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レイディ・メイディ 31-8
2008.04.15 |Category …レイメイ 31・32話
氷鎖女「女子の形をしたモノは一応、守らないといけないわよ…………ね」
クレス「そ…………そうよ…………ね?」
『エエッ!? 何ぃ!? 何なのッ!??』
隣の席のメイディアが不思議そうにクレスに目を向ける。
メイディア「何事ですか?」
クレス「知るもんか。頭でもぶつけたんじゃないの?」
メイディア「脳に虫でも湧いたのね。可哀想に」
小ばかにして鼻を鳴らす。
授業が終了し、リクの奇っ怪な必殺技・円の動きとやらに捕まらないよう、逃げるようにして(実際に逃げるつもりで)教室を出た氷鎖女は思わず足を止めた。
向かう先にダンラックが居たからだ。
またしつこく声をかけられるのではないかと身構えたが、顔の隠れた、ナツメではない氷鎖女に相手は気づいていない。
すれ違いざま会釈をするが、何事もなく横を過ぎた。
氷鎖女『ふぅ……』
▽つづきはこちら
一息つくも、追いかけてくる例の足音を聞くなり、氷鎖女は速度をあげた。
……“奴”だ。
笑顔をはりつかせて、奴が来た。
リク「先生、氷鎖女先生。何でいつも逃げるかな」
すたすたすた。
氷鎖女「何でいつも捕獲するかな」
すたこらすたこら。
リク「だって逃げるから」
同じように速度を上げるとコンパスの差でぐんぐん距離を縮める。
氷鎖女「捕獲しようとするから」
すぐ後ろに迫った気配を感じて走りだそうとする。
リク「しなくても逃げるじゃん」
こちらも駆け出す気配を察して、そうはさせまいと両腕を開く。
……円の動きの体勢に入った。
氷鎖女「にっ……逃げなくても捕獲するクセにっ」 ギックー!
円の動き。
それは両腕を広げ、笑顔で捕獲対象の周囲を高速で回転する、高度かつ危険な技なのだ。
捕獲対象はこれをやられると恐ろしさのあまり身動きがとれなくなり、しかも人前で注目を集めてこっ恥ずかしいことになるという。
1年と1カ月。
氷鎖女はコレに何回泣かされたか、数え切れぬ程だ。
リクとクロエという二人の学徒に並ならぬ好意だか興味だかを寄せられており、それが尋常でないから困る。
彼らは競って氷鎖女を「捕獲」しようとし、もはや教官と学徒の間であることを忘れ去っているかのようだった。
いや、むしろ人扱いされていないような気すらする。
カゴに棒を引っかけて、ケーキで釣ろうとしたり(釣られてしまった)、クッキーを設置して気を引き、上から網で捕まえようとしたり(捕まった)、アメ玉に気をとられている間に輪にしたロープで捕らえようとしたり(捕らえられた)、散々である。
これもそれも“ニンジャ”だと彼らが思っているせいなのだろうか。
実際に忍者村の出身だが、そんなことは一言も漏らしたことはないというのに、どこからそんな情報が?
故郷から遠く離れた大陸だ。忍の者であったことを隠す必要もないのだが、正体をバラしてこれ以上興味津々になられても非常に困る。
そうして追いかけっこは毎日365日、飽きずに繰り返される。
リク「円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き」
氷鎖女「はうっ!?」 がーんっ!?
また捕まった。
気づけば、円の中だ。
リク「あははははー♪ さぁ、先生もご一緒に~。円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き」
氷鎖女「あうーはうー……はあぁ~」
オドオドと回るリクを目で追う。
額当てのせいで見えはしないが、その下の目にはいっぱいの涙が浮かんでいる。
しかし、生徒にイジメられる教師もどうかと思われる。
リク「円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き円の動き」
ザザザザザッ!
素早いすり足が気味の悪いステップを刻む。
氷鎖女「イ…………イヤァーッ!!!」
頭を抱えて泣き叫ぶ。