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レイディ・メイディ 31-13
2008.04.18 |Category …レイメイ 31・32話
リク「笑ったよ、絶対」
氷鎖女「笑ってないと言ったら笑ってないっ」
何が気恥ずかしいのか、頬に朱がさっと走った。
リク「何もムキにならなくても……」
氷鎖女「うるさい」
杖を取り上げ、先でリクの頭を軽くごつく。
リク「イタッ」
氷鎖女「ともかく、これで全員分ができたわ。次の時間にでも配布しよう」
水晶を外して、リクに返す。
▽つづきはこちら
リク「全員?」
氷鎖女「始めに配ったあの水晶、そろそろ魔術の依り代として少しは役立つであろ」
リク「依り代……」
少し考えて、唐突に意味するところを理解した。
リク「そうか。俺たちは自分の魔法使いの杖を育ててたんだ」
氷鎖女「……そういうことになる。本当はこないだの試験の前に渡したかったが、間に合わなんだ」
肩をすくめる。
ただの市販の安物だったから、水晶と大きさが合わず、こちらで調整する必要があった。
氷鎖女「将来にでも自分らでもっといい杖に好きに変えたらいいが、とりあえず養成所で訓練する間はこれでも構わぬでござろ。水晶も気に入らなければ個々で勝手に加工すれば良いのだしな」
きっとクレスあたりは自分の杖を使い続けるだろうと思い浮かべながら言った。
自分にだけナイと膨れられても困るから、一応は用意したけれども。
この水晶とオマケの安物杖は、教材には含まれていないので、氷鎖女から教え子たちへの個人的なプレゼントということになる。
そんなことは当の生徒たちは知りもしないで受け取るのだろうが。
氷鎖女は今教えているクラスの学徒たちを最初で最後にするつもりだったから、持てる物全てを費やすことができた。
一生ものにしようと思えばできる、魔術のための水晶玉も人数分となれば安い買い物ではない。
成功者とはいえ、短い人生の中で貯めた金はこれでほとんどなくなり、お陰で杖は安物だ。
もともと高いものを買い与える必要などないと思っていたが。
この先もずっと多くの学徒を教え、送り出してゆかねばならない他の教官たちでは立場上、無理なことも、1度きりで身を引こうと考える氷鎖女には可能だった。
それに残す財産も不要な彼だからできることだろう。
眠る所と食事はこの養成所にいれば事欠かない。
あとは趣味に使う画材や人形作りのための材料、衣服などを購入するための、自由になる手持ちの金が少しばかりあればいい。
それくらいなら教官として与えられる給与の範囲で十分だ。
ちょっとした欲しいものができてもまかなえる。
家庭を持つこともないから、先々のための金銭などいらない。
未来が残り少ない者が金を持っていても意味のないことだ。
ならば自分が知識を与える者どもに惜し気もなく使ってしまえ。
どうせだったら、全ての物を。
氷鎖女『せめてこやつらが無事、薔薇の騎士とやらになるのを見届けられればよいが』
額あての下から、リクを見つめた。
リク「?」
チャイムが鳴った。
リクは完全にサボッてしまったことになる。
同時に腹の虫が長々と部屋中に響き渡った。
リク「ご飯の時間だけはサボるワケにはいかないんだよね。たまには先生も一緒にどう?」
氷鎖女「断る」
リク「いつも釣れないね。……また来るよ」
腹をさすって立ち上がる。
氷鎖女「いや、授業に出ろよ」
言っている間に、扉がクルリと縦に回転してクロエが入ってきた。
騒がしいのがやってきたと氷鎖女はギクリと身を固くする。
クロエ「抜け駆けしたわね、リク!! サボッてまで先生と1時間以上も何してたのっ!? まさか、私に黙ってニンポーのジュツを習得したんじゃないでしょうねっ!?」
氷鎖女『忍法の術って何だよ……』
忍術と忍法は言葉が違うだけの同じ意味で、要するに忍者が使う術ということだから、術の術といっているようなものだ。
根本的にクロエは大きく何かを履き違えていた。
クロエ「ヒサメ先生、ズルイ! 実は前世で生き別れの私の双子の片割れの友達の従兄弟だったのに!!」
氷鎖女「……それって無関係と言わないか?」
●Thanks Comments
クラムボンは笑ったよ
あっ、違ったヒサメ先生でした!
ヒサメ…もしかして長く生きれないの…?(゜ロ゜;
うん。
でもレイメイ長いから、まだまだ健在だけどね(爆)