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レイディ・メイディ 31-10
2008.04.16 |Category …レイメイ 31・32話
案外と素直に氷鎖女もうなづいた。
初めからそう言えばいいものを。
けれど、リクにとってはこれも大事なコミニュケーションの一つなのである。
ただ単に楽しんでいるだけとも言うが、…………そう、楽しいのだ。
こうしてじゃれあうのも。
それから、彼は将棋も好きだ。
かつて父が幼いリクに教えてくれた、奥の深いこのゲーム。
その将棋をしながら、この先生の話を聞くのが好きだった。
あの玩具箱のようなカラクリ部屋も。
リク「ヒサメハンター☆クロエは去った!」
氷鎖女「手前もだ」
▽つづきはこちら
鋭いツッコミをものともしないリク「ヒサメ先生の乱獲から、絶滅危惧種ヒサメ先生保護団体代表の俺がちゃんと捕獲…………おっと、保護しますから」
氷鎖女「今、捕獲って言った」
疑いオーラを再びまとって一歩下がる。
リク「いやだなぁ、“保護”の間違いですって」
すかさず氷鎖女の衣服をつかむ。逃さないように。
氷鎖女「ひぃっ!?」
リク「さぁ行こう、ハリキッて行こう♪」
ズルズルと引きずってゆく。
すっかり馴染みになった氷鎖女の教官室で、自分の部屋にでもいるかのごとくくつろいでいるリクは将棋盤の駒を上が眺めて声を上げた。
リク「しまった」
角を動かそうとして、もう勝敗が決まってしまっているのに気が付いたのだ。
一見、盤上はまだ両者緊迫した局面だが、彼には何手か先には行き詰まることがすでに見えていた。
最後の角を打って投了する。
リク「やっぱり先生は強いなぁ」
降参とばかりに両手を小さく上げた。
氷鎖女「実力差はさほどない。ただ、行儀が良過ぎ」
駒をかき集める。
リク「駆け引きかぁ。ははっ。面白いね」
新しく陣地に並べ直しながら、肩をすくめる。
リク「父にもちっともかなわなかった」
氷鎖女「教える大人と教わる子供ではな。……まぁ、子供の方が飲み込み早いから、力が付いてくれば大人が負けることも珍しくないけど」
こうして二人で話をしていると度々、リクの父親というのが登場する。
ずいぶんな父親っ子だったであろうことが容易に伺えた。
思い出すときに遠い目をしたりするから、遥か遠方に住んでいて養成所に来てからずっと会えないか、さもなくばすでにこの世の者でないのどちらかだろうと思った。
突っ込んで尋ねたことはないから真実は知らないが、きっと後者だと氷鎖女は思っている。
空虚に見える瞳と、見ていて何の慰めにもならない無気質な笑顔は、未だ誰かに保護されている者の持つモノではない。
何も持っていない者の特有の目だ。
それが、教師である自分に向けられるときには、生きた光を帯びる。
おそらく。
氷鎖女は思う。
氷鎖女『ニンジャ説はともかくとして……』
父の面影を重ね合わせているのだ。
東の島国の民族として雰囲気がどこか似ているのかもしれない。
氷鎖女『でも、俺はそんな立派な人間じゃない。お前の父親役なんか務まらないからな』
年が兄弟程にしか変わらないともあるが、そんなことよりも、だ。
自慢ではないが氷鎖女 鎮は人間性に大きく問題があることを自覚している。