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レイディ・メイディ 32-2
2008.04.18 |Category …レイメイ 31・32話
他人の想像の中で自分がどうなっているかも知らず、教室に入っていつもの席に着いたメイディア。
皆の視線が大袈裟な花束に集中した。
リク「ずいぶんと見事だね。こんなのは見たことがないよ。……誰からかな?」
すでに隣の席に落ち着いていたリクが柔らかな微笑みを浮かべて、ほお杖をついた。
首をかしげて見上げる、その何げない仕草でさえ、思わず見とれてしまうのが彼の存在だったが、やっぱりメイディアにはうさん臭い作り笑いにしか思えなかった。
メイディア「貴方ときたら、どうして朝から不愉快な思いをした可哀想なこのワタクシに追い打ちをかけるような真似をするのでしょう」
リク「……………………ええ~っと、それは俺が君に何かしでかしたということになるけれど、本日の俺と君はたった今、顔を合わせたばかりのように思う。……どうだろう?」
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すかさず逆隣から、
クレス「つまり、顔からして全て気に入らないってコトだろ」
サックリとどめを刺した。
リク「うーん。素敵な言い掛かりをありがとう」
クレス「どういたしまして」
メイディア「クレスは翻訳家としての才能があるわ」
皮肉な冗談のやりとりがおかしかったのか、メイディアが少しだけ笑った。
クレス「お褒めに与かり、光栄デス」
リクを肴にすることで珍しく息が合ったか、クレスもわずかに口の端を吊り上げて返す。
リク「二人でイジワルしてぇ」
笑顔は絶やさないままだが、ワザとなじってみせると今度は声を上げてメイディアは笑う。
ご機嫌ナナメからはもう解放されたらしい。
ロングスカートが広がらないように手で押さえ、器用に座る。
意味もなく動作を見続けていたリクに花束が突き出された。
リク「うん?」
メイディア「……あげる」
リク「……は?」
メイディア「ちょうどよいわ。貴方に差し上げてよ?」
リク「……?」 自分を指さす。
メイディア「ワタクシ、いらないの。さっき見事だって言ったから。貴方にあげるわ」
リク「こんなに奇麗なのにもったいないね。何が気に食わなかったのかな?」
メイディア「差出人の態度」
リク「……誰?」
メイディア「それがわからないから気に入らないのだわ。正体を隠して花だけ送って、興味を引こうという魂胆なんかお見通しなんだからっ」
リク「ああ、ナルホド」
らしいや、と軽く鼻を鳴らす。
メイディア「いらないから、あげる」
手から離れたら責任はないとばかりに、顔も体も前方の黒板へ向けた。
リク「……ありがとう」
邪魔ものを押し付けられる形だったのにもかかわらず、素直に受け取る。
リク「ところで、メイディ」
メイディア「なんです?」
リク「薔薇の花言葉は、“私は貴方を愛します”だったよね?」
メイディア「それが何か?」
リク「ううん。ありがとう」
メイディア「………………………………」
少し考えて、リクのイタズラな笑みの意味を悟った。途端に顔の温度が上昇する。
メイディア「! それは差出人が、ですからねっ!!」
リク「でも俺はメイディからもらった~♪」
からかい口調で薔薇の花束を振り回す。
反対側に座るクレスが迷惑顔で花束が当たらないよう体を横にずらした。
メイディア「ギャアアッ!! なんてこと! やっぱりあげないっ! 返しなさいっ!!」
手を伸ばすが、リクはもう俺のだからと言って返す気はなさそうだ。