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レイディ・メイディ 31-5
2008.04.14 |Category …レイメイ 31・32話
氷鎖女「お戯れを、お殿様……(訳:テメェ、ぶち殺すぞ。)」
足をばたつかせるが、持ち上げられて空しく空を蹴るだけだ。
ダンラック「どうかね? 騎士など目指すのをやめて、私のところへ来なさい。宝石も服も思いのままですよ~? ムフッ」
肉に中身が埋まったような、大きい顔を寄せる。
……もう我慢の限界だった。
氷鎖女が憎々しげに睨みつけると瞳が縦に割れた。
ダンラック「!?」
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その瞬間、今の今まで腕におとなしく抱かれていたチェリーが暴れて、ダンラックの顔を激しく引っ掻く。
床に着地するとミハイルが開け放った外づけドアから体を滑り込ませて逃げて行った。
クレス「チェリー? ……やっぱりエサの時間じゃないからここはいないか」
チェリーが逃げた反対のドアからクレスが顔を出した。
ミハイル「お離し下さい、戯れが過ぎるでしょう」
『抜くなよ、罪人になりたいのか。こんなつまらんことで』
密かに氷鎖女が小太刀を抜こうとしたので、ミハイルが近寄ってその手をさりげなく制する。
ここまで明かな狼藉を働かれれば、こちらも強く出られるというものだ。
声をかけただけではふざけたと言われればそれまでになってしまうが、こうあからさまに体に触れたなら話は別だ。
キッパリと断ればいい。
何もわざわざ罪人になる必要もない。
クレス「! ナツメ!?」
チェリーを探しにきたのにとんだ修羅場に出くわしてしまった。
クレス「なんだ、あのデブ……」
公爵だなんて頭の隅にもないクレスはためらいもなく、氷の魔法を至近距離でぶちかます。
……ためらいない辺りが彼の彼たる所以か。
しかしもう少し状況判断材料を探すべきではある。
ダンラック「ギャーッス!?」
背中や尻に氷の破片が刺さって体をのけぞらせる。
隙ができて、氷鎖女は腕から逃れてクレスの元へ走った。
そのまま手首をつかむと医務室から飛び出して走り続ける。
クレス「ちょっと!?」
氷鎖女「…………ッ!」
公爵に、学徒にしか過ぎないクレスの顔を覚えられるワケにはいかなかった。
ここまできたらもうミハイルに後を任せるしかない。
そのミハイルの方でもとんだハプニングだと思いつつも、一方で良かったと息をついていた。
ミハイル「いくら公爵といえど……」
眉をひそめる。
ダンラック「いたたた、今のは何です?」
ミハイル「学徒が暴漢と見まちがって撃ったのでございましょう」
実際に暴漢そのものだったしな。
ミハイルは心の中で毒づいた。
ミハイル「このことは学長の方に報告させていただきますから」
ダンラック「ちょっとからかったつもりだったんですけどねぇ」
ミハイル「…………………………」 口を閉じる。
ある程度まで夜の庭を走ったところで氷鎖女はクレスの手を離し、詳しいことを問われる前に木の上にジャンプして身を隠す。
クレス「はぁっ、はぁっ。何、いきなりぃ」
かなりのスピードで連れ回されて、息が切れてしまった。
クレス「って……あれ!? ……消えた……?」
立ち止まって顔を上げたらもういない。