて猫がまた鳴いた。
氷鎖女「ダ、ダメッ。猫殿が今出て行ってしまっては、嘘の上塗りが……」
氷鎖女の願い空しく、チェリーは木からするすると降りて主人の元へ行ってしまった。
クレス「お。もう変身が解けてる」
人型チェリーが一瞬にして消えて、猫のチェリーがちょうどよく戻ってくる。